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【ジビエ処理施設必見】義務化されるHACCPと対応に向けた準備

少しずつではありますがジビエの利活用も進み、以前よりも街中で見かける機会の増えてきたジビエ。安心・安全なジビエ流通のため衛生管理の強化が求められる中、2021年6月ジビエ処理施設に対しても食品の国際的な衛生管理手法であるHACCP の導入が義務化されます。

「え?HACCPって何?」と思っているジビエ処理施設のあなた、そんなあなたのために今回はざっくりジビエ処理施設のHACCPの導入について紹介します。意外とやることはシンプル、まだ準備していなくても間に合いますのでご安心ください。

2021年6月からジビエ処理施設でHACCPが義務化

ジビエの利活用は増加
政府による積極的なジビエ利活用促進策の効果もあり、直近のジビエ利用量は2,008t(農水省・令和元年)と3年前の1,283t(農水省・平成28年)から比べて1.5倍以上になっています!更に全頭搬入や未利用部位の活用などにより令和7年には4,000tを目指しています。

安心・安全なジビエのためのHACCP 導入
国際的な食の安全管理強化の流れを受けて、2021年6月までにジビエ処理施設を含むすべての食品等事業者にHACCP に沿った衛生管理の実施が義務づけられることになりました。食品の国際的な衛生管理手法であるHACCP の導入により、日本産ジビエが将来的に衛生管理の厳しい海外でも受け入れやすくなる可能性もあります。


ちなみにこのHACCP、義務化後も無視し続けて対応していないと食品衛生法の違反となり都道府県の条例次第では行政指導のうえ、営業許可の取消又は営業の禁停止がなされる恐れがあります。最悪、懲役や罰金刑の可能性も。。。。

HACCPとは

食品衛生の製造工程管理手法のこと
HACCP は「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析に基づく重要管理ポイント)」の略です。食品の安全性を確保するために、手洗い、清掃、器具類の洗浄など一般的な衛生管理を前提として、特に厳重に管理すべき点(重要管理ポイント)を決定し、記録していく製造工程管理の手法です。ざっくりいうと衛生管理計画を立て、それを実行し、実行内容を記録することが求められています。

国際的にも衛生管理は強化の流れ
もともとHACCPの考え方は食品の製造や加工・調理における工程で、食中毒の発生や異物混入を防ぐために、NASA の宇宙食開発の中で考案されたものです。世界の衛生管理強化の流れを受け、日本でも2018年6月に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で、ジビエ処理施設を含むすべての食品等事業者にHACCP に沿った衛生管理の実施が義務づけられました。

「HACCP」と「一般的な衛生管理」の違いは?
とはいえ、ジビエ処理施設は一般的な衛生管理の基準に基づき地域の保健所の許可を得て営業しています。
「だったらその違いってなんなの?」という声が聞こえてきそうですが、いわゆる「一般的衛生管理」は食品製造の衛生管理を行う上で"あらかじめ決められている"10個の項目への対応を指します。一方HACCPは各事業者の製造工程から、異物混入といった特に危害が発生しやすい工程を特定し衛生管理を行っていく手法です。そのため、取り扱う食材の違いだけでなく、同食材であっても工程・製造方法が異なればそれぞれの管理項目は異なります。

HACCPに対応するには
一般衛的生管理をしっかり行った上で、誰でも簡単に継続して記録を残せる仕組みを整え、記録したデータを振り返り、改善すべき点がないか見直していきます。つまりやることは、シンプルに3つ。

①衛生管理計画をつくる
②計画のとおり衛生管理を行い記録する
③定期的に改善すべきことがないか見直す

HACCP 導入でジビエ処理施設に求められること

ほとんどのジビエ処理施設は「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の対象
いかにシンプルといえど、めんどくさそうなHACCPの対応。ただ、全部がガチガチというわけではなく、事業者の規模や扱う食品の特性に応じて、主に大規模事業者が対象となる「基準A: HACCPに基づく衛生管理」、従業員が50人未満の小規模事業者や販売店の店内での製造・加工事業者などが対象となる「基準B: HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つの衛生管理基準が設けられています。

ジビエ処理施設の多くは従業員数も数人(日本ジビエ振興協会・平成29年)と規模も小さいためほとんどが「基準B」に該当します。「基準B」は各業界団体が作る手引書を参考に、HACCP の衛生管理の考え方を取り入れつつ、一般衛生管理を基本として行い、必要に応じて重要管理ポイントも対応するなど比較的容易に導入可能です。小規模ジビエ処理施設向けの手引書はこちらで公開されています。

やることその①:衛生管理計画の作成
継続的な衛生管理を行っていくためにも計画を立てるところから始めます。自らの処理施設で行っている工程を整理したうえで、各工程について衛生管理のポイントを明確にすることが必要です。

