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【#Real Voice 2023】 「トイレの浦川」 1年・浦川舜

ア式蹴球部には仮入部期間というものが存在する。これは本入部をさせてもらえるかどうかのセレクションのようなものだ。ランテストとこの仮入部期間の2つを合格して、やっと晴れてア式蹴球部の一員となれるのだ。私はこの仮入部期間でとんでもなく壮絶な日々を送った。今回のブログではその私の仮入部期間について書こうと思う。


私は2月12日に行われた第2回ランテストに合格し、2月14日の活動から参加し始めた。この時の私はランテストさえ受かってしまえば、誰でももう合格できるのだろうと思っていた。ア式蹴球部(以下ア式)の組織の詳細についてほとんど何も知らないまま臨んでしまっていたのだ。14日の活動には大きな緊張と期待を胸に抱いて臨んだ。私はア式に来るような全国常連の出身チームではなかったため、練習についていけるか緊張していた。しかしそれと同時にそのような高いレベルで自分がどれだけ通用するのかも楽しみに感じていた。

初日の練習が終わり、家に帰り一人部屋で絶望した。それはあまりのレベルの高さに何一つ自分のプレーが通用しなかったこともあるが、何よりア式が自分の想像していたような甘い組織でないことを1日で十分過ぎるほど感じ取ったからだ。サッカーのプレーだけに意識を向けていては絶対に合格できないことを理解した。
ア式の仮入部期間は「自分がチームに対してどのような存在価値を見出せるのか」という観点が非常に重要になる。それはピッチ内外においてである。そこから私は周りの1年生が率先して声を出したり仕事をしたりしているのを横目に見ながら、何も行動を起こせないまま1週間を過ごした。そのうちア式に行くのが毎日憂鬱になっていった。

そんな中迎えた2週間目の初日の活動で、私はミーティング中に寝落ちしてしまった。誰もが理解できないと思っただろう。ミーティング中に寝るなどただでさえ論外なのに、仮入部期間のまだ何の存在価値も見出せていない1年が寝たのだ。このことはミスとして扱われた。当然である。仮入部期間にミスをしてしまった私は、ほぼ入部が絶望的なのだろうと感じた。しかし私はその時何も行動を変えなかった。ただ次の日から普段より声を出すようになった程度のことしかしなかった。そして事態はそこからさらに最悪の方向に進む。

その2週間後の火曜日、私は電車で寝過ごし活動に遅刻した。遅刻が確定した時に血の気が引いたのを今でもよく覚えている。2ミスとなった私に向けられた目は厳しいものであった。そして学年ミーティングが開催された。この学年ミーティングは私にとって一生忘れないものとなった。仮入部期間であるにも関わらず最初のミスから反省を見せず、続けてミスをした私に対して、同期からたくさんの厳しい言葉がかけられた。これも当然のことである。ここには具体的な言葉は書かないでおくが、本当に生きた心地のしないミーティングだった。自分は生きていて良いのだろうかとさえ思った。人生で1番辛い時間だったと思う。

しかし私はここでやっと気がついた。自分が表面上では反省したふりをしているだけで、心のどこかで言い訳を並べ、本心からは全く反省していなかったということを。これに気づいた日から私は心を入れ替え、狂ったようにア式のために行動した。まず毎日集合の1時間半前に一人でグラウンドに行き、ボール磨きや掃き掃除をした。普段の練習準備が終わった後はトイレに行き、毎日30分トイレ掃除をした。練習中も誰よりも声を出すよう意識した。練習後も1番最後までグラウンドに残り、倉庫の掃除やボール磨きをした。この生活を1ヶ月間続けた。しかし不思議とこの活動を始めてから、だんだんと憂鬱だったア式の活動が楽しくなっていった。さらにプレーの調子もどんどん上がり始め、得意のドリブルで相手を抜ける回数が増えてきた。そこからの期間は本当に充実し、楽しいものだった。あっという間に毎日が過ぎていった。
そしてまた学年ミーティングが行われた。これは入部した人がまだ入部できていない人にアドバイスをするというミーティングだった。ここで私は多くの同期から称賛の言葉をかけてもらった。もう二度と取り返せないだろうと思っていた同期の信頼を取り返すことができて、死ぬほど嬉しかったのを今でも覚えている。そしてその2日後に合格が決まった。ものすごく壮絶な2ヶ月間だった。間違いなく人生で1番しんどい2ヶ月間だったが、大きく成長できた2ヶ月でもあったと思う。


私はこの仮入部期間とその中の2ミスからとても大事なことを学んだ。それは「自分の犯したミスは心から反省し、その後の行動で死ぬ気で取り返すべき」ということだ。当たり前のことだが、とても難しいことだと思う。これまでの人生を振り返ると、ミスをしてしまった時にどこかで言い訳をしてしまう自分がいつもいた。だから今回こんなに大きな痛い目を見たのだと思う。でもこの出来事のおかげでその悪い癖を見直すことができた。今のうちにこの癖に気づけたのもア式の活動のおかげである。何度もア式をやめたい、現実から逃げ出したいと思ったが、自分に打ち勝ち、続けてきて良かった。そして何よりこんなにたくさん迷惑をかけてしまったのに、見守り支えてくださった先輩や同期に心から感謝しています。ありがとうございました。これからももっと成長していけるように、日々の活動に全力で取り組んでいきます。



追記:学年ミーティングで「お前とサッカーしたくない。お前が試合に出る時間が勿体無い。他のやつが出た方が良い。」と言ってくれたKくんとは、今では一緒に自主練したり、オフの日に遊びに行ったりする仲になりました。

浦川舜(うらかわしゅん)
学年:1年
学部:政治経済学部
前所属チーム:早稲田大学本庄高等学院


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