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「修行」 3年・加藤拓己


サッカー選手になると決意した時から
自分の修行は始まった。


幼稚園児だった自分は、Jリーグの試合を観てサッカー選手に憧れた。
いつの日かJリーグでプレーする自分の姿を想像して、毎日を過ごした。


今年でサッカーを始めて19年目になる。
この19年間は常に修行だった。


小さい頃から父には「何事も鍛錬」と言われてきた。

小学生時代、チームメイトが親からプレーに関して指摘される姿をよく見てきた。
しかし、サッカーに詳しくない自分の両親はプレーや技術的なことに関して口にした事は一度もなかった。

決まっていつも言われるのは、
「サッカーに向き合う姿勢」だった。

負けて泣いていれば
「くよくよするな、強くなれ」
勝って調子に乗っていれば
「満足するな」
辞めたいと嘆けば
「辞めたければ辞めればいい、拓己の自由だ」

練習に強制されることもなかった。
そうやって育てられた。

もしあの時、両親にプレーに関してうるさく言われていたら、サッカーをやめていたと思う。

今もサッカーが大好きでいられるのは間違いなく、
自分のプレーを認めてくれた両親がいたからだ。

中学3年の夏、
ユースに上がれないと言われた日。
高校3年の夏、
プロになる選択肢がなかった時。

2度絶望を経験した。

そのたび、
「まだ修行が足りない」と背中を押してくれた両親。
表現が下手な父と、表現がでかすぎる母の2人に支えられてきた。


ある日電話で、
「覚悟を持って生きろ。覚悟とはどんなことにも耐えられる準備をすることだ。」といった。

その日の夜に父はこの世を去った。

棺で眠る父に声をかけても返事はなく、経験したことのない喪失感に襲われた。


そんな時、祖父からある一枚の紙を渡された。

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大日本帝国海軍
第26・27代連合艦隊司令長官 山本五十六の言葉だ。

今目の前に起こっている出来事も、
これから起こる出来事も、
全てが修行であると自分に言い聞かせながら今日までを過ごした。

過度に悲しむこともなく、過度に強がるわけでもなく、自分が今やらなければいけないことに目を向けて進むことを父は必ず求めている。

乗り越えることは簡単ではなかったが、
これまでの20年間、自分がどのような人間になることを求められてきたのかを明確にして進むことは容易だった。

その姿勢こそが、父の残してくれた
一番の財産だと感じる。


これまで誰よりも自分の可能性を信じて支えてくれた父に恥じない人生を歩みたい。
その思いを背負って生きていく。


一番近くで支えてくれている母に、大きくなった背中を見せると心に誓い挑んだ2020シーズン。

コロナウイルスの影響で厳しいシーズンになった。
それでも、サッカーが巡り合わせてくれた素晴らしい仲間と濃い1年を過ごすことができた。

個人としてもチームとしても多くのことを経験した。
日本一の練習を毎日積み上げた。
それでも至らなかった。

大好きな4年生との別れ。
もっと一緒に笑っていたかったし、
同じ夢を追い続けたかった。

彼らとの道は常に険しかった。
けれど多くのことを学んだ。

しっかり1歩1歩進んだ道には、
彼らの足跡がしっかりと残っている。
その足跡の続きを自分たちには歩んでいく責任がある。

個人としてもこれまで以上に厳しく、難しいシーズンが待っている。

それでも、
どんな時でも1歩を踏み出す勇気と歩き続ける努力はやめてはならない。


「人生死ぬまで修行」


残された荷物と、新たな多くの荷物を背負って、
これからも修行の旅を続けていく。



この修行に終わりはない。



加藤拓己(かとうたくみ)
学年:3年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:山梨学院高校
☆清水エスパルス加入内定


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