なぜイベントは失敗したのか?

今日はただの日記です。誤解のないように言っておきたいのですが、noteではできるだけ考えてからまとまった意見を書きたいと思っていたのですが、そればかりやろうとすると更新頻度が下がりそうだし、日々で考えるためにnoteを使うというのも悪くないなと考え直して、今日はnoteに向かってます。なので、今日は、宝島染工展を終えての反省文をここに書き綴ります。

先に言っておくと、イベントは失敗しました。その失敗とは、成功を売上や集客で換算した場合です。ですが、イベント内容は素晴らしく、どこに出しても恥ずかしくないクオリティで、それに伴って行った無料トークショーは非常に価値の高いものであったと自負しています。でも多くの人に伝えられなかったという点でイベンターとしては失格です。だからnoteに反省文を掲載することで自戒し、次へ繋いでいきたいと思います。

倉庫兼事務所をイベント解放するようになった経緯

パンと日用品の店「わざわざ」では店舗と倉庫の2拠点があります。店舗は2009年から営業していますが、倉庫は今年2018年2月にクラウドファンディングをして工事資金を得て、ボランティア、スタッフ、プロの方々と様々な方の力を得て、古い工場を改装して倉庫兼事務所として使っています。

普段、倉庫では出荷や商品管理やオンラインストア運営などを中心に行っており、5,6名が常駐しています。ミーティングの時などは全員出社することもあります。そして2018年4月から倉庫をお客様に解放する機会も設けており、各種イベントを行うようになっています。主目的はお客様との交流で、トークショーや展示などを無料で行うことにより、幅広い知見を皆さんとシェアして文化交流したいと考えています。

宝島染工とはなんなのか?

今週までの2週間は、わざわざで取り扱いをしている福岡県の宝島染工の展示と、宝島染工の大籠さんとのらくら農場の萩原さんをお呼びして3人でクロストークを行うということをやりました。

宝島染工は一言でいいかえれば「すごい染物屋」です。語彙が少なすぎると思われてもそう言いたいくらいすごいです。宝島さんは化学染料を使わず草木染めで、布はもちろん、木や紙、革なんでも染めます。それがすごいのか?ということですが、それはもちろんすごいのですが、もっとすごいのはその運営方法です。

草木染めと聞くと何か、地球に優しいというようなふんわりイメージがあって、その反対に、少量しか染められないとか、すぐ褪色してしまうとか、日光に弱いとか、とかそういう物としての付加価値のメリットと共に面倒くささみたいのも包括していて、それでもあなたは買いますよね?みたいな価値観のやり取りみたいなものが出てくると思います。

だけど、宝島染工は違います。代表の大籠さんは、上記のような草木染めのデメリット自体が好きではないと言います。できるだけ褪色しないように考えたり、できるだけ使いやすいように従来の草木染めの考え方をアップデートして、現代の草木染めを行なっています。

通常の個人の草木染め屋とは比較にならないスピードと精度で、1000枚単位の大手ブランドからのOEMを受けることもしばしばです。OEMは縁の下の力持ちなので、面に名前が出ることはありませんが、みんながよく知っているブランドのあれもこれもあれもこれも、請け負って仕事をしています。

そして、OEMだけではなく自社ブランドもあり、その自社ブランドの製品ではOEMで得た幅広い知識を活かし、すばらしい技術とセンスで、デザイン・縫製・生地の良質さ・染めまで一貫して、クオリティ半端ない洋服を作っています。全体の売上はOEMが6割、自社ブランドが4割だそうで、自社ブランドが伸びてきた現在もOEMはやめないと大籠さんは言います。理由は、技術力が下がるから。OEMでは自分たちが考えもつかない提案をされることがあるから、それに付随して技術力が上がるそうです。もう本当に脱帽です。

宝島染工には現在9名が働いています。女性のオーナーが一人からスタートして、17年継続して事業を行い、染物という新規事業でここまでの伸びをしているのは例がないでしょう。大籠さんの人柄は非常に柔らかく、この期間中で何度も一緒に、ご飯を食べ酒を酌み交わし様々な話をしましたが、まるで家族のような関係になれたことが、私にとって最大の収穫だったかもしれません。

のらくら農場とはなんなのか?

