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映画と車が紡ぐ世界chapter119

エンダーのゲーム レクサス GS350 GWL10型  2014年式
Ender's Game Lexus GS350 GWL10 2014


僕とKenjiは どう考えても浮いていた・・・
表参道「エッグセレント(eggcellent)」
朝食にこだわる卵をテーマとした 
おしゃれな店の 午後3時 
男二人が 
エッグ ベネディクトを注文している景色は
ゆっくりカフェを楽しむ 女性たちには どのように映っているのだろう
僕は Kenjiのチョイスに従ったことを少しだけ後悔した

そうは言っても この店の卵は なかなかのものらしい・・・
今回だけは それに免じて 許してやろう

「お前 転勤が決まったらしいな それで カノジョはどうするんだ?」

唐突に本題に入るのが Kenji流だ

そう・・・
この店の環境を とやかく言ってる場合ではなかった
僕は 節分を待たずに 南の街へ転勤することになっていた

「何ならカノジョは 俺が頂こうか?」

思わずKenjiをにらむ

Hahahaha・・・
「ほかの奴らにも それくらいの圧力を示せば
 お前も もっとうまく生きられるのに」

届いたばかりの卵料理を すするKenji

確かに その通りだ・・・
今回の人事も 
女性率99%のお店で Zuzuzuといつまでも卵をすすれる
お前のような性格なら転勤を回避できただろう

「今日 呼び出したのは ほかでもない
 このまま転勤になれば カノジョとの関係は終わるぞ
 俺は 遠距離恋愛なんて 信じない」

「そっ・・・それは嫌だ・・・」

刃物のように鈍く光るKenjiの瞳が 僕に向けられた
「それなら 俺で練習だ!
 俺の質問に 俺以上の声で 答えてみろ!
 本番になると空っきりというキャラクターを 卒業してみろ!」

ワンアウト満塁でピッチャーゴロ ゲッツー 
冷ややかなチームメイトの視線を浴びた高校時代

水たまりで ほんの少し滑ってしまった前輪に
過剰な反応をした結果・・・ 天国に逝ったアリスト

緊張して 一言もしゃべれなかった初デート
知らぬ間に 店に取り残されていた・・・

いざと言うとき 何もできない・・・
この性格は 治らないとあきらめていた それでも・・・
カノジョは 手放したくない!
僕は ゆっくり頷いた

「カノジョのことを本当に愛してるのか?」

いきなりハードルの高い質問だった・・・
周りの女性は・・・ 他人だ・・・ 人形だと思え・・・
 
「僕は Chikaを 本気で愛している!」
人形たちの視線が 僕に集中するのが分かった・・・

「転勤で カノジョをどうするんだ?」
Kenjiが言う

♪Martin Garrix feat. Bonn - No Sleep♪

「連れていく! 誰が何と言おうと!」

「本気なんだな?」
廻りの人形たちが ざわついている

「カノジョに出会った時から 結婚すると決めていたんだ!
 だから アイツを おいてはいけない!」

「それじゃあ GSとカノジョどちらか選べと言われたら?」
Kenjiの視線が 僕のハートにつき刺さった

自分仕様にカスタマイズしたGSは 
全財産を投じた相棒だ
この二択は 父親と母親どちらが大切かと問われているようなものだ
それでも僕は 躊躇しなかった

「カノジョと比較できるものなんてない たとえ僕自身であっても!」

「私も 同じよ・・・」

!!

少し離れた 席の人形が動いた・・・

Chikaだった

「どうして・・・」
僕の体はメデゥーサの魔力を受けたかのように 石化しはじめた

「エンダーのゲームだよ・・・」
Kenjiが言った

「練習だと思えば 本音も しっかり言えるだろう」

まんまとKenjiに踊らされた

いつしか 全身を覆っていた石化魔法は解けていた
カノジョの前では 
緊張して本当の自分を出せなかった僕は もういない 
カノジョの瞳を真っ直ぐ見ながら
僕はそっと カノジョの額に キスをした

後ろで Vサインを出す Kenjiが言った

「アリスト乗りのお前が 無理して買った あのレクサスGSは
 仕方ないから 俺が代わりに使ってやるよ」

ショートボブのヘアをなびかせながら振り返ったカノジョ

「ごめんなさい あのGSは 置いていけないわ
 エンダーには 乗り物が必要でしょ!」


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