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「光る君へ」の艶めかしい小道具、手紙。

気が付くと、日曜日を心待ちにしている自分がいる。
今年の大河ドラマ「光る君へ」が楽しみで仕方がないのである。

文学ヲタクの自分にとって、主人公が紫式部というだけでも「要チェックや!」なのだが、もう初回から度肝を抜かれた。
いきなりの超衝撃展開。(ネタバレなので詳細は伏せます)
その結果、心に影を背負うことになる主人公のまひろ(後の紫式部)。
文学を志すものは、たいてい何かしら闇を抱えているものだが、おお、まさか紫式部にこんなにハードな闇を背負わせるとは・・・。

吉高由里子さんの演技もいい。
明るく振舞おうとしているけれど、どうしても暗い過去が拭い去れない。
そういう微妙な雰囲気が醸し出されていて、切ない。
悲しみや苦しみを我慢しちゃうタイプなんだろうなあ、と感情移入してしまう。

そのまひろちゃんが、世間の姫君と微妙にズレているのもまた文学ヲタクとしては共感しきりで、自分事のように思えてしまう。

ところどころ出てくる、源氏物語へのオマージュというか、パロディというかも面白い。
「お、もしかしてこの出来事をモチーフにして源氏のあの場面を描いたってこと? わあっ、そう考えたらなんかムネアツ展開だわあ」
なんて一人で盛り上がっている。
(ただ文学に興味のない人はどう思っているのかなあ、とちょっと心配。)

と、まあ語りだしたらキリがないくらい「光る君へ」がおもしろいのだ。

まひろと藤原道長との関係性、その進展ぐあいも目が離せない。
NHKだし、大河ドラマだし、まあ、可もなく不可もなくで進んでいくんだろうなあ、と思っていたら。
なんとなんと。
緩やかな凪のあとに突然のビッグウェーブが来るような急展開!
しかも濃厚。
正直、家族と見ているのが居たたまれなくなりましたよ。

しかし、濃密濃厚なラブシーンそのものよりも、私がドキドキしてしまったのは、そこに至るまでに交わされる二人の手紙のやりとりだ。

会いたい、愛してる、を連発する道長。
対して、あなたとは身分が違い過ぎる、あなたはあなたのやるべきことをやって、と道理を説くまひろ。
一見すれ違っているかのようでありながら、その言葉の裏には激しい想いが燃え盛っている。
それを、短歌と漢詩に乗せて交換しあうのである。

手紙というやつは、かなり艶めかしい道具だと私は思っている。
言葉のやりとりは、肉体よりも高い次元で、魂レベルで、相手と一体化することができてしまうから。

若いころ、太宰を読んで「彼の事を本当に理解できるのは、たぶん世界で私だけ!」みたいな妄想を抱いたことがあるのだが、それに近い。
書かれた言葉を、その意味を、その筆跡を、何度も何度も反芻する。
何度も何度も考える。真意を探ろうとする。
相手になったつもりで想像する。でも、少なからずそこには私個人の願望も込められている。

平安時代の、下男によって運ばれる、とても時間のかかる文のやりとり。
だからこそ、二人の心は一つに縒り合されていくのだ。
文が手もとに届くまでの長い時間、互いのことをのみ考えざるを得ないのだから。

手紙は、魂の交歓であるのかもしれない。

まひろと道長が愛を交わすこの放送回は、濃密なラブシーンが話題になった。その後のまひろのセリフ「幸せだけど、哀しい」には、こちらが泣かされた。
まさに神回だったと思う。
その素晴らしい回の、素晴らしい小道具として手紙、言葉が使われたところが心憎い。
「光る君へ」は紫式部が主人公だけあって、言葉をとても大切に扱ってくれている気がする。(そこが何より大好きな理由)

さてさて、これからまひろはどうやって「源氏物語」を書くに至るのだろう。
道長との関係は?
ききょう(後の清少納言)とのバトルはあるのかなあ?
倫子さま(道長の正妻になるのか? 演じる黒木華さんがものすごく可愛い!)とは今後どのような仲になっちゃうんだろう?

ああ~、もう日曜日が待ち遠しい!!!
まだ観たことがないなんて人がいたら、もったいない!
ネコの小麻呂も出てくるので、癒しもあるし!
だまされたと思って、一度。ぜひぜひ。







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