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稽留流産手術のレポート(妊娠10週)

はじめに

このnoteは、2023年4月に経験した稽留流産の記録です。

医師から宣告されたあと、悲しくて辛くて、どう気持ちを処理したらいいのか途方に暮れました。そしてnote・ブログ・知恵袋・Twitterで、同じく流産をした女性たちの体験談を貪るように読みまくったことで心が救われました。

私の体験もきっと誰かの役に立つのではないか……そんな思いで、流産宣告を受けてから手術をするまでについて綴ってみます。

流産の宣告

2023年4月13日、妊娠10週の受診で医師から稽留流産を告げられた。その2週間前には確かに心臓が動いていたのに、エコーに写った赤ちゃんの心臓はピクリともしていないのがはっきりと分かる。

「あ……心臓が動いていないですね……」という医師の言葉に、「はぁ……」というため息しか返せない。実は悪い予感はしていて、やっぱりなという思いと、自分の予感は間違えであってほしいという思いがぐちゃまぜになっていて、現実を突きつけられてどう反応して良いか分からない状態だった。

というのも、今回の妊娠は前回・前々回と違う感触があったから。

・つわりが比較的軽い(前回妊娠のつわりピーク過ぎくらい)
・胸の張りが少ない
・茶おりが出た(1日だけだったけど)
・尿が羊水臭い

この中でも特に心配だったのが「尿が羊水臭い」ということ。これは間違いない。産後の尿とほぼ同じにおいがしたのです。もしかして子宮から羊水が漏れ出しているのではないかとすら思ったくらい(ネットで調べまくったけど同じような違和感を感じていた方は見つからず……)。

つわりは比較的軽めだったけど、流産宣告の3~4日前からスッと落ち着いた。においつわりが和らぎ、濃い味の食べ物なら食べられるようになった。今考えると、この時に赤ちゃんの心臓が止まってしまったのかもしれない。

しかも私は37歳の高齢妊娠。妊娠が分かった頃から不安でたまらなかった。実は娘を産んでから2年間生理が来なくて、一時期は不妊治療も行っていた。その結果「卵子の質が悪いし量も少ない」と診断を受けて、もう妊娠は無理かもしれない……と絶望した。

そんな私が妊娠できたことは奇跡だ!と感じたし、このチャンスを逃したら次はないとすら思ってた。だからこそ、流産を告げられたときは頭が真っ白になった。人生って思い通りにはいかないし「子どもは授かりもの」って本当にそうなんだなぁ。

涙は出たけど大泣きはしなかった。できるだけ考えないように、夫にもサラッと「赤ちゃんダメだった、ごめんね」と伝えた。夫はガックリ肩を落として「そうかぁ……」って。流産の可能性はみじんも考えていなかったらしい。

男性は気楽でいいなぁ。女性はお腹に命を宿している感覚があるし実際につわりで大変な思いをしている。今考えると私と同じくらいの深刻さをもってほしいなんて無理な話なんだけどさ、もっと分かってほしかったんだよなぁ。

流産宣告から手術を受けるまで

流産宣告を受けたのは4月13日、手術日は4日後に決まった。お腹に赤ちゃんはいるのに亡くなっているというのは、不思議な感覚で、命が消えてしまったことへの喪失感がぬぐえない。

「この子はこの世に生まれたかったのかなぁ」「ごめんね」という思いが込み上げてきたし、何より私はこの子に会いたかった。お腹の子はどんな顔をしてどんな性格で、そしてお兄ちゃんお姉ちゃんになる子どもたちはどんな反応をしてくれるのか、それが楽しみで仕方なかったんだ。

実は、今回の妊娠は「仕事をがんばろう!」と気持ちを切り替えた矢先、思いもよらないタイミングだった。嬉しい反面、正直なところ戸惑いが大きかったのは事実です。100%素直に喜びを表せない私の思いが見透かされたのかもと、罪悪感を抱いてしまった……。

