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はじめての『白い巨塔』日記・完 〜眠れない夜、財前五郎のせいだよ〜

5夜連続テレビ放送のドラマ『白い巨塔(2019版)』を見終わりました。結論から言うと、なんも言えねえ……! ってなんも結論言えてませんが、ホント言葉に出来ない想いが心と頭を埋め尽くして寝ても覚めても白い巨塔のことばかり考えてしまうのです。この「寝ても覚めても」というのは比喩ではなく、本当に夜中目が覚めるたびに「あ……財前……五郎ちゃん……白い巨塔…………すぅ……」と脳内にパッと現れては再び入眠するという文字通りの方のやつです。

正直今の時点で端的な感想を言い表すことができません。だってそれは当たり前のことで、原作者の山崎豊子先生がどれだけの膨大な時間を掛けてこの物語を生み出したのかがお話を通してヒシヒシと伝わってくるのです。それを私のようなイチ視聴者が簡単に理解したつもりになってよいのか、いいやきっとそうじゃないはずだ、ああ財前五郎、ああ浪速大学病院、ああ医療、ああ縦社会、ああ人間の欲望の果てしなさ、ああ人間の弱さ、ああ命というものの呆気なさよ……。

この5日間ただただ白い巨塔を見るためだけに生きてきて、白い巨塔のことしか考えられなくなり、できるだけ毎日やりたいと考えていたはずの執筆活動も手につかなくなり……でもそれでいいんです。無からアウトプットを続ける日々よりずっと遥かに幾倍も価値のあるインプットが出来たから。インプットとかアウトプットとかあんまり好きな言葉じゃないけれど、これ以外に上手く自分の体験を表現できる言葉が見浸からないんだよね。物凄い情報量の考えが物語を通して自分の中に入り込んできて、整理なんて到底追いつかない、本当にただただ濃厚な体験でした。

『白い巨塔』は原作小説から派生して、田宮二郎版ドラマ(全31回)、唐沢寿明版ドラマ(2クール全21回)が既に存在していて、それらの作品を鑑賞済みの方々からすれば今回の岡田准一版ドラマ(全5回計8.5時間)は物足りなかったり不満があったりした模様でしたが、初巨塔体験者の私からすれば本当に面白くて面白くて夢中になれる作品でした。もちろん細部への違和感がなかったわけではありませんが、そんなこと言ってたらどんなフィクションも楽しめない頭ガチガチ人間になってしまう。

原作から数十年が経ち、医療が進歩し、ドラマがリメイクされるごとに主人公の外科医・財前五郎の専門分野が変わっています(原作ママの専門分野は治せない病気じゃなくなってきたということ)。それだけに原作の通りに物語を描くには無理があるわけで、そのへん含めてとても気合いを入れて作られた2019年版だと思いました。何よりベース(土台)となる原作が凄いから何してもある程度は面白いのだと思いますが。

これからまた唐沢寿明版(2003)のドラマを配信で見ていきたいと思います。それが終わったらいつか原作を読みたいな。物凄く体力を使いそうだけど。何より一番の進歩はこういう医療に関する作品を自分のことと切り離してエンターテインメントとして楽しめるようになったこと。昔は結構重い映画とか好きでよく劇場に足を運んでいたのけど、自分が病気になってからは人が死ぬ物語を見るのが嫌でずっと避けてきた。物語の進行のため、企画としての奇抜さのために何の敬意もなく人がまるでコマのように制作者に殺されてしまうことが耐えられなかった。でも『白い巨塔』にはそれがなかったし、全員の死に意味があったから冷静に見られた。今の自分は重い作品ぜんぶが無理になったと思ってたけど、もしかするとそうじゃなくて、演出として見せかけの重さがあるものを許容できなくなったのかもしれない。そんなことを気付かせてもらえました。山崎豊子先生、ありがとう。

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