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IT~~それを言ったら終わり~~

 まずは映画の総評だが、上映時間が長かった、ということ。しかしそこまで長いと感じなかったのは、全編に渡ってちゃんと怖がらせる見せ場を用意しているから、飽きずに最後まで鑑賞することができた。
 残虐シーンや超常現象も丁寧に描写されていた。
さすがに前編には及ばなかったものの、後編も思ったよりは楽しめた。ちなみに原作小説は3巻の途中くらいで挫折した。あまりに長すぎて話進まねえんだよな……
 しかし今回の映画は、ちゃんと小説の世界観をアレンジしつつも雰囲気や空気感は再現しており、好感が持てた。あのクソ長い小説読むなら、この映画見た方が圧倒的に短い時間で済むので、こっちを見た方が話が早いです……最近のキングって短編の方が面白いよね、って話は置いといて、これからはいつも通りネタバレ有りでレビューしていきたいと思う。

 まず気になったのは、物語の時代設定が89年~16年に変更されていたこと。原作小説では59年~86年だったと思う。この56年というのが曲者で、56年のネタをいくらされても、今の読者には何のことやらさっぱり分からない。このあたりの時代を描ているので、不良なども現実感があった。
 しかし、さすがに16年に不良を描いても、全くリアリティがなかった。でも作品の雰囲気は微妙にレトロなので、この辺の空気感や時代感に違和感はあった。普通に登場人物たち、みんなスマホ使ってるしね……
 一番気になったのは、作家になった奴が、マックブックを使っていたことだ。というか、他にもマックブックを使っていたが、映画に出てくる白人はマックブックを使う、という大統領命令でも出ているのだろうか? しかも背面ロゴが光るやつだったので、微妙な年代を感じさせる。
 マックブックで小説書くか? という疑問も湧いた。あまりMacで小説書くアプリ、なんて聞いたことがないが……
 話は戻って、16年という年代に、ホモに絡んでボコボコにして川に突き落とす不良が存在するっていうのはかなり無理があると思った。一瞬、こいつらホモカップルが主人公たちの成長した一人かなって思ったが、どうも何の関係もない一般人なので安心した。最近はすぐにホモ化させたがるからねぇ……
 このホモも、川に突き落とされて終わりではなく、ようやく助かったと思ったらペニーワイズに食われるという、徹底した不条理っぷり……

【いやぁ、これがホラーですよ!】

 弱者は救われるとか、ホモは守られるとか、そんなもんどうでもいいんですよ。弱者も強者も、等しく不条理で雑に扱われる。

 最近のワニやサメたちは、ペニーワイズの下で半年ほど研修を受けて欲しい。

ただし、ペニーワイズもちょっと頑張りすぎた感じはある。6人全員を怖がらせるために東奔西走した結果、上映時間がすごく長くなってしまった。ワタミもビックリするほどの過重労働だ。それでも、6人それぞれをキッチリ怖がらせたのは驚嘆に値する。膨大なアイデアの数々で、最高の残虐ショーを提供してくれている。
 とくにベヴァリーに襲いかかるヤマンバは非常に怖かったと同時にユーモラスで、漫画太郎のババアを連想させる。ひょっとするとペニーワイズは漫画太郎のファンなのかもしれない。


 さて、これからは少し欠点も指摘したい。
 まずはCGについてだが、よくできているが、CGがキレイすぎて浮いているので、そこまでおぞましい感じはしなかった。

 ヒロインのベヴァリー関連も、少し違和感を感じた。原作小説では、はっきりと書かれてなかったものの、低所得者層っぽい感じで描写されていた。しかし、今回の映画ではかなりデカい家に住んでおり、調度品なども豪華。なんでも、今回の夫は有名デザイナーらしい。
 そんな有名デザイナーがDVなんてするかぁ?
 まあ、人間は何するか分からんもんだが、少し違和感があった。
 さらにこのベヴァリー、小説家にもキスするけど、最後は元デブのビルとくっつく。

オタサーの姫かな?

 現実にいれば、確実にサークルクラッシャーとなっていただろう。


 あとはペニーワイズの正体が、どうも宇宙生物であるということ。これはキングのお得意技なので、どうしようもない。『ドリームキャッチャー』でも『トミーノッカーズ』でも、みんなそうだから、心配する必要はない。
 キングは宇宙人オチが大好きだし、キングの描写する宇宙人ってたいていしょぼい。
 そしておそらくペニーワイズは人間の恐怖を吸収することで生きている、という設定なのだろうけど、この設定は『図書館警察』という小説でも使われており、キングお得意の設定と言えよう。(ちなみに図書館警察は文庫本とはいえ400p近くも長さのある短編なので、気軽に読める部類と言えよう、キング作品の中では)
 『スタンドバイミー』では少年時代だけで話が終わったが、これを中年時代まで伸ばして、色んなキング設定を詰め込んだ、キングのエッセンスが詰まった作品が『IT』なのだが、何分詰まりすぎて逆につまらない、という結果になってしまった。

 小説の話にそれたが、ペニーワイズの正体もバレたところで、6人はすごいことをやり始める。
「俺たちの恐怖がエネルギー源なら、だったら恐怖無くして罵ってやればいいじゃん!」

いや、そんなことでどうにかなるわけないんだよなぁ……

「クソッたれ!」
「クソピエロ!」
「おまえはしなびたピエロだ!」
「うんこ!」
「お前の母ちゃんと寝たぞ!」

 おいおい、そんなこといくら言っても、混沌の魔女クラーグは倒せねえぞ……?

ペニーワイズ「ショボーーーン……」

 え、倒せちゃうの?!
 だからビビらすために過重労働しすぎたんだよ……それで精神的に弱っていたところに、この罵りで、きっとやる気を失ってしまったんだろう。
 縮んだペニーワイズは、ちょっと哀愁すら漂っていた。
 まあ、今まで舐めプしすぎたから、当然の結果かな? でもその舐めプが面白かったし、永遠の舐めプピエロとして、人々の記憶に残り続けるだろう……

 今度は犬鳴山にでも来いよ! 日本は海外からの移民を歓迎してるらしいぜ! そして最後に……
 
 ペニーワイズ、全編後編通じてお前が一番活躍してたぞ! だからもっと自信もっていいぞ!

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