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【ひとり旅をしたい人へ】旅が僕に自分の思いを形にする方法を教えてくれた。 - 『ラオスにいったい何があるというんですか?(村上春樹)』を読んで

今日紹介する本『ラオスにいったい何があると言うんですか?』村上春樹 著

2019/11/02作成 2019/11/10最終更新

海外ひとり旅の魅力。それは自由気ままな旅路や予想外の出会い,トラブルによる成長だけじゃない。
今日は経験者だけが知っている、海外ひとり旅のもう1つの魅力について書きました。
旅仲間にも是非読んで、共感してもらえたら嬉しいです。

1.前書き

四季の移り変わりに合わせて、好きなときに心ときめく街へ出かけていく。荷物は小さなリュックと機内持ち込みサイズのスーツケースだけ。身軽で、空白をたくさん持って歩いたら、空いたスペースに思いもよらなかった出会いが滑り込んでくる。それが私たちのひとり旅。

ひとり旅のはじめ方。最初はみんな絶対怖い(伊佐知美)より一部抜粋。

ラオスからこんにちは!
だいきです。

みなさんは海外ひとり旅についてどう思いますか?

僕はひとり旅、特にバックパックひとつで海外を巡る旅が好きです。
僕の周りにもひとりで海外に出る友達がたくさんいます。

では、そんな旅の魅力ってなんでしょう?

「自由気ままに旅できる!」
「怖いし寂しいけど、成長できるし達成感がある!」
「不意に起きるイベントやトラブルが思い出になる!」
「旅人同士の交流がある!」

非常に分かります。
でも、今日はその話はしません

それについては既に素晴らしい記事がいくつも出てるのでそれを読んでください。きっとひとりで旅がしたくなります。

僕も初めてひとりで海外を旅した時は不安で仕方なかった。
自分の殻を破って、旅を終えた時の達成感と満足感は一生モノです。

(↑初のひとり旅はバックパッカーでのアメリカ横断。ロサンゼルスから入って20日弱かけて辿り着いたタイムズ・スクエアの景色,その瞬間の感動は決して忘れることはない)

でもね?
僕ももう十数ヶ国をひとりで旅してまして、荷物もこれぐらいで済むようになりました。

(↑無印の「折り畳んで小さく運べるリュック(右上)」に全て収まる。現地調達は不要。預け荷物がないため旅が非常に楽になった)

もう笑えないようなトラブルやミスも起こりません。僕の旅レベルではトゥクトゥクのおっちゃんなんて相手にもなりません。

(↑公園で昼ご飯とビールを楽しんでいたら絡んできたおっちゃん。「乗らないよ」って言ってたのに30分ぐらい話に付き合ってくれた)

達成感や成長が見込めないのです。

そもそも、今はスマホがあります。アプリで地図も読めれば翻訳もしてくれます。恐怖心さえ乗り越えれば、ひとり旅は難しくありません。

あとこんな僕なので、旅は友達とした方が絶対楽しい。友達の前では自由気ままな旅路なんてなんの魅力にもなりません。

それなのに、なぜ僕はひとりで旅を続けるのか?
そこにはひとり旅にあるもうひとつの魅力が隠されていました。

今日はそれを僕に教えてくれた本を紹介します。

2.ラオスにいったい何があるというんですか?

そこには特別な光があり、特別な風が吹いている——ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの自然、「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島、フィンランドの不思議なバー、ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、そして熊本の町と人びと——旅の魅力を描き尽くす、村上春樹、待望の紀行文集。

旅する小説家 : 村上春樹の紀行文集です。
彼はこの作中でも訪れるイタリアやギリシャなどに滞在しながら『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』などの長編小説を書いています。
その中で紀行文もたくさん書いているのです。

「村上春樹の長編小説は苦手でも紀行文なら読みやすい」
とたくさんの人が言っていますが、本作は村上春樹ワールド全開です。

彼はボストンの移り変わる季節をこう描写しています。

ハロウィーンが終わると、このあたりの冬は有能な収税士のように無口に、そして確実にやってくる。川面を吹き抜ける風は研ぎ上げたばかりの鉈のように冷たく、鋭くなってくる。僕らは手袋をはめ、毛糸の帽子を耳で引っ張り下ろし、時にはフェイスマスクまでつけて走る。でも冷たい風だけならまだいい。我慢しようと思えば、なんとか我慢できる。致命的なのは大雪だ。つもった雪はやがて巨大なつるつるの氷の塊となり、道路を塞いでしまう。

文体のクセがすごい
え?どこが読みやすい?
僕のはじめての村上春樹が本作で「絶対こいつとは友達になれない」と思いました。

それでも読み進めていくうちに面白さに気づき、そしていつしか、この本が僕の旅のバイブルになっていました。

3.旅先で余った時間をゆったりと過ごすことは、最高の贅沢だと思いませんか?

ルアンプラバンでは、僕らは自分が見たいものを自分でみつけ、それを自前の目で、時間をかけて眺めなくてはならない(時間だけはたっぷりある)。そして手持ちの想像力をそのたびにこまめに働かせなくてはならない。そこは僕らの出来合いの基準やノウハウを適当にあてはめて、流れ作業的に情報処理ができる場所ではないからだ。僕らはいろんなことを先見抜きで観察し、自発的に想像し(時には妄想し)、前後を量ってマッピングし、取捨選択をしなくてはならない。普段あまりやりつけないことだから、初めのうちはけっこう疲れるかもしれない。でも身体がその場の空気に馴染み、意識が時間の流れに順応していくにつれて、そういう行為がだんだん面白くなってくる。

村上春樹はラオスの仏都と名高いルアンプラバンに訪れて、とにかくゆったりとした時間を過ごします。

そこに数多くあるお寺を訪れて、奉納されている仏像を眺めます。

そしてよく探せば、無数にある仏像の中にはどうしてかはわからないが、僕と個人的に結びついている(としか見えない)ものがちゃんと存在しているのだ。そして僕は自分自身のかけらみたいなものを、そこで——余った時間と自前の創造力をもって——ちょっとずつ拾い集めていくことができる。なんだか不思議な気がする。世界というのはとてつもなく広いはずなのに、同時にまた、足で歩いてまわれるくらいこぢんまりとした場所でもあるのだ。

そして思いを巡らす。世界の成り立ちに及ぶまで。

これって最高の贅沢だと思いませんか?

海外旅行ってお金はかかるし、観光都市に行けば「限られた時間でどれだけたくさんの名所を巡れるか」が勝負になるかと思います。