のらくら農場は長野県佐久穂町にある有機農家です。簡単に言うと、農薬や化学肥料を使わず野菜を育てて出荷しているということです。ですが、本当は「すごい農家」です。語彙が少なすぎて申し訳ありませんが、こちらもちょっと考えられないくらい凄いです。

のらくら農場の萩原さんは、新規就農で移住してきてご夫婦二人で開業されています。21年前のことです。まだ有機農業がそれほどメジャーでなかった頃、新規就農で移住するということが、今ほど行われてない頃に事業をスタートされています。

現在のらくら農場には短期と長期と合わせて12人のスタッフが勤めています。長野県は寒さのため冬に一切農業をすることができません。なのに、年間通して7名が就業しています。それがまず信じられませんし、個人の有機農家がこれだけの人数を雇うということをできるということを、他に聞いたことがありません。そして、野菜は年間を通して50種類から60種類の多品目を栽培しており、その多品目を小規模農家にはない生産量で出荷していることが驚きです。また自社で加工食品も手がけており、うどん、レトルトスープ、漬物などわざわざでも販売しています。こちらの製品のクオリティも素晴らしいものがあります。パッケージデザインから味、安全性、全てにおいて一農家が作ったものと一見してはわかりません。

萩原さんは農業は化学だと言います。作りたい味、作りたい品種、作るべき時期(旬)に合わせて肥料設計して、計画的に野菜作りをしています。冬の間に肥料設計を行い、それを近隣の5農家でグループを組んでノウハウ公開し、大手のスーパーに大量に多品種卸すということを実施しています。グループ全体の売上は1億円を超え、それは佐久穂町全体の農家の売上の15%ほどになっているというから驚きます。

萩原さんのカブと春菊をいただきましたが、正直、食べたことないくらいおいしかったです。カブはフルーツのように甘く、春菊の根元の茎は柔らかく甘みを感じられ、二つとも食べた瞬間においしいと誰もが感じるようなそんな味がしました。野菜がおいしい長野という地域特性を見ても飛び抜けた魅力を感じました。

有機農業という枠にこだわらず、慣行農法の方と情報交換をしたり、ありがちな有機を目指した時点で固まるような思考性が感じられず、萩原さんは底抜けに明るく知識に貪欲です。もう脱帽です。あんな大人になりたいです。(私も十分に大人ですが、お二人を見習いたいです)

なぜ二人をブッキングしたのか?

宝島染工の大籠さん

のらくら農場の萩原さん

私がこのトークイベントを企画した経緯は、二人と別々に話していて面白い共通項が見えたからでした。農家と染物屋、パン屋という全く別の稼業ではありますが意外と似ているんです。

1.一人や夫婦から新規事業として初めた
2.事業を継続して行っている
3.従業員を10名前後雇っている
4.小規模事業者には少ない、ある程度の生産力がある
5.売上が5000万円以上ある

この中でも、一番特徴的なのは4番。小規模事業者には少ない、ある程度の生産力がある。ということです。これって実はものすごいブルーオーシャンなのです。BtoBで言えば、大手メーカーが、マスビジネスではないある程度絞り込んだマーケットに物を売りたいと考えた時に、協力元の選択肢が宝島染工やのらくら農場になってきます。いつものマス向けではないけど、実験的に変わったことを少しやりたいといった時のニーズに答えることができる人、会社、事業はあまりないのです。大手がマスを選ばない選択をしたとしても、10人100人規模を想定して事業を行うことはありません。千人単位でのマーケットを作ることができなければやる意味がないのです。だけどこの千人単位でちょっと変わったものを高クオリティで作れる人はそうそういないのです。

また消費者が人と違った価値観でものを選びたいとなった時に、BtoCのわざわざになってくるわけです。ある程度の商品数から選ぶことができ、それがある程度の規模感で売り切れない。すぐに売り切れてしまったり、欲しい時に買えない店はやはり魅力が半減します(パンについては今その状況すんませんです。でも結構焼いているのですよ)。

3者に共通しているのは「中量生産」というキーワード。世の中の価値基準が多様化され、人の興味はレイヤー化されています。これからは、少量でも大量でもない、個人事業主や中小企業が選ぶべき形が、中量生産という形になることでしょう。私は、この形態を多くの伝統産業や製造業、飲食業の事業者に伝えたいと思います。ここ、殆どの人がやれていませんよ、だから、私たちは伸びていますよと。そして、このやり方は大量生産をする大手になろうとするより、十分現実的で、競合も少なく、やりがいもある仕事になるちょうどいい具合だと考えています。