それに高齢だから、常に流産するかもと頭の隅に不安がよぎっていた。引き寄せの法則で悪いことを呼び寄せてしまったのかも……そんな思いにも駆られた。

とにかく手術を受けるまでの4日間、頭の中はフル回転でさまざまなことを考え、後悔し、いやダメだろと前向きになり。流産に関するネット上の情報も見まくった。完全に検索魔と化していて、共感できる情報を見つけては涙していました。

そして夫とじっくり話し合ったり、数年ぶりに義母と向き合ったり、大切な人との関係性が大きく変化した(この話は後ほど)。人生でこんなに考えたのは、母が亡くなったとき以来だなぁ。

大切な人の命が失われることは、私が変わる大きなチャンスなんだなと振り返ってみて感じます。それは考え方によってはギフトなのかもしれません。

流産手術当日

流産手術は怖かった。掻爬(そうは)法といって、スプーン状の器具を子宮内に突っ込んで胎児と胎盤を取り出すらしい。考えただけで怖い。

手術同意書には「子宮内から大量出血する可能性があります」という項目があって、同意しないと手術は受けられない。流産手術で死亡するなんてないとは思いたいけど、その可能性はある。

調べてみたら、病院によっては稽留流産であっても陣痛がくるのを待って、自然に胎児が外に出たいタイミングを見計らう方法を取るらしい(母体の状態による)。流産一つとっても病院の考え方って色々ある。

記録用に。1泊2日手術のスケジュールはこんな感じ。

7:30 病院到着。抗原検査。
8:00 手術を行う分娩室へ。採血・血圧測定・点滴・酸素マスク装着
8:30 手術開始。全身麻酔
9:30 全身麻酔から目覚める。気分が良くなるまで待機
11:00 部屋へ移動
12:00 昼食
15:00 おやつ
18:00 夕食
ーーーー翌日ーーーー
8:00 朝食
9:00 診察
10:00 帰宅

医師からお腹の赤ちゃんが亡くなったと宣告された時から、流産手術をすると伝えられていた。それでもせっかく授かった命、たった数か月だけどお腹にいた赤ちゃんを分娩台(本来なら元気な赤ちゃんをとり上げる場所なのに……)でモノのようにとり出すなんて……なんだかせつないしやるせない。

これまで大泣きしてこなかった私だけど、分娩台に上がった瞬間、涙があふれて止まらなかった。担当してくれた看護師さんは優しくて、私の心と体の状態を心配してくれたことが唯一の救いだった(これまでの経験上、医師と看護師は淡々と仕事を進めるのみで辛い気持ちに共感してくれる人ってほぼいなかったから)。

30分後、担当医が来て、点滴と共に麻酔薬が注入される。「ゆっくり深呼吸してください。1、2、3……」と声をかけてもらい5秒と経たないうちに意識が飛んだ。

目覚めたのは手術から1時間後。まだ頭がフラフラするし、絞り出すようにしても声が出ない。すでに手術は終わったらしい。「あ、もうお腹には赤ちゃんはいないのか……」という喪失感。妊娠を知ったときの喜びを思い出してせつなくなったし、ゼロに戻った感覚があった。

「頭がフラフラしているうちは、そのまま横になってて良いですよ」とのことだったので、そのまま分娩台で1時間近く意識を朦朧とさせていた。なんとなくこのまま死ぬのかな……なんてバカなことを考えたりしたけど、ちゃんと生きてるし、お腹が空いてきた。私は元気だ。

部屋に戻ってしばらくすると、お昼ごはんが運ばれてきた。メニューはエビグラタンとシーザーサラダ、いちご、レモンティー。ここ数カ月つわりで食欲がなく、こんなにまともな料理を食べるのは久しぶりだ。しかもしっかり一人前の量がある。食べきれるかなと不安だったけど、食べ始めたらおいしくて満たされて完食!おいしく食べられるって幸せなことだなぁってしみじみ。

おいしいご飯を食べ終えたら、急に現実感が出てきた。そして途端にまた悲しくなってきた。流産の辛いところは、気軽に友達に悩みを打ち明けられないことだ。順調に妊娠・出産できた人には、絶対にこの痛みはわからない。というか、悩みを打ち明けられても困惑するだけだと思う。

