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#26 アブノーマルとマイノリティ

自民党の簗和生氏がLGBTQに対して侮辱ともとれる発言をしたことが物議をかもしている。どんな発言だったか調べてみたところ「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」とのことであった。

これを聞いて少し怖くなってしまったのが、実は僕も似たような発言を授業で良くしているのだ。そして毎回、授業のたびに自分の意図はうまく伝わったのかと不安になる。

僕は授業で生態学を教えているのだが、その中で動物の配偶者選択に関する話をする際に、生物一般の雌雄がどんなものかを説明しなくてはいけなくなる。すなわち何が生物のノーマルなのかを解説することになる。

生物学はどんな学問かという理解にも繋がるが、現在の生物学の中心はダーウィンが提唱した自然選択説を様々な形で証明していくことが中心になるだろう。詳細は省くが、ダーウィンの説の根幹には形質が遺伝することが前提とされる。つまり、生物学上は雌雄で子供を残すことがノーマルでありそれ以外はアブノーマルと分類せざるを得ない。

この説明を聞いてLGBTQの方たちがひっそりと傷ついていないかがいつも不安なのだ。僕としては生物のノーマルを知ることは世界の理解に必要だと信じているのだが、当事者からはただ単に自分がアブノーマルのラベルを貼られてように感じてしまうかもしれない。

だが、人間社会ではアブノーマルでなくマイノリティと呼ぶ。逆に考えると同性愛がアブノーマルでなく単なるマイノリティとして生活できる人間の社会は生物学の呪縛を抜け出した凄い生物なんじゃないかと考えている。

さて、といった形で今回の発言の擁護のようなことをしてみたが、もちろん本人が深い意図なく傷つけようとした発言であれば許されることはできないし、それよりも何よりもいまだに「種の保存」と言っているのは生物学の根幹にあらがうので撤回を願いたい。

(2021/5/26)

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