身体を張って、AIと戦う男


ミッションインポッシブルの新作。ドンドンとトムクルーズスタントショーの様相を濃くしているわけだけど、やはりそれにはそれなりの意味がある。
80年代、ジャッキーチェンのアクションにワクワクしながら育った世代としては、鍛え上げられた人間の生身のアクションというものには、興奮と期待をもつわけである。映画ラストのNGシーンまで込みで素晴らしいアクションだった。
そういうアクションは、バスターキートンの時代から映画をみる楽しみのひとつだった。
でも、アクションは危険だから、ドンドンとCGに置き換えられていく。そしてなんなら安くすむから。スターウォーズも、ジェームズキャメロンの映画も、すっかりCGになった。
それはそれで今まで観たことのない映像で、驚嘆はする。でも、やっぱどこかがで所詮CGでしょ、みたいな気持ちがないことはない。
例えとして適切か分からないけど、格ゲーがいくらリアルになっても、プロレスや本当の格闘技がなくならないように、すべてがCGに置き換わるはずもない。それでも、より高精度のAIにより、実写同様のCGが出来、もはや、見分けもつかなくなっているだろう。
そんなふうに、観るものすべてがAIにより調整され、現実に影響しているとしたら、そもそも人間のアクションとは芝居とは、なんなのか分からなくなるのではないか。
そういう意味では、トムは、人間のアクションというものの復権と、維持保存に身を捧げているといえるのではないか。スタントマンでもない、CGでもない、実物の主人公でありスター本人がやっている。これは、世界でも稀有なことだろうし、なんでトムがそんな使命感を持っているのかはよく分からないが、60歳でそういうことをやる姿に、大げさにいえば人類の可能性を拡げているとすら思える。
ほかのマッチョ映画みたいに筋肉をみせて誇るシーンもなく、ベッドシーンもなく、ストイックがすぎるほどに、走り続けるのがすごい。

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