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本出版から1年で起きたこと(と4度目重版のお知らせ)

皆様、お久しぶりです!わざわざの代表の平田はる香です。2018年にnoteに「山の上のパン屋に人が集まるわけ」を書いたことがきっかけで、2023年4月にサイボウズ式ブックスさんから「山の上のパン屋に人が集まるわけ」を出版させていただき、1年が経過しました。

あれから、ありがたいことに何度か重版となり、この度、4度目の重版となりました!!!みなさまのお陰です。ありがとうございます!これで合計15000部ほどの本が世の中に流通し、皆様のお手元に届いたか届かなかったか…というところです。本が売れないこの世でこうやって何度も重版されたことに感謝の念が絶えません。ありがとうございます!!

山の上のパン屋に人が集まるわけ サイボウズ出版

クオリティ追求と市場での認知の獲得が同時にできるのが、チームでの本作り

さて、この本を読んだ方は、巻末の付録で驚いた方も多いとおもいますが、実は私は書いていません。noteなどで長年文章を書き綴ってきたことから、本人が書いてないというのはかなり衝撃だった方も多かったようで、驚いたという感想を何十人もの方から伝えられました。

このお話をもらった時も、今も、私の本業は零細中小企業の会社経営でありますから、実務も出張も講演もなんでもかんでも自分でやります。秘書もいませんし、経営と一口に言ってもただの何でも屋です。そんな忙しい中で本を出すという提案をいただいた際にライツ社の大塚さんから「平田さん、自分で書かないという選択もできますが、どうでしょう?」と問いかけられた時に出てきた言葉は「えっ??そんなのあるのですか〜!!喜」でした。自分でもびっくりしましたが、これほどに自分に執着がなくなってきたんです。

ライターは自分が過去にインタビューを受けた中で一番衝撃を受けた土門蘭さんを指名させていただきました。土門さんは私の言葉の奥にある心を汲み取って話したこと以上の表現をしてくれる方です。それから3年、ライツ社とサイボウズと私、土門さんとの本作りが始まったのです。十数時間のインタビューを書き起こしていただき、何度もテーマを変更しながら編集してできたのが、私のライフストーリーと共に経営者になっていく道のりを描いた「山の上のパン屋に人が集まるわけ」というわけです。

チームの皆で顔合わせした時に撮った写真が、本の表紙のイメージに繋がりました

この本の製作過程が私の経営人生に大きな影響を与えました。チームで仕事を行うということは自分の会社の中でずっと意識して行ってきたことです。ですが、社外の方とチームを作って長期的に仕事をするということは初めてでした。目標はこの本を10万部売ること。私のような学歴も出自にも誇れることがない何も持たない人間が、一生懸命もがきながら生きようとする姿は、誰もの生きる力になるのではないか?読むだけで元気がでる、何か行動したくなる、年齢はハードルではない、いつからだってなんだってできる、そういう勇気をもってもらうような本を沢山の人に届けたい。そういうことでの10万部のビジョン。

達成したいビジョンがあって、それをみんなが信じれば、社外でも協力しながら一つの仕事が完成度高く実現されていくことを知りました。昔、スタイリストアシスタントをした時に経験した撮影現場とかがそうだったなぁと思い出しました。一つの絵を撮るためにプロが集まり激論しながら作る世界。真剣だし怖いけど、その真剣さがすばらしい作品を産むんだなと。中小企業の小さなフィールドの中では、仲間で力を合わせて足りないところを補い合いながら仕事するのが精一杯です。この体験を通して、それぞれのフィールドのプロが役割を果たしながらクオリティを高めていくことの価値に気がつくことができました。

10万部売るという大それた目標は、沢山の人を巻き込みました。パンのイメージをそのままにインパクトのある装丁をしてくださった吉岡さん、余った紙でサスティナブルな仕様にしたいといった無理難題を実現してくれた藤原印刷さん、わざわざのこれまでの文脈にない人と対談することで層が広がるのでは?とイベント企画してくれたツドイの今井さん。10万人に届けるぞ!というビジョンがどんどん共感を呼び、沢山の方が協力してくださいました。その節はありがとうございました。まだ目標には程遠いです。ですが、いつか…!

