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【日記】息子と水中ドローン、の話。

学校から帰宅した息子が、珍しく自発的にランドセルからプリント類を取り出した。と思ったら、綺麗な青のチラシを手に、ニコニコしながら近付いてくる。

「ねぇママ?ぼくねー、えっとねー、」

随分と甘ったれた声だ……という事は何かおねだりが来るぞ、と身構える私に、息子はチラシをずいっと突き出し、案の定、

「これに行きたいぽよーーー!!」

と元気ハツラツに宣言した。
見ると、そのチラシには「海のエンジニアラボ 水中をうごくドローンをつくる!?参加費無料!」などと書かれている。

はて。ドローン……に、興味があったのか?初耳だが。
まぁ男児と言えばメカだしロボットだし、その意味でドローンもそこに入る……ような気もしないでもない、が。

何らかの体験教室のようなもののチラシのようだが、つまり何をする企画なのか、内容が判然としない。地元の海の環境を考える系統であるようだが、ドローンを作るってことは、プラモみたいに作れるのだろうか。それで、作ったドローンを水中で動かすのだろうか。
私の脳内では、息子が3歳ぐらいまでお風呂に浮かべていた潜水艦のオモチャが水中を進むイメージしかできないが、まさか「対象:小学4年~中学3年」と書いてある企画なのだから、もう少しハイテクなものが泳ぐ……のだろう。きっと。しかし、ラジコンすらロクに触ったことがない息子が、触って大丈夫なようなものだろうか、ドローン。やたら高いというイメージしかないドローンを、触らせてもらうのは良いとして、うっかり息子が壊したりしないか不安だ。

「うーーーーーん……」

「ダメぽよか?」

「ダメってことはないけど……何やるのかよく分かんないなぁって。あと、難しくないかなって」

「そうぽよか~」

うーーーーーん。
チラシを眺めて私は悩む。息子が興味を持っているなら、この謎の体験教室に参加する事自体は前向きに検討したい所、なのだが。
理解力、という意味で小4の平均に達しているか不安のある息子が、ドローンに関する事前知識も全くないままこういうものに参加したとして、中学生まで対象に含むような内容の教室についていけるのだろうか。
いやー、でも小4を範囲に入れているなら、小4でも大丈夫な内容だと考えて良いのか?分からなければ分からないなりに、息子に分かる部分だけ何か残ればいい……のか?
分からなくても楽しめるように出来ている、か……?うーーーーん?

などと私が頭を捻っている内に、息子はさっさと思考を切り替えたらしい。

「じゃあ違うのに行くぽよ!日立シビックセンターってのに行ってみたいぽよ!」

「へ?なんで??」

「色々面白いのがあるぽよ!!動画で見たぽよよ~?面白そうだったぽよ!」

ちょ、待て。
まだ頭がドローンで精いっぱいの私に構わず、息子はどんどん「日立シビックセンター」について喋り始める。どうも最近、授業で茨城県内の色々な場所について解説をしているようで、今日は日立市だったらしい。そう言えば先月は水戸の弘道館や偕楽園の話をしてきてびっくりしたんだった。
令和の小学校は、地域学習という奴に私達の時代より大分時間を取っているようである。

「えーっと、日立のシビックセンターはまぁ、冬休みにでも行こうと思えば行けると思う。あとで調べておくよ」

「行くぽよー!!」

「で、ドローンは?いいの?」

「うーーーーん。よく考えたら難しそうだから、良いぽよ!」

あっさりとドローンは息子の意識から投げ捨てられたらしい。が、どうもモヤモヤが残る。
難しそうだとか、息子には理解できないのでは?というのは、私の勝手な予想でしかない。しかしそれをうっかり喋ってしまったが故に、息子に「自分にはドローンは無理だ」というイメージを植え付けてしまった。それがどうも罪悪感というか、失敗したな、と感じる。

せっかくyoutubeとカービィ以外のものに興味を持った息子を、応援したい……ような気はするのだ。
が、ドローンと言われて「やたらと値段の高くて高性能なラジコン」程度の認識しかない私には、この企画が何をする企画なのか、息子にとって適しているものなのか……正確には「私がそれに時間と手間をかける意義があるのかどうか」の見当がつかない。

そう。結局私が渋っている理由は「私が送り迎えをしてわざわざ息子を参加させる価値がある、つまりは息子にとってそこまで面白い企画なのかどうか」という所で、要は「面倒臭い」のである。
正直言って、行かなくても何ら問題のない場所に息子をわざわざ連れて行き、自分自身は興味のない何かを眺めつつ1時間拘束されて過ごし、息子を連れ帰って来る、という動作は、出来ればやりたくないし、どうしてもやらねばならないなら、ハッキリとしたメリットが欲しい。

一方で、「面倒臭い、出来れば出かけたくない」からと、せっかく芽生えたかもしれない息子の興味関心を叩き潰すのも、良くないことなような気もする。
参加費は無料、開催場所もかなり近い。「行かない理由」を他に捻りだすとすれば、先程私が言ったような「息子には難しすぎるのでは?」の一点ぐらいなのである。

うーーーーーーーん。

私は悩み、息子が夜に眠ってから改めてこの企画についてググって調べた。
が、大した追加情報はなかった。せいぜいが環境問題をテーマにした話であること、ドローンを組み立てるワークショップがあること、地元の海についてのクイズもやること、ぐらいしか分からない。
が、まぁまぁクイズもあるなら、それなりに息子にも「何かに参加した」感は残る……か。

そんな事を考えながら、私はネットゲーム内の友人にも相談し、「え、何それ面白そう」というコメントを貰って、腹をくくった。
ぐだぐだと数時間も悩んでいるぐらいなら、連れていこう。ドローンがどんな物体か見られれば、私にとっても「よく分からない謎の物体」から「一度実物を見たことがあるもの」にはなるだろうし。
「小学4年~中学3年」向けの企画に、対象年齢ギリギリである小4息子を放り込んで大丈夫なのか?という点も、息子が楽しめなかった場合には「失敗した」という結果を得られるわけだし、次回以降の参考になる。うん、そう考えよう。

どうも環境系の話は、何かと説教臭くなりがちな上に「じゃあどうすれば」まで話が到達すると無力感を感じるばかりなので、私としては少々苦手だ。が、少なくとも息子にとっては、教育上良い話であろうことは間違いない。
私はエアコンがないと生きていけないし、PCの電源も電気ひざ掛けのスイッチも起きている限り入れておきたいが、息子が環境に興味を持つのは良いことだろう、多分。コタツのスイッチを切り忘れなくなるかもしれない。

そんな風に自分に言い聞かせて、「残り2」と表示されている申し込みページのボタンをポチり、ひとまず申し込みは完了できた。あとは息子に説明し、当日行ってみるだけである。念のため私の暇つぶしグッズを持って。

既に日立シビックセンターに意識が逸れていそうな息子が、すっかり行く気を失くしていたらどうしよう、という一抹の不安を抱えつつ。
そういうわけで、「なんか海の環境を考えるっぽい、謎の水中ドローンの体験教室」に来週行ってきます。


※初めての方向け、息子の台詞に「ぽよ」がついている理由です。


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