韓国映画「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」

韓国の対北スパイで、平壌に入り金正日とも面会した・・・という実在の人物をモデルにした映画だそうだ。
 
どんな風に北朝鮮が描かれているのかな、ということが私にとって一番の関心事だった。
以下、実話ベースとはいえネタバレしすぎるのもアレなので私が感じたことをストーリーにはあまり触れずに書いてみる。
 
①北朝鮮方言が・・・下手ッ(絶望
えっ、えっ、これが北朝鮮の方言?と始終気になる。・・・まぁ、そんなことが気になる日本人はあまりいない気もするけど。
特に米ドルの「ドル」の発音が、完全に韓国式で違和感。
一方、金正日役の役者さんの発音はかなりうまかった(金正日の背が低すぎるくらいに設定されているのは、ちょっと金正日を馬鹿にしすぎてる感じがあるかな、とちょっと思ったけど)。

②(北朝鮮の)保衛部大佐役の若い男性が自由すぎ
北朝鮮で保衛部といえば、泣く子も黙るほどの権力を持つ、という。とはいえ、あまりにもふてぶてしいし、自由すぎない?と思った。
私は現実の保衛部の人間がどういう振る舞いをするのかはまったく知らないのだけど・・・他の部署の人間がいる前でここまで自由気ままに振る舞えるのだろうか・・・と疑問に思った。そしてめっちゃエリートっぽいのに、なんか後半で粛清されてたよね(そのシーン一瞬しか映らなかったから間違ってるかもだけど)。
北朝鮮において、自由気ままに振る舞うことはリスクが大きすぎる。だからこそ、この男性のような態度を(公然と)取る北朝鮮人はあまりリアリティがないな、と感じた。
 
③時代考証が雑
映画の舞台は1997年。金日成が死んだ年だ。
主人公(南側のスパイ)が接触するのは当然、金正日だ。
主人公が平壌に入り、平壌の町並みが車窓を流れていく・・・シーンがあるが、万寿台の丘に金正日の銅像があるーーー!!!
街のいたるところに金正日の肖像画が掲げられているーーーー!!!
金正日の銅像が建てられたのも、肖像画(北では「太陽像」と呼ぶ)が描かれたのも金正日が死亡した後、2012年以降のことだ。
「将軍様(金正日を指す)は謙虚な方なので自分の銅像を作ることをお許しにならなかった」というのは北朝鮮的「常識」であるため、あまりの時代考証の雑さに一瞬頭がクラクラした。
(韓国のテレビでは脱北者らが「金正恩時代のスローガンが街に掲げられている、という指摘もしていた)。
 
④リ処長(字幕では所長)がかわいい
この映画、なんといっても北朝鮮の対外経済委員会処長がかわいい。
最初は北朝鮮方言もあまりしっくりこないな・・・と思っていたのだけど、この人の醸し出すエリート北朝鮮人の雰囲気がとても、とても「北朝鮮人らしい」。ものすごく感情を抑制して冷静な感じ。主人公のことを警戒しつつも、自らリスクを負って事業を推進しようとする態度とか、主人公をある程度信頼するようになった後、自分の家に招待してネクタイピンをプレゼントしたときの少し恥ずかしそうな感じが・・・すごくリアルかつめっちゃ萌えるんですけど。
雰囲気があまりにも北朝鮮人っぽいので、最初は「イマイチだな」と思ってた北朝鮮方言すら、後半には「もうこれは北朝鮮語だ」「この人は北朝鮮人だ」と思い始める始末。リ処長かわいいーーーー!!!
(しかし、リ処長は唯一単独で金正日に会えるというほどの身分の人なのだが、そんな人の肩書が「処長」というのはしっくりこない。処長は委員会の中でもかなり下の方の役職だ)。
 
しかし、なんだかんだ言っても、思想の違う韓国人と北朝鮮人が対話をする際の微妙な違和感、差異、そして互いに警戒しつつも信頼を寄せていく様子が絶妙で、映画の最後のシーンは、なんとも言えないような温かい気分になるのだった。

映画で演奏される北朝鮮音楽はこれだった!
https://youtu.be/AUxUPeumOP8

#韓国映画 #北朝鮮

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