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本ひとつ片づけながら

天気が悪い日が続くと、なんとなく足元を見る機会が多い。

踏みしめる場所によって、水の撥ね方も違う。

先日の大きな台風を見送りながら自然の力を思い知らされる。

いろいろなことを繰り返しながら、人は生活をし続けていく。

歴史に記録として刻まれる出来事は、人間の営みのほんのわずかな出来事だけ。

過ぎていく日々に何かを残したいともがいても、爪跡さえも残らない。

私ごとだが、少し前にかなり大量に物を処分したので、そんなに処分するものはないのではないか?と思っていた。
だが、ただ何年も本棚に置いてあるだけだったレシピ本ひとつを手放そうと思った瞬間に、自分がその本に紐づけていた、様々な思いに気づく。

素敵なレシピ本が自分をそういった素敵な生活に近づけてくれる一歩のような気がしていたり、これがあるからいつかこういった物を作ることができる、とか、努力した気分にさせてくれるカモフラージュグッズだったような…

使わない本を持っていて、そしてそれを使わないで処分することにどうしてか罪悪感があって、
「こういう物が目につくとこにあると疲れるな」と、気づいた。

そんな目線で、あらためて自分の周囲を見渡してみるとただ疲れさせている物がいくつもあることに気づき、処分中である。

自分が空っぽだと思いたくないから、怖くていろいろな物で埋めようとしていたのかもしれないな、と思いながら。

別にどんな自分でもいいのにな、と思う秋の夜である。



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