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あちらの貧困、こちらの貧相


Miao Li
日本で取材していると、奇妙なことが時々起きる。子どもの貧困を取り上げようと、ある有名な子ども食堂に取材打診。その理事長も、よく日本のメディアに出る方。そうしたら、取材が断固拒否されました。電話でこんなことを言われました。「中国メディアなのに、なんで日本の子ども貧困を取材したいのか。おたくの自分の国の貧困問題もっとひどいでしょう。そっちを取材したらどうですか?」

香港フェニックステレビの東京支局長、李淼さんのフェイスブックの投稿

子ども食堂を運営しているんだから、それなりに社会問題にも関心を持ち、またただ黙って座っているだけの人ではないのに、とても残念な対応。今の時代に、それも「弱者のために動いている」人が、まるで自分の善行を他人に叩きつけるようなことをするのはなぜなんでしょう?

日本人は本当に、逆の思考が苦手ですね。確かに、中国政府は国内の貧困問題に対して取り組んでいるとはいうものの、まだまだ手が届いていない。そこに横たわるさまざまな問題はここでは特に触れませんが、確かに中国には貧しい子どもたちがたくさんいる。

だが、そのことをこの人にぶつけてどうなるのか? あなたが怒りを見せれば物事は変わっていくのでしょうか?

フェニックステレビの李支局長がどんな記者さんなのか、知らないのは仕方がない。でも、あなたが「中国の貧困に心を痛めている」からといって、そのことを彼女にぶつけて満足気な顔をするのはまったくのお門違い。

逆に、あなた方の活動を報道してもらうことで、「日本ではこんなに子どもを大事にしてますよ」「こんなに貧困家庭の子供を気遣っていますよ」という姿勢と手段が中国国内に伝わることで、中国の貧困児童救済に関わっている人たち、あるいは直接関わっていなくても気を揉んでいる人たちにとても重要なヒントを与えるし、励みにもなる。「これはいいアイディアだ」と思い、真似てもらうだけでどれほどの子どもたちが助けられるでしょうか。

この理事長はそんなチャンスを自ら捨ててしまった。中国の児童貧困の問題に関心を寄せていないのはどちらなのでしょうか? もしかして中国では誰ひとりとして子供の貧困救済に関わっていないと思っているのでしょうか。数多くの小規模NGOの人たちが時には、地元政府に「余計なことをするな」と足蹴にされながらも、社会的弱者のために奔走していることを全く知らず、こんな態度に出ることを恥ずかしく思います。

何度も言っていますが、日本のある一定以上の年齢の人は「中国」と聞くと、「発展が何だ。裏では貧困にあえぐ人がいるじゃないか」的な脊髄反応を見せることがよくあります(若い人にはそういうところは比較的少ないですね)。そうやって「自分たちのほうがずっと優れている」という態度を取る。

でも、あなたたちは中国の実状の何をご存知なのでしょうか? わたしの友人、そして友人の友人は弱者支援のために声を上げ、逮捕されたり行方不明になっている。そんな「頑張っている人たち」に、日本で力を尽くしている人間としてエールを送る。あなたたちの知恵を分け与える。そんな気持ちになぜなれないのか?

そんな貧相な中国理解をしているあなたのような方にぜひ読んでいただきたいと書いたのが、拙著「中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業」です。読んで出直してください。


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