ただ、トークの最後に3人で話した「中量生産でい続けるのか?」というテーマ。それには誰もうんと頷く人はいませんでした。3人とももっとやれること、やりたいことが山積しているために、上を目指しながらの中量であることを忘れないように書いておきます。

でも、集客できなかった

会場には空席が目立った

こんなに凄い人を呼んだのに、私はこのイベントで集客することができませんでした。6日間のイベントで120名ほどの来場はあったでしょうか。日に換算すると、1日20名弱の来客です。わざわざの実店舗には平均で60組ほどの来客があるので、その1/3に満たない数字です。最終日に行ったトークイベントにも十数名のお客様が来たのみで、空席のある中で登壇していただいたことに心が痛みました。遠くから来ていただいたのに本当に申し訳なかったです。

原因はなんだ?
1.導線がうまく作れなかった
2.イベント内容がわかりにくかった
3.ハードルが高かった
4.イベント会場と実店舗が離れている

イベント終了後に、スタッフ間で話したことは、こうすればよかった、これが悪かった。次はこうしたい。片付けをしながらひたすら反省会が自然に始まりました。

1.導線がうまく作れなかった

わざわざでは常に導線を意識して行動をしています。例えばおいしいものがスーパーに置いてあったとしても、それがおいしいという事実だけで売れることはありません。おいしいことは買わないとわからないので、まず手にとって選んでもらうための行動をしなければなりません。パッケージを変えたり、ポップを作ったり、毎日SNSを更新してみなさんにこれはおいしいですよ!これはこんなに素晴らしいんですよ!私たちはこんな取り組みをしていますと、情報発信し、お店でお客様に伝えていく活動を導線と呼んでいます。それを常に意識しないと、売れるものも売れないというのがわざわざの基本スタンスです。

今回、大々的にイベント情報を流すのが、イベント1週間前になってしまいました。これは直前に告知するべき事案が重なってしまったことが原因です。cakesの連載開始、オリジナル商品(わざわざの働きかた、リネンTシャツなど多数)の販売開始、noteでの活動の告知、様々な情報が5月後半に集中してしまいました。メルマガ、LINE、SNSなどでお客様に膨大な情報を流しすぎて、いわば迷子のような状況にしたと考えてます。情報を追いきれなくなり、イベントに導くための線は見づらく、複雑になりました。

反省としてはスケジューリングをもっとうまくやることです。大きな行事を重ねず一つ一つにもっと丁寧に取り組むために、より計画的に行うべきだと反省しています。

2.イベント内容がわかりにくかった

先ほどのどうして二人をブッキングしたのか?という点がお客様に見えにくかったことが、トークイベントへの集客が少なかった理由だと考えています。染物屋と農家とパン屋でどんな話があるのか?ということが、わかりづらく伝えることができませんでした。このnoteはイベント前に書くべきでしたし、なぜこのイベントを今やるのか?という必要性と、来るべき価値をもっとしっかり伝えるべきでした。わかりにくいと人は興味を持たない。失敗しました。

3.ハードルが高かった

宝島染工さんの衣服はその性質もあって、わざわざの取り扱っている物の中で高額商品です。しかし、その価値は高く、値段以上の価値があると思って販売しています。正直、マジこのクオリティこの値段で買えるなんてありえなくね?と思ってます。だけど、パンと比べたらめっちゃ高いです。これも高付加価値の部分を伝えきれなかったことが原因で、お客様から見た参加ハードルが上がってしまいました。

染物や価値を理解してもらうためにワークショップを開催したり、トークショーを前半に持っていって、理解した上で作品に触れてもらうという場を作り目線を一段階下げる工夫が必要でした。完全にこれもミスりました。

4.イベント会場と実店舗が離れている

わざわざ実店舗とイベント会場は車で7分ほどの距離に位置しています。店に来た人がそのままイベントに参加できる機会があれば、もっと身近にもっと気軽に参加できたと思います。ですが、車で7分という距離は、私たちが思う以上に心理的に遠くなってしまったのです。それは1,2,3の原因と密接に関係しています。イベント内容がわかりにくく、ハードルが高いことが関係して、離れた会場に足を運ぶ明確な理由がなくなったのです。本当はわざわざ足を運ぶ価値があることを伝えきれなかったのが主因であることは、間違いありません。

