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時間は有限、駆け抜けるぐらいではきっと足りないから/『tick,tick…BOOM!』

 スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのアンドリュー・ガーフィールドの演技を見て好きだなあと思ったので、追いかけるようにして視聴。こちらもたいへん良かった!

 作曲家を目指すジョナサンはもうすぐ三十歳。
 夢を諦めた友人、すれ違い続ける彼女、家計はいつも火の車。ままならない現実、作曲家になれない焦りが規則正しく時を刻み、彼を追いかけてくる。
 それがtick,tick…BOOM!なのだ。

 作曲家志望のジョナサンが主人公である本作もまた、たくさんの楽曲に彩られている。
 どの曲もキャッチーで耳に残るが、特に「Boho Days」の歌が好きだ。
 酔いどれジョナサンが歌い出すところ。
 どうしようもなく音楽を奏でてしまうんだろうと思う。だって音楽が好きだから。どんなに苦しい生活でもジョンが歌えば夢や希望が透けて見えて、これが人生、彼らは生きてるんだって感じがした。まさにthis is the lifeで始まるだけのことはある!

 試聴会は成功したものの、パトロンが現れなかったジョナサンとローザの「どうしたらいい?」「次を書くのよ」があまりにも突き刺さった。そうなんだよ、ただただ書いて書いて書き続けるしかないんだよ。でもそれがどうしようもなく苦しくて辛くて、でもやっぱり書いてしまうんじゃないかな…。

 プールの中、あれだけまとまらず乱雑だった音符が、彼の回り続ける思考、混沌が、理路整然と並んでいくシーンがとても美しかった。

 私はまだ三十歳に満たないので彼らの焦燥があまり響かなかったかもしれないが、三十路直前でこの映画を見たら致命傷を食らいそう。時間は有限…。
 『G戦場ヘヴンズドア』の「気づいちゃったんだよなあ、誰も生き急げなんて言ってくれないことに。」を思い出した。

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