だからといって、一人で辛い気持ちを抱えるのもしんどい。誰かに聞いてほしくてTwitterで胸の内を吐き出させてもらった。

こういうネガティブなツイートって、励ましてほしい慰めてほしいって思われそうで躊躇したんですけど、なんかもう限界で。そしたらね、Twitter仲間の皆さん、私の気持ちに寄り添ってくれて温かい言葉をかけてくれた。同じく流産経験をした方もいて、辛い経験を乗り越えてきたことを知ったことで救われた。

一つひとつのリプを読みながら泣きました。顔も知らないネット上のつながりだけど、たった140字ちょっとの報告なんだけど、その奥にある私の思いを汲んで言葉を選んでくれて、私ってなんて幸せ者なんだろうと別の意味で涙が出てた。

手術をした夜は、いろんなことを考えすぎて眠れなかった。Twitter仲間がね、こんなメッセージを送ってくれて、赤ちゃん側の気持ちについても考えてみました。

私はふだんスピ的なことを信じてるわけじゃないけど、こういう世界もありえるなってしっくり。赤ちゃんは生まれたかったわけじゃなくて、短期旅行感覚で遊びに来たのかもしれない。

でね、入院中眠れなくてkindleをダウンロードしてこの本を読んでみた。

胎内記憶の研究者・産婦人科医である池川明先生の本です。お腹の中の赤ちゃんと話ができる専門家(←まじか!?と疑うところからのスタートだったけど、見えない世界ってあるのかもしれないと思わせてくれた…!)が赤ちゃんの考えていることを伝えてくれるんですけど、赤ちゃんたちはみんな楽しそうなんですよね。

流産した母親は悲しみに暮れるんだけど、産まれてこなかった本人は「別に生まれなくても良かった」「いま帰るのが一番いいと思ったから」とかそれぞれ理由をもって生まれてこなかったとか。科学的に証明できるものだけがすべてじゃないのかもと感じて、そう感じることで気持ちはだいぶ前向きになった。

そして私、だいぶせっかちなんですけど……そうと分かれば、次にできることは私の体質を変えることだ!と。実はずっと超軽度の拒食症みたいな感じで栄養をとっていない自覚があったので、体づくりをしよう!となぜか目覚めてしまった。

眠れないなかでkindleを漁り、こちらをダウンロード。

私、栄養が足りてなかったんだな……とハッキリ自覚しました。妊娠うんぬんの前に、この食生活を続けていたら更年期や高齢期がやばいことになってたはず。健康の大切さを痛感して、気持ち的にも生まれ変わった気分。喪失感から一転して「私は変わりたい!」と妙な高揚感というかやる気がみなぎって、入院中にも関わらず全然休まらない……w

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そんなこんなで翌朝。看護士さんが来て血圧や体温を測って、朝イチで検診。何も問題がないのが確認できたら、薬を処方してもらって帰宅となりました。この数日で思考はグルグル回転しまくったけど、現実はやるべきことをこなすのみ。テキパキと事は進んでいき、もう私は妊婦ではなくなってしまった。

そして1泊2日手術のお会計。約7,000円。想像してたよりむちゃ安い!健康保険の3割負担だとしても5万円は覚悟してたよ。ネットでリサーチした手術費用は日帰りで約1万円、宿泊で数万円という情報が多かった気がする。病院によって費用は違ってくるんでしょうね。

おわりに

妊娠が判明してからすぐにつわりが始まって、胎動も分からぬまま赤ちゃんは旅立ってしまいました。その短いマタニティライフの最中は気持ち悪くてしんどいだけだったけど、振り返ってみれば幸せだったのかもしれない。

私にとって、お腹に子が宿って旅立ったのは大きな意味があって「今の自分を変えたい!」と強い意志をもたせてくれました(このギフトについて別記事でアウトプットしてみます)。

悲しくて辛い経験だったけど、そんな時こそ人生の転機なんだと思います。ここで腐るか前に進むか。すべては自分次第。

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