もう一つ価値を感じたのが、一般の流通に乗ることの大切さです。私の店は山の上にあり、地元の人でもわざわざ来ないと辿り着かない場所にあります。なので聞いたことあるけど行ったことはないという人もとても多いです。知る人ぞ知る店でしかなかったんです。それでよいとも思っていました。自分のできる範囲はそれだと思い込んでいたので。

ですが、本が出版されてから、地域の本屋にもこの本が並びプッシュされるようになりました。地元の新聞や長野県内のメディアにも取り上げられ、地元の講演会に呼ばれることが増えました。

松本の丸善さんでの様子

そして、近隣のお客様にも認知が拡大されていき、客層が広がっていったのです。そして、本というメディアの強さ、信頼感。これまで響いていなかった年齢層が高い方にも信頼を得ることができたように感じています。本が出ていて、近所の本屋にも置いてあるお店のわざわざ、きっとそこにあるものは確かだろうと思ってもらえたと思います。本が出たんだねと声をかけられることもあり、こういう認知の獲得もとても大切だなと新たな視点が増えたのです。知る人ぞ知る店から、誰もが知っているわざわざへ。そんな未来を夢見ることになりました。

この二つの経験を積んだことで、チーム外とのプロフェッショナルとの仕事を増え、わざマートを県内に多店舗展開していくという新たな目標が育っていったと感じています。

出版ツアーを経験して知ったフィールドワークという勉強法

さて、話は少し変わり、この本が出てからのプロモーション活動の一環で「山パン全国ツアー」という講演活動を行なっています。これがとんでもない強行スケジュールで、この半年、全国をずっと駆けずり回っています。笑。

発端は2018年に自費で講演ツアーをやった時の反響がすごかったとサイボウズチームに話したところ、サイボウズが全ての旅費を出すことを決定してくれ、では私は講演費はいりませんとなり、本を100冊買いきってイベントをしてくれる場所に全て行くということになりました。講演会を開催したいという方が30人ほど手をあげてくださり、予想以上の反響でした。

広島のミナガルデンで講演企画してくださったメンバーと一緒に。ミナガルデンの運営手法は私には絶対にできないことだからこそ凄いと思ったし、学びが深かったです。
兵庫県三田市での講演の様子(サントアン主催)サントアンさんの企画しているマルシェの運営が素晴らしく真似したいと思いました。
鳥取県八頭郡八頭町での様子(隼Lab.主催)廃校の活用でこれほど人が集まっているのは初めて見ました。すごいです。
福岡県嘉麻市では現役の小学校で講演させていただきました。小学生も一緒に聞いてくれた?笑
瀬戸市のますきちさんでは、瀬戸市の発展ぶりに驚き、懐かしい方とも再会でき嬉しかった!

選ぶという選択肢もあったのですが自分で言い出したことですし、本をたくさんの人に知ってもらうきっかけが作れるのならばと、全て行くことにしました。現在20カ所ほどを周り、この6月末まで続きます。圧倒的に地方が多く沖縄や五島列島、鳥取、岩手、秋田など過疎に悩む地域の方々から、経営のヒントを得たいという願いの元に開催されることも多いです。また経営者だけでなく、これから開業予定の方や元々わざわざのファンだったユーザー層もおり、客層は年齢も様々、職業も様々な幅広い層が集まってきました。

経営という仕事にフルコミットしながら、地方を駆けずり回る、この体験は苦行とも捉えることもできますし、様々なことを考えるきっかけにもなりました。

まず、この講演ツアーをやりきるために自分自身の体調管理と時間管理を徹底することを誓いました。私は遅刻癖があり、道に迷ったり乗り物の中で何かに没頭したりすることが多く、どうしても目的の時間に辿り着けないということがこれまでにありました。でも講演でツアーでそれをやったら終わりだなと思いました。そして、体調を崩してキャンセルすることも許されないと思いました。ツアーになっているので後半までほぼスケジュールが固まっており、リスケになった場合に対応することができません。

2時間前に着くようなイメージで行動すること、睡眠時間を常に8時間以上キープすること、移動はエスカレーターを使わず歩き、常に運動を意識することなどを心がけ、現在、全ての講演で無遅刻無欠席を達成しており、自分自身の意識改革を行うことができました。これは本当に嬉しい変化です。ハードスケジュールの中で、心身ともに健康を保ち、尚且つ、人に迷惑をかけてないって人生の中で初めてできてると思います。

そして、大きな気づきがあったのが、長崎大学での講演でした。経済学部の山口先生に呼んでいただいたのですが、ゼミ生がフィールドワークをかなりの頻度で行なっているお話を聞きました。私は大学に行っていないので、ゼミというものや大学というものがどのようなことをして学びを得ていくのか、よくわかっていません。今までも友人にゼミのことなども聞いていてなんとなく理解したような気にもなっていたのですが、体験していないのでイメージができてなかったのです。

山口先生とゼミの学生たちと夕ご飯を一緒に。ママに「頭のいい人ばっかりと日頃から話してたらだめよー。私みたいな人と話すことが大切よ」とお叱りをうけました。笑。いや、でもほんと色んな人と話さないとだめ。楽しかった!!

