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映画と車が紡ぐ世界chapter114

白い恐怖 スズキ エスクード XG TDA4W型 2012年式
Spellbound Suzuki Escudo XG TDA4W型 2012

今夜 北の街では雪が降るらしい
遠距離恋愛中のカノジョとの 久しぶりの再会だったが
雪じゃ仕方がない
これは神のお告げだ
そう自分に 言い聞かせた僕は 車のキーを机に戻した
すると・・・
駐車場の愛車 エスクードが呟いた

”僕が一番 能力を発揮できる環境なのに・・・”

確かにそうなのだが・・・
僕とホワイトは 相性が悪い
3年前のクリスマス
あの日も 真っ白なクリスマスだった
真っ赤なポインセチアも 
ウェディングドレスを纏ったように真っ白に変わった その日 
僕の恋は終わった

ホワイトと険悪になったのは いつの日からだろう・・・

白い車を相棒にしたときか・・・
駐車中に飛び込んできた車によって廃車になったのは 5年前

いや・・・
卒業旅行で 真っ白な砂浜の宮古島に行ったとき
台風のおかげで 荒れ狂う海を ひたすらホテルから眺めるしかなかった
あれは12年前だ

待てよ・・・
そう言えば 運動会で白組になったとき 
一等確実の組み合わせだった徒競走!
最終コーナーで見事に転倒して 最下位になった あれは20年前だ

結論! 
カノジョとの関係を守るため
今年のクリスマスは プレゼントを郵送することにしよう!

そう決心したとき カノジョから電話が入った

♪ White Christmas ♪

「熱がひどくて・・・
 逢えそうにないの・・・ 
 ホントにホントに ごめんね
 ようやく 貴方の顔に触れることができると 思ったのに・・・」

カノジョは・・・泣いていた

電話を切った僕は 
エスクードの鍵を ガツンと取ると
北北西へ150km ホワイト一色の世界に向かった

~トンネルを抜けると そこは雪国だった~
どこかで聞いたようなフレーズに浸る間もなく
関越トンネルを抜けたエスクードは 白銀の世界に突入した

その瞬間! 

僕の左脳は ホワイトアウト!
脳細胞はホワイト軍団に侵略されて 思考停止!

ホワイトを避け続けてきた僕は
いつの間にか ジョン・バランタイン(Gregory Peck)のように 
白を見ると 恐怖に縛られるようになっていた

しかし・・・ 
コンスタンス・ピイタアゼン博士(Ingrid Bergman)に似た
カノジョの笑顔が 脳裏をよぎると
わずかに分泌された ドーパミンが 僕を現実に引き戻した

前を走る 
クラウンとの車間距離は 僅か1mになっていた

その後も 襲いかかるホワイトのトラップを かわしながら
カノジョの家に到着した僕を
最後の 試練が待ち受けていた

エスクードを降りて玄関に向かおうとした僕を
家の屋根に積もった雪が ドサリと滑り落ちてきた

真っ白に 閉じ込められた僕・・・
グワリと世界が反転した

このまま一人・・・ 
凍り付いてしまうのだろう・・・ 意識が ゆっくりと薄れる中
僕の頬に 暖かい掌が触れた

「大丈夫かい!」

雪に埋もれた僕からの ひと言を聴いて
真っ白なニットのセーターを着たカノジョが言った

「それは 私のセリフでしょ」

凍結していた身体に
熱を帯びたカノジョの肌が絡みつく 解凍されていく僕・・・

「来てくれて・・・ ありがとう・・・
 私・・・ やっぱり あなたがいないとダメみたい・・・」

抱きしめ合いながら 熱いキスを交わした

!!

カノジョの背中に 真っ白な 翼が見えた

その日から 白は ちょっとだけ 僕の味方になった


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