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【読書記録】絡新婦の理(京極夏彦)

高校生のときにハマって依頼、追い続けているシリーズの5作目。

9月に17年ぶりの新刊が出るということで久々に読み返してたんだけど、全然間に合っていない。新刊読めるのは年末とかかな…

【あらすじ】

理に巣喰うは最強の敵――。
京極堂、桜の森に佇(た)つ。

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

キリスト教系の女学校での悪魔的な儀式、連続目潰し魔、蜘蛛屋敷での事件が一見全く関係ないようでいて絡み合い、事件が事件を再生産し、謎を解くとまた1つ事件が生まれてしまう複雑な物語だった。

1番始めに京極堂が犯人と対峙するシーンが出てくるので最初はなにがなんだかわからず読むんだけど、全部読み終わった後に読み返して、やっと意味がわかった。

茜は居場所を手に入れたくて、それが実は織作の血を引く柴田との結婚だという…次女だし織作家からは出るわけだから、嫁に出る木花之佐久夜毘売命になりたかったのかな。結局は嫁に出るのやめたわけだから石長比売になったわけだけど。

というか織作家の人間関係がややこしくてややこしくて…

父・雄之助 ←異母兄妹→ 母・真佐子
長女・紫(雄之助と外の女性の子)
次女・茜(真佐子と誰かの子)
次女の夫・是亮(雄之助と耕作の妻の子)
三女・葵(真佐子と使用人・耕作の子)
四女・碧(雄之助と真佐子の子)

そして殺された人、死んでしまった人の理由もややこしい。15人もいるんだよね。

織作家だから…8名
雄之助(毒殺)、真佐子(自殺)、紫(毒殺)、葵(他殺)、碧(他殺)、是亮(他殺)、五百合(毒殺)、耕作(他殺)

茜に危害を加えたから…1名
本田幸三(他殺)

茜の過去を知っているから…3名
高橋志摩子(目潰し魔)、前島八千代(目潰し魔)、川野弓栄(他殺)

茜の父親候補の娘だから…2名
麻田夕子(自殺)、渡辺小夜子(他殺)
→男系で見ると茜が妾腹の子、こちらが本家の子になるから?でも娘じゃなくて父親の方を狙えばいい気がするけど…結局父親じゃないわけだし…

柴田との結婚に邪魔だから…1名
山本純子(目潰し魔)

書き出してやっとちょっと理解できた気がする。

姑獲鳥の夏と魍魎の匣の登場人物が結構出てきて、こんなところに繋がりが…!となった。初めて読んだときは、結構時間が空いてたからあんまり名前にピンときてなかったんだけど、今回はあまり間を開けずに読んでるからすぐにわかってうれしい。

絡新婦は織作家の女を現してるってことかな。作中で京極堂は、女郎蜘蛛は子どもを伴って出現する女怪で、正体はただの蜘蛛なので害はないと言っている。

女郎蜘蛛は古くは機を織る巫女で遡れば木花之佐久夜毘売命や岩長比売といった神女。なのに近代化によって民族社会は崩壊し、巫女の神性は貨幣に置き換えられ、売買春が生まれたために巫女の神性は剥奪されて彼女たちは女郎になってしまった。

これは女系だったのに近代化によって男系になった織作家の女達の悲劇と一致する気がする。

最後の印鑑のシーンと榎木津の例のシーンは理解できておらず。印鑑出てくるシーンとかあったっけ?織作雄之助の覚書に押してあった落款のことかな。突然紫の部屋から出てきて不自然だったし。

あと榎木津の特性を利用して誤解させたシーンもピンときていない…茜と榎木津が会ってるシーンはほとんどないと思うんだけどな〜本当は川島喜一に色々吹き込むために会ってたけど、あくまで善意の情報提供のために会ってたように見せかけたっていうことかな。

今回は全体を通して、フェミニズムとか女性と男性の境界線とか、そういう話が散りばめられてて、今回は宗教や妖怪の話というよりはその辺りの読み応えがあったな。誰しもマージナルな存在だと思うけど、それを認めるって難しいよね。

それから女学生の美由紀ちゃんが聡明で、勇ましくて、でも女学生らしさもあって大変よかった。おじいちゃんの仁吉との関係性も。いろいろブログとか読み漁ると仁吉が茜の父親説もあってなるほど〜となった。時期的にはなくもない?

あと、偏見に満ちた刑事たちをコテンパンにやつける葵にすかっとしたり、葵と対等にではないけど、きちんと対話できてる木場に流石!と思うなど。

関口先生は作中でも出番なかったっていじられてて笑った。大変な事件が多かったからたまには巻き込まれずにゆっくりしてたらいいと思います。

消化できてない部分もあるので、塗仏の宴に入る前に、部分的に読み返そうと思う。

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