それでもまた、やるんだ。

楽しかった

来年も宝島染工とのらくら農場とのコラボイベントをやらせていただきます。大籠さんと萩原さんには謝って、来年もやりたいという旨を伝えました。萩原さんが会場にもしお客さんが一人だったとしても、来た甲斐があったと言ってくださったこと。大籠さんが2度も福岡から足を運んでくれて、展示も満足がいくものができたと言ってくださったこと。大先輩の温かいお二人のお言葉に感激しました。惜しみなく協力してくださったことに、心より感謝申し上げます。

継続して取り組むことに意義があるし、これは全部私が悪いんですが、こんな機会に参加できなかった人がかわいそうです。告知をしっかりして導線を作って、すばらしい二人の活動を伝えていくことができなかったことを後悔しています。多くの人に二人の話を聞いて欲しかったです。めっちゃ目から鱗落ちたと思います。個人事業主や会社経営者の方々、サラリーマン、主婦でもどんな人にも響く内容だったんのではないでしょうか。

ということで来年もやります。今現時点のフェーズで3社とも止まることはないでしょう。だから毎年みなさんに活動報告する場としても面白いと思います。内容ももっと企画を詰めて再チャレンジしたいと思います。楽しみにしていてくださいね。そして、お二人の製品はわざわざのオンラインストアでも購入できますので、ぜひご覧くださいませ。


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喜びが爆発しそうです
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#デザイン 記事まとめ

デザイン系の記事を収集してまとめるマガジン。ハッシュタグ #デザイン のついた記事などをチェックしています。広告プロモーションがメインのものは、基本的にはNGの方向で運用します。
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コメント9件

はじめまして。私も現在お店を経営していて、8年目…危機です。笑 平田さんのnoteを読み、今日「わざわざの働きかた」届きまして、熟読しました。意気消沈していましたが、一回死んだつもりでゼロから新しい場所、つくってみようかと少しずつ考え始めました。イベント、また企画してください!必ず行きます。
トークイベント伺いました。
はじめから終わりまで楽しかったです。

テーマとなっていた中量生産については勿論ですが、ときにふわふわとお話が広がったり、繋がったり、結論が出たりする様子や、文章にすると省かれるような、取り留めのないように見えて実はとてもすごいお話が聞けて、トークイベントの醍醐味を味わえたなーと充実した気持ちで帰宅しました。

試食させて頂いたのらくらさんのカブ、もし、わざわざさんの店舗で先行試食されていたら、遅れて伺った私は会場に入れなかったのではと思います。
衝撃的なカブでした。

またお三人のお話が聞けるのを楽しみにしております。
noteでbuzzられた時から平田さんの記事を読ませていただいております。にわかわざわざフアンです(^^;;
イベントは集客難しいですね。準備周到で告知やチラシなど行っても思ったようには人は集まってくれませんよね。でも、失敗談としてさらけ出されること自体がイベントを開催するにあたって準備に与された全ての皆様、そしてお客様を全て肯定されていることがとても理解できる記事でした。個人的にですが、原因追求の 3番 ハードルが高かった というのが気になりました。イベントの完成度が高まっていくにつれ、実は参加者や興味を示すお客様が普段感じれない敷居や、ハードルとか、カッコ良さの概念などがそもそも基準にない方(ただ、単純に染物好き〜っ、蕪や春菊スキー♡、とかとか)に、興味の糸が手繰ってもらえなかったのかも。なんて思ったりもしました。生産者側と好きで買う消費者側、好きでしてる仕事から派生するアート的な生産物や農作物を何らかのパッションや想いを、そのもの自体で感じ取って素直に欲しいと思う心。ものの在り方や役割が明確でシンプルな程、わかりやすく、伝わりやすく、また広がりやすい気がします。
こんにちは。イベントに参加できず残念でした。
以前お伺いしたときに、倉庫までの道がわからず迷子に。最終的にはたどり着けたのですが、
まったく全く土地勘がなく、
方向音痴な私にはなかなかハードルが高かったようです(>_<)
Googlemapだと旧社名が表示されていました。
地図や店舗スタッフさんに旧社名を案内したもらえるといいかなと思いました。
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