そんな中で学生と話し、先生と話し、自分が今まさに体験していることそのものがフィールドワークであり、自分が本を読んだり人に聞いたりして学んでいることが座学であり、大学とは座学とフィールドワークと研究を繰り返して学びをえていくことろだったんだな。という大きな気づきがありました。(バカですいません笑)

私の人生そのものが、大学という場所で行なっている学びの型でできあがってきたことに衝撃を受けました。こんなにも短期間で日本の地方に足繁く通い、現地の方に話を聞き、地域を観察して、講演して帰ってくる。帰ってくると自分の仕事に学んだことを活かしながら実践して、また行く。それを繰り返していくと自分の学んだことが段々と言語化できるようになっていって、それをまた人に話す。

やっていることは気付く前も後も同じですが、フィールドワークと捉えるか捉えないかは大きな違いです。誰もの目の前で起こっている事象は同じです。ですが、どう捉えるかで大きな違いを生むのです。認識が違えば考え方が変わり、行動が変わります。私の場合、本の出版のプロモーションツアーだったことが、自身のフィールドワークであると認識に変わったことで、更に学んでこようという意識が芽生えました。できるだけ沢山の方に話を聞き、見て、何を学べたか整理するという繰り返しを行うことが大きな財産になったと考えています。学ぼうという意識が見える景色を別のものに変えていきました。ただ、自分の体も大事なので、コミットしすぎたりするやり過ぎはやめようと思い、そこそこの感じでやるようにしてます。健康大切なんで。

ということで1年ぶりに再読してみました

なんと…!!また泣いてしまったのです。信じられない。。しかもポロポロポロポロととめどなく涙がこぼれ落ちてきたのです。

 私が見つけた素敵なものを伝えたい、共有して分かち合いたい、みんなにも楽しんでいただきたいという根っこの気持ちは今も変わりません。
 自分が良いと思ったもの、信じているもののためなら、努力を惜しまない。むしろその努力は、自分への生きがいとつながっていったのです。

山の上のパン屋に人が集まるわけ P77より

この文章を読んだ瞬間に泣いてしまいました。「努力を惜しまない。その努力は自分への生きがいへとつながる。」私が今も大切にしていることの一つです。限りある自分の命を完全燃焼させて死にたいと常々思っており、わざわざを始めるきっかけに誰かの役に立ちたいという原点があります。私の考え方は流動的で変化しやすく、年齢とともに穏やかに人を受け入れ、様々なことに寛容になってきたと感じていたのですが、こういう芯の部分は自分は変わっていないのだなと何だか感動してしまいました。

ICCという経営者のカンファレンスがあるのですが、先日、ICC共催のパーティがあり参加させていただきました。その中でJapan Heartの吉岡さんという医師の方の講演がありました。カンボジアやミャンマーで無償で子供達に医療を提供するというすばらしい活動を行なっている団体を作った方で、非常に感激しました。お話の中で、吉岡さん自身が考える生きる意味や医療の意味についてのお話をされていたのですが、人生を通して自分の時間をどのように使うか?ということについて、より深く考えたく、そして行動したくなりました。

自分の仕事はたかが小売業で人の命に関わるものではありません。吉岡さんのように直接的に誰かの人生に関わることはできませんが、人は食べますし、着ますし、生活します。人々の人生の中で接点の多い小売という仕事を通して、自分にできることをやり続けること、それが即ち私の生きがいであるという認識を改めて持てました。吉岡さんとの活動とは比べものにならない小さな世界での仕事です。ですが、誇りをもってまっすぐにこれからもやっていこうと思います。沢山稼いで、吉岡さんのような方々に寄付をできるような事業にしたいです。

ということでまだ読んでない方どうでしょうか?

まだ読んだことのない方もたくさんいらっしゃるかと思います。よかったら「山の上のパン屋に人が集まるわけ」をAmazonやわざわざオンラインストアで購入して、読んでみませんか?役に立つようなノウハウはないかもしれません。不器用な生き方かもしれませんが、まっすぐに自分の足で歩いていく人間の物語です。10万冊にはまだまだ遠い道のりですが、このnote をきっかけに読んでもらえたら嬉しいです。

本の装丁にこだわっており、ぜひ紙の本でお読みいただくことをお勧めします。amazonレビューもかなり増えてきており現在91個のレビューで星4.4です!!嬉し過ぎます。。

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