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「心の姿勢」 2年・川野秀悟

「まっすぐ生きなさい。」

2019年1月1日
6年ぶりに会ったおじいちゃんは私の話を昔のように静かに聞いてくれた後、手を握りしめてこう言ってくれた。
その言葉はたった一言だったのに、なぜか忘れられなかった。いつの間にか、ふとした時間に頭をよぎる言葉になっていた。
気づけば今の自分にとって物事を考えるときの1つの軸となっていた。

早稲田大学に入学し、ア式蹴球部員となってから1年半がたった。
振り返ると、昨年過ごした1年は本当に不甲斐ないものだったと思う。
練習生として過ごしていた時。自分と同じようにまずは入部をするために必死に何かアクションを起こそうとする同期と、一足早く入部をして1年生としての仕事を全うしつつも自分を含めた練習生を全員入部させるためにサポートをしてくれていた同期、そして自分達の行動を正当に評価してくださる先輩がいた。そこで何かチームに良い影響をもたらそうとピッチ内外で必死にもがく自分がいた。
ア式蹴球部員として認められ、部員としての生活が始まってからは、まず関東リーグやトップチームの公式戦に出場するために目の前のことに必死に食らいついていた。前期の途中には関東大学リーグのメンバーとして追加登録され、8月のアミノバイタルカップの5位決定戦でようやくトップチームでの公式戦に出場することができた。
この時までは順調だと思っていた。しかし、そんな甘いものではなかった。
そこから「関東リーグに出場しチームに貢献する」ということを目標の1つとして置いていた中で、プレーが上手くいかないときが日に日に増えていった。調子が上がらず、思い通りのプレーができない。それでも目標に向かっていた自分が目を付けたのは、同じポジションの選手に比べ自分には何が劣っているか、というところであった。「関東リーグに出てチームに貢献する」という目標と、「自分が劣っているところ」の2つだけを見続け悩んでいた。そして自分の強みは何なのかとずっと考えていた自分は、目標を達成できていないことに対する焦りと、劣っているところしか見られなくなっていたことからくる劣等感という2つの感情を背負い、自分の足元をはっきり見ずにサッカーをしていた。そんな自分には「強み」など見つけられるはずがなかった。こうしてあっという間に、初年度の活動が終わってしまった。悔しい1年となってしまった。

そんな1年を過ごし、ア式蹴球部員としてどうサッカーに向き合っていくかを考えていた時に、おじいちゃんは私に1つの言葉をくれた。

それが「まっすぐ生きなさい。」だった。

はじめはこのシンプルな言葉にさえも考えている自分がいた。それは言葉の意味を見出せてないにしろ、その言葉に全くもって似合わない生き方を1年時にしていたことだけは分かっていたからだった。
「まっすぐとは何なのか。」
「まっすぐ生きるとは具体的にどういうことか。」
「自分にとってはどのようなことをいうのか。」
そんなことを思い巡らしているうちに、今シーズンが始まった。

チームや個人の強化に励む2月、3月が過ぎ、今年のリーグ戦が開幕した。
今年こそという意気込みとは裏腹に、Aチームとして練習に絡んでいたものの、一戦一戦と続いていく関東リーグで依然として絡めない自分に再び焦りを感じつつあった。

そんな時に、おじいちゃんの言葉に対して自分なりの考えが見つかった。
きっかけはア式での日常だった。
大学という場所の多種多様な人がいる、自分が自由な選択をできる中で選んだ、とはいえ当たり前の環境ではない、ア式という場所があったからだった。
ア式が私に言葉の意味を見出させてくれた。

自分の将来や今のビジョンや目標を見失わず、そこへのプロセスがどんなに遠回りであっても現状を見てビジョンや目標に向き合い続ける。
これが自分の見出した言葉の意味であった。
何事も心の持ち様だと。
おじいちゃんは私に心の姿勢を教えてくれた。そんなことに気づけた。

今のところ、目に見える結果としては実際去年と大差ないかもしれない。関東リーグや早慶戦、他のトップチームの公式戦に未だに絡めていない。前期はAチームの練習にずっと関わってきた一方で、後期が始まってからは昨年と同じようにBチームでの練習が多くなりつつあるという事実もある。それでも、練習試合でトップチームに関わったり、試合やゲバ(紅白戦)で点を取ったり、現状がある中でも間違いなく前進できている自分がいる。Bチームでの練習が多くなってきていても、調子があまり上がらなくても、今の状況がこれからの自分にとって大事なプロセスになると捉えている自分がいる。今の取り組みに対して、そうやって前向きなマインドを持って向き合えているのは、心の姿勢を教えてくれたおじいちゃんと、ア式という当たり前でない環境のおかげに違いない。

だからこそ自分は残りわずかの今シーズンもその後も、チームに貢献するために、そして自分の目標やビジョンに近づくために、おじいちゃんと今あるア式という環境に感謝しながら毎日向き合っていく。

現状にも、これからの結果にも、満足せずに、
気を引き締めて、前向きに。
ビジョンや目標を見失わず。

「まっすぐ生きる。」

最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。


川野 秀悟(かわの しゅうご)
学年:2年
学部:スポーツ科学部
経歴:栃木SCジュニアユース(宇都宮市立星が丘中学校)→栃木SCユース(栃木県立宇都宮北高校)

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