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君にだけ、恋の余香

好きになって、別れたり脈がなくなったりして、

また一つ、恋が終わる。


恋が終わると心が苦しくて、

毎度よく分からない焦燥感のようなものに襲われる。

でもそれは、幾らかの時間と新しい出会いによってだんだんと消えていく。

だから失恋は、一生ものではない。そう思っている。


それに恋というのも、有効期限があるみたいだ。

あれほど好きだったのに、

嫌ところなんて1つも見えなかったのに、

しばらくして会えば、

君は「恋をした」という事実だけを纏った、ただの友達に戻っている。

失恋同様、恋愛にも、残香の余地はないらしい。


けれど一人だけ、たった一人だけ、

会うたびに恋の余香を感じる人がいる。

よく分からない人だった、

泣くほど振り回されていたと思う。

脈なんて1ミリも感じなかった。


なのに何故か、

君に会うと未だに、薄紅色の切ない香りがする。

もうずっと前に、諦めはついているのに。


好きになって欲しいとか、付き合いたいとか、

そんな欲は出てこない。


けれど一つだけ分かっていることがあって、

それは君が私の人生において、

一番好きな人だということ。


一番好きな人とは結婚しなかったと、

そう言う人生の先輩を何人も知っている。

きっと私もそうなのだろう。


君と私にしか分からない、特別さがある。

君と私にしか分からない、複雑な過去がある。

君と私にしか分からない、切なさがある。


好き同士だから、信頼し合っているから、

そんな簡単な理由で人は恋愛できないらしい。


桜の散る切なさに乗せて、

君への萌えそうな思いも散るといい。





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