１年ぶりに髪を切った。前回のカットは昨年の６月の中頃だっただろうか、昔から通っていたサロンの美容師さんに家まで来てもらった。台所にブルーシートを敷き詰めて、私は車椅子、美容師さんはキャスター付きの椅子に座ってチョキチョキ。当時の時点で既に人と会うのは３か月ぶりだったので緊張したが、信頼している方なので安心しておまかせすることができた。

本来サロンのメニューに出張はないと思うのだけど、こちらの事情を伝えたところお願いを快く聞いて下さり感謝の極み。あまり深いことは詮索せずサクサク段取り良く切って下さった。見た目が整うと気分も晴れやかになるし、洗髪やドライヤーが楽になり本当に助かった。ぎりぎり結べるくらいの長さになり、メデューサのように枕の上をうねうね這う髪の毛ともお別れできた。

で、あれから１年が経ち、塔の上でラプンツェルとして生きていたところ、みるみるうちに髪は伸び、気が付けば私はみうらじゅんになってしまった。あんなにサッパリしていたはずなのに、時の流れと人体の不思議は凄まじい。自分の髪の成長スピードが常人の３倍とかでなくて本当に良かったと思う。胸のあたりまで伸びた髪はヘアゴムの跡でグニャグニャとウェーブが掛かっている。そういえば中高生の頃にもこの方法でパーマもどきを目指したことがあったなぁ……懐かしい。

みうら化最大の要因はドライヤーにある。少しでも速く乾かすためにダイソンの爆風ドライヤーを使っているのだが、それをベッドに置いて自分も寝っ転がってグワーッと一気に乾かすので、終わった時には大爆発、鏡の前に立つと笑ってしまうくらいにボンバーヘアになってしまうのだ。

１年間梳いてすらいない髪は重さも相当なもので、邪魔だからとお団子にすると頭が重くて首がグラグラする。あまりに重たいので自力では支えられず、ソファにもたれるときは首の下にクッションをあてがわずにはいられなかった。それもこれも自分は頭が大きいからだ……トミーズ雅もこんな感じなんだろうな、肩が凝るんだろうな、小顔のモデルは肩こり知らずかぁ……と思っていたのだが、これは正確には間違いであったことが断髪後に判明するのであった。髪の毛の重量とはそれほどのものなのである。

今回の断髪においては緊張を回避するため母に切ってもらうことにした。今の私は普段と少しでも違うことをすると緊張のためか刺激となって体調を崩し寝込んでしまう。だから、たがか断髪されど断髪で、意気込みとしてはほとんど文明開化のザン切り頭くらいの気持ちで臨んだのであった。

本番ではお風呂場にビニールを敷いて、首に１００均のケープを巻き、三種の神器（カットはさみ、すきばさみ、すきブラシ）を駆使しての断髪式となった。母絹代は事前のイメトレを重ねていてくれたため実に素早く、手の動きと残像はほとんど北斗の拳のそれと同等であった。「ホワタタタタタタタ！！！」と髪を切りまくる絹代と、緊張を回避するためにヒヨコのぬいぐるみを撫でながら「ぴよちゃんぴよちゃんピッピッピー」などとアホな歌を歌っている娘の私。これが地獄絵図ならばけっこう地獄も愉快なところだと思う。

アマゾンで購入したすきブラシが優れモノで、ブラシの中にカミソリ刃が数枚内蔵されていて髪を梳かすだけで髪をすくことが出来た。これは世紀の発明！　というくらいに便利で、本来なら３倍は掛かったであろう断髪時間がグッと北斗の拳サイズに短縮された。こういう便利グッズを発見するたびにメーカーさんに感謝状の一通でも贈りたくなる。

と、こんな具合で私の大爆発みうらじゅんヘアは初期の武田鉄矢くらいにサッパリした。武田鉄矢くらいの髪の長さを保つのは意外と頻繁なケアが必要なこともわかった。鉄矢、美意識が高い上にマメな男……。そういえば断髪式の冒頭、まとめて一気に長い髪を切った時、本当に「ザンッ」という音がした。「ザン切り頭」というネーミングセンスに関心すると共に武士の気持ちも少しだけ味わえて感謝である。

断髪後は頑張ったごほうびに抹茶あんみつパフェを食べた。散髪といい料理や盛り付けといい、絹代の才能が止まらない日々に私は関心しどおしだ。振り返ってみれば母親に髪を切ってもらうなんて、中学生の時以来のことだ。

あの頃は家で切るのがだんだん恥ずかしくなってきて、美容院に行きたいと言いだし、初めては変な美容院に行ってしまって変な機械で頭を洗髪され、次の美容院では髪型をムッシュかまやつみたいにされ……。懐かしい想い出がたくさん蘇ってきたのもみんな、こんな機会のおかげとも言える。普通に生きてたら３０にして親に髪を切ってもらうなんてありえない経験だし、けっこう面白かったな。

今回は様々な対策のかいあってか体調も悪くならずに済んだ。これからは軽くなった頭で更に快調に面白いことを考えられるようになれればと思う。

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↑家でササッとやりたい人には本当におすすめだと思います（審美的な要素はわかりませんが）

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