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都市対抗野球へ、ようこそ!【2018.7.13編】

補強選手とは、難しい立場である。
都市対抗野球は社会人野球チームの大会である一方、その都市を代表するチームの大会でもある。なので、「○○市(※東京都都とか▲▲町の場合もある)代表✕✕社」という表記となる。強いこだわりだ。

その都市を代表する大会という要素のひとつに、僕は「補強選手制度」があると思う。補強選手とは、本大会参加チームが地区大会で敗れたチームから最大3名まで大会限定で加入させたプレーヤーのことを言う。サッカー風に言えばレンタル移籍だ。
会社の代表ではないけれど、都市の代表である。そんなバックボーン。でも、この隠れた第三者がときにチームを躍進に導く。不思議な存在感がある。

さて、第89回都市対抗野球大会の開幕戦。対戦カードは前年覇者・NTT東日本対名古屋市代表・東邦ガス。前年優勝チームには補強選手は認められていない。一方、東邦ガスには3名の選手が加わっている。
都市対抗野球の東海地区予選は激戦区だ。名だたる強豪もときに涙を飲む。この入り組みすぎているトーナメント表(※pdf注意)を見て頂ければ、尋常ではない勝負の難しさを認識していただけるだろうか。

試合はNTT東日本のペースで始まる。初回に越前のツーランホームランなどで3点を先制すると、2回裏はこの日9番に座った伏兵・枡澤のホームランでリードを広げる。地区予選では大車輪の活躍だった東邦ガス先発の小椋をノックアウトさせ、幸先の良いスタートを切る。
ツーランの原因。その前のプレーで、ファーストの吉田がエラーをしていた。そう、彼は三菱重工名古屋からの補強選手だった。もちろん、エラーは必ずしも本人だけの責任とは限らない。だが、この日の東邦ガス内野陣の守備は不安定だった。

3回表に連打で東邦ガスも3点を奪い、何とか反撃の体制は整った。投手陣の2番手は九谷投手。彼はヤマハからの補強選手だ。独特のピッチングフォームでバッターの間を外し、凡打の山を築き上げる。試合は少し、落ち着いてきた。

共に追加点の糸口を見いだせぬまま、迎えた6回裏。東邦ガスは3番手の立野投手。弱冠20歳ながら、140キロを超えるストレートを連発する。彼は東海理化からの補強選手である。
しかし、ピッチングに弱冠の動揺が見られる。ランナーを得点圏に進めてしまい、1塁側応援席のチャンステーマも大きくなる。若人には試練の時間だ。
が、この回は思わぬかたちで乗り越える。NTTのランナーが、ホームスチールを仕掛けて失敗。これはランナーの暴走であると同時に、どことなく東邦ガスに「隙」があるのを見抜いていたということなのだろうか。
驚きのチャレンジのあと、安心しきっていた東邦ガスは再び目を覚めさせられる。再び枡澤がソロホームラン。リードも3点に広がった。攻めあぐねている東邦ガスにとっては、痛すぎる失点だった。

諦めた観客が徐々に帰り始めた3塁側応援席。8回裏でツーアウト・3塁というシチュエーション。東邦ガスのピッチャーは水田で、NTT東日本のバッターは上田。放たれた打球は三塁へと向かっていった。
サードがボールを投げる。正面から少し逸れたボールは、ワンバウンドでファーストに向かう。吉田は必死に手を伸ばしていた。難しい打球がグラブに収まる。この日、1安打2三振のベテランは、何を思って捕球しただろうか。ゲームとしてはもう手遅れではあるのだが、あれは補強選手らしい良いプレーだったと、僕は記録しておきたい

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)