見出し画像

書を持て。街に出よ。


 皆さん、こんにちは。出あえっ! 槍を持てッ! 木賃ふくよし(芸名)です。
 さて。ワタクシは基本的に日本語を愛してやまない訳ですが、それでも好きになれない言葉は存在します。
 本日は、ワタクシの中でその中の代表となる2つを話題にしたいと思います。


 「書を捨て、街に出よ」と、

 「百聞は一見にしかず」である。



 ワタクシはこの言葉が嫌いだ。大嫌いだ。名探偵コナンの「真実はいつもひとつ!」ぐらい嫌いだ。
 事実はひとつだが、真実はそれぞれの意識下に存在するのでいくつもある。
 「書を捨て、街へ出よ」と「百聞は一見にしかず」も同様だ。

 誤解なきように言うと、元ネタとなる「書を捨てよ町へ出よう」の寺山修司は好きだ。しかし、この言葉が大嫌いである。
 百聞は一見にしかず? そりゃ確かに、聞くよりも実際にやったほうが早い、なんて事は山ほどある。案ずるより産むが易しとはよく言ったもので、ぐじぐじ悩むよりは、とっととやっちまえ!って話である。その点は大いに賛成だ。
 だが、許せぬ。
 理由は簡単だ。


 知識なめんな。


 百聞で足りぬなら千聞だ。

 千聞で足りぬなら万聞せよ。


 学問とは、知識とは、知恵とはそーゆーものである。
 それをしたり顔で「百聞は一見にしかず」だぁ?

 てめえ如きが一回経験しただけで訳知り顔してるより、こっちが何十冊、何百冊と読んできた本の方が何十倍、何百倍と重いわ。

 そもそも本は経験の集約だ。濃密なのだ。著者が積み重ねた人生を言葉に変換してわかりやすく伝えるものなのだ。一回の経験如きが、常に一冊に勝るなんて思わない方がいい。無論、百冊の本に勝る経験もある。そーゆーもんだ。だが、


 だいたい、てめえは
 百聞してねえだろ。


 無知が無知のままする経験と、百聞した上でする経験にどれほどの差があるのか考えたこともねえだろ。
 いいか。
 「書を捨て、街に出よ」ではない。


 書を持って
 街に出ろ!


 てか、書を捨てんな。勿体ないわ。本好きを舐めんな。だいたい、ベクトルが違うものを同列に並べる時点で愚かさを露呈しているようなものだ。

 わかりやすく言おうか。
 格闘ゲームが好きだからって、別に格闘技が好きな訳でも、格闘技をやりたい訳でもないって人は山ほどいるんだよ。

 それを一回、格闘技の体験教室に行っただけで「格闘ゲームとか子供の遊び」呼ばわりですか。
 美少女ゲームに没頭してた奴が、彼女ができた途端に「お前ら、オタク卒業しろよ」とか、ヘソで茶が沸くわ。

 そもそも真剣に格闘技やってる人が格闘ゲームも好きだったらあかんのか? 妻子持ちが美少女ゲーム好きだったらあかんのか?
 全然別の話だろ。格闘技も格闘ゲームも面白い。実在の女性も二次元の美少女も好き。それでいいだろ。どっちかだけが好きでも、両方好きでも嫌いでもいい。
 ちょっと齧ったぐらいで、しょーもないマウント取るな。

 あの手塚治虫も「マンガ読んでないで色んな経験しなさい」と若者に向けて言った。
 ガンダムの富野由悠季だって、「アニメなんか見てないで外へ出ろ」と言った。
 宮崎駿もそう言ってた。

 だけど、こいつら全員、
 バリバリの陰キャだからな?


 そりゃワタクシだって可能なら、色々な経験をしたい。実体験をしてみたい。しかし、体験を経るには時間もコストも労力もかかる。
 だからこそ言いたい。仮想体験が出来て、知識を増やせる本を読め、と。
 無論、同時に言いたい。時間も体力もある若者は、可能な限りの実体験をしてほしいのだ。ぐたぐだ言ってる暇があるなら、やれ、と。

 前述の三人も、おそらくは「偏った作品ばかりに触れて、頭を硬くする前に、もっと色んな体験をしなさい」と言っているのだろう。
 だって、そんな説教するより、テキトーにファンを褒めて信者にした方が自分の儲けになるんだし。
 あるいは、自分の少年期のやり残しに悔恨があるのかも知れない。同じ轍を踏んで欲しくないのかも知れない。

 だから言う。


 書は捨てるな。

 書を持って街へ出よ。



 文武両道なんて大層な言葉じゃなくていいじゃない。本も体験もどっちも欲しがる欲張りであるべきだと思うのです。
 手も握れない中学生じゃあるまいし、プラトニックな愛だけが至上って訳でもあるまいよ。セックスしちまったら、もう愛が語れない訳じゃない。
 知も、実体験も、心も、全部欲しがるぐらいで丁度いいと思う次第である。


 なお、色んなクリエイターが「書を捨て街に出よ」と言う中、「ドラえもん」の藤子・F・不二雄先生だけが、


 「スポーツも勉強もできない。

 友達もいない。


 でも、漫画は描ける。

 漫画しか描けない。


 そういう人の漫画を、

 僕は読みたい」




 と言っていて、ワタクシはとても感銘を受けた。
 なんて優しい言葉だろう
、と。

 でも、

 色んな経験をしてきた今、愚直なまでに、一個の事にだけ集中できる才能がある人ってほんの一握りなので、優しい言葉のようで、実は一番厳しい事を言っている気がしてならない。

 だって、
 スポーツも勉強も、できない奴よりはマシ。
 友達もいない訳じゃない。
 でも、特に漫画が描ける訳でもない
ってのが大半の人間なのだ。

 スポーツも勉強もマシ = 面白い漫画が描ける って訳じゃないんだから。

 一心不乱に漫画だけを書き続けられる、なんてのは例外中の例外で、その才能がない人は、色んな経験をして、潰しがきく仕事に就いた方がいいって事なのかも知れない。

 うん。
 ひょっとすると「漫画なんか、アニメなんかに夢中になるな」とか「漫画しか描けない人の漫画が読みたい」ってのは「この仕事は色々キツいからやめとけ」って事なのかも知れませんな。



 あ。


 (´・Д・)」 ワタクシは元飲食店経営者ですが、コレだけは言っとくね。


 飲食店で独立起業とか、

 マジでやめとけ。



 ※ この記事はすべて無料で読めますが、お気に召した方は投げ銭(¥100)をお願いします。なお、この先には特に何も書かれてません。

ここから先は

52字

¥ 100

(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。