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ノートルダムの思い出

私がノートルダム大聖堂を訪れたのは2013年のことでした。ヨーロッパ一周旅行の途中、フィンランド、ベルギー、ドイツ、フランスと周ってきて、パリにも数日間滞在しました。往復の航空券だけ購入した、旅先も日程も決めていない一人旅だったのですが、私はすっかりパリに魅了されてしまい、予定より長く、一週間ほど滞在しました。

ヨーロッパには本当に数多くの教会があり、それまでの海外旅行やイギリス留学含め、教会見学には正直飽き始めていた自分がいました。私はクリスチャンではないので、どれも同じに見えてしまって。とは言えノートルダム大聖堂は有名な観光名所。一応見ておこうと、そんないい加減な理由で見に行ったのでした。

その日はよく晴れた夏の日で、周りの広場は人でいっぱいでした。大聖堂は背景に青空を背負っていて、佇まいは確かに美しかった。だけど私の心を動かしたのは、建物のその内側でした。中に足を踏み入れると、聖歌隊の賛美歌が荘厳に響いていて、ただものではない雰囲気。ステンドグラスを通して、薄暗い空間に何色もの光が射し込んでいて、それはもうただただ美しく、人間にこんなにも美しいものが作れるのかと、ここはファンタジーの世界か何かかと、目頭が熱くなるのを感じました。


安っぽい表現しか出来なくて恐縮ですが、RPGゲームに出てくる教会を何百倍もファンタジックにしたような空間がそこには在り、夢か現実かもわからないような浮世離れした空間。後にも先にも、教会や歴史的建築物を訪れて、あんなにも胸を打たれたことはありませんでした。人間が物を創ることの理由みたいなものが、あの聖堂の中には確かに存在していたのです。

今日のニュースには大変胸が痛みます(ノートルダム大聖堂で大規模な火災がありました)。 たった一度行っただけの私ですら、旅情込みで私的なフィルターがかかっているのでしょうけど、ニュースを読んでいると涙が出てきてしまいます。ならばパリの、フランスの、ヨーロッパの方々の喪失感はどれほどのものなのか……私には想像することもできないでしょう。

悲しみに暮れる現地の方々が歌う賛美歌は、あの時私が聴いた賛美歌とは全く違うものになってしまいました。どんなものにも永遠や絶対はなく、ある日突然喪われてしまうのだと、改めて思わされました。不安な夜を過ごしている方々が、少しでも笑顔になれる時が訪れますように。何十年かかっても、またあの素晴らしい空間が蘇りますように。ささやかながら祈りを捧げます。 

(2013/8/20 満月が出ていました)

HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