処理工程の整理例(厚労省

と体洗浄・消毒の管理ポイント記載例(厚労省

やることその②:衛生管理の記録・保管
その①で立てた計画に基づき、日々の運用の中で衛生管理の実施状況を記録・保管していく必要があります。残していく記録には「製造するジビエのトレーサビリティ」に関するものと「業務手順を含めた施設の衛生状況」に関する2つがあります。これらについて日常的な点検結果と定期的な点検結果について記録・保管が求められています。例えば、日常的な施設の衛生状況については日々の作業手順、定期的なものとしてはねずみや昆虫の駆除実施状況などが含まれます。

食肉処理作業点検表の例(厚労省

やることその③:定期的な改善
最後に、①で立てた計画と②計画に沿った運用状況の記録を踏まえ、日々の衛生管理における問題点を定期的に見直し、計画の見直しなど改善活動を行っていくことが必要です。このような一連の流れを通じて安心・安全なジビエの提供を行っていきます。

改善措置記録表の例(厚労省

HACCP対応に向けた準備

準備の手順
HACCP対応の準備として「衛生管理計画の作成」、「計画に沿った環境整備」、「衛生管理の記録・保管方法の決定」が必要です。

衛生管理計画の作成
前述の必要なことでも紹介しましたが、各工程の整理と工程ごとの管理ポイントの設定が必要です。具体的な作成方法については、小規模ジビエ処理施設向けの手引書は(農水省)を参考にしてください。

計画に沿った環境整備
ガイドラインや衛生管理計画に沿って、現在行っている処理工程の中で設備の改修など改善すべき点があれば環境を整備します。
たとえば、懸吊設備・手洗設備・温湯設備の設置や改修だけでなく、施設内の温度計をちゃんと準備するといったことも含まれます。

衛生管理の記録・保管方法の決定
そもそもどういった項目を管理するのかといったチェックシートのようなものの準備から、記録するのは作業中・作業後なのかといったタイミングの設定、紙として残すのかスマホ入力で電子データとして残すのかといったことも。ジビエのトレーサビリティを整備することもここに含まれます。
保管方法は、いつ、どのように記録データを見直すか、保健所から質問があった場合や外部への情報提供の際に、いかに効率よく記録データを提出できるか、また万が一食中毒を出してしまった場合、どこに問題があったかを検討できるよう、後から見直しやすい方法が良いでしょう。

HACCP対応準備に便利なサービス

色々書いてきましたが、シンプルと言えど新しくHACCPに対応すのは多かれ少なかれジビエ処理施設の方々にとっては負担。そんな負担を軽減するサービスをいくつか紹介します。

・ジビエのトレーサビリティ(個体情報の管理)
任意の認証である国産ジビエ認証制度でも求められていましたが、今回のHACCP対応(ジビエ処理施設の手引き)でも個体の情報管理が求められています。提供するジビエを「いつ・誰が・どういった方法で・捕獲/加工した」のかをきちんと記録することが必要です。

お持ちのスマホやPCから使えご自宅のプリンターからQRコードが出力できるシンプルなもの(huntech:ジビエクラウド)の他、計量用の秤や在庫管理システムと連動した大掛かりなものまで色々あります。これらについてはこちら(農水省)にまとまっていますので、ご確認ください。

・ジビエ処理施設の日常点検記録アプリ
毎日の点検記録を紙でつけるのは、わざわざ紙をプリントアウトしたり、記録した用紙を棚を決めて保管するなど正直手間です。そんなときに、お持ちのスマホやタブレットからタッチ入力ができ、クラウド上に記録が残っていたら楽じゃないですか???

あるんです。そんなサービス。しかもジビエ処理施設向けの手引書に準拠した記録様式があらかじめ準備されているんです。huntechのジビエクラウド。トレーサビリティの機能もあって月額4,000円(税抜、別途初期費用50,000円)から使えちゃうんです。

ジビエクラウドの入力画面イメージ

もちろん、色々な業界向けに計画作成や帳票を作成できるサービスもありますので代表的なものを挙げておきます。ただこちらのサービスは自分で帳票の中で記録する項目を自分で設定する必要があります。

HACCPヘルパー
カミナシ
HACCPナビ
HACCPRO

まとめ

ジビエが話題になることも増えてきた中、食中毒で水をさしてはもったいないです。HACCP対応自体もよくよく読んでみるとガッチガチなものではなく施設毎の裁量が残っているように見えます。各施設の状況に合わせ、上記で紹介したようなツールを使うことで負担を減らし、安心・安全なジビエを提供していく体制を作っていっていただければと思います。

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