見出し画像

【読書記録】邪魅の雫(京極夏彦)

高校生のときにハマって依頼、追い続けているシリーズの9作目。

9月に17年ぶりの新刊が出るということで8月から読み返してたんだけど、全然間に合っていない。でもついにここまできたーーー

【あらすじ】

江戸川河川敷に続き、大磯でも変死体が見つかった。どちらも死因は青酸カリによる毒殺と思われたが、刑事は被害者女性と探偵の意外な関係性を知って驚愕する。人は邪悪に魅入られ易いものなのでしょうーー事件の全貌が見えたとき、殺人の連鎖の果てに、人の心に潜む殺意の不可思議が浮かび上がる(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

今回の京極堂は呼ばれなくても(正確には楢木警部補の依頼なわけだけど)やってくる!塗仏で唆されたお礼(?)に榎木津のために重い腰をあげちゃう!

いくつもの全く関係なさそうな殺人事件とその関係者。実はちょっとずつ重なっていて、次第にその関係が明らかになるわけだけど、新事実が発見されればされるほど、あまりにも脈絡がなくて、これらの事件はどう繋がっているのか、もしかしてまだ見えない大きな絵図があるのではないかと思ってしまって結局何もわからない、手が打てない状況に。

というのもこちらの事件、1つの毒薬を中心とした連鎖殺人であって連続殺人ではない。また、この毒薬の当初の持ち主が、関係者にちょっとずつ嘘をつき、別の女性に成りすまして、あれやこれやと立ち回るものだから、話がとってもややこしくなっている。

宇都木実奈と真壁恵、原田美咲の関係は本当にややこしかった…!これはみんな混乱するのも無理はない。丁寧に読んでいかないと、こっちの世界では宇都木実奈だったのがあっちの世界では真壁恵だったり、神崎宏美が宇都木実奈だったり真壁恵だったり原田美咲だったりでわけがわからなくなる。

神崎宏美は真逆の榎木津の元恋人。出征前に付合っていた唯一長続きした恋人で、徴兵されてなかったら結婚していたかもしれないそう。榎木津にそんな人が〜〜!

榎木津の思考回路は読めないけど、彼なりに宏美のことを大事に思ってたんじゃないかな。他人に全く興味なさそうなのに、復員してからも宏美の動向を把握してたわけだし、呼ばれてないのに大磯にも来てたし。

宏美は世界と対等に渡り合う榎木津にあこがれて、妬んで、でも好きで、誰にも渡したくなくて、榎木津のあの目に見られたくなくて、自分の気持ちを他者に託した。自分の善の部分と悪の部分を。善悪正邪に分けられない人の気持ちはどちらに振れてもおかしくなかったはずなのに、邪魅の雫に魅入られて、みんな邪悪な行動をしてしまった。宏美がもっと素直になっていれば、こんな事件になっていなかったんじゃないかなぁ。

それから今回は、世間とか世界の話が多かったな。個人にとっては自分の世界が世界のすべてだと思っちゃうし、自分の世界の中だったら特別な存在だけど、世界全体からしたら特別な存在でもなんでもない、大海の中の一滴の雫でしかないんだよね。それを勘違いしちゃったから、西田さんは邪魅の雫に魅入られちゃったんだよなぁ。宏美もわかってるつもりで本当の意味ではわかってなかったのかも。

榎木津の大暴れがなくてなんだか物足りなかったな〜

次はいよいよ新刊だ!!何か緊張してきた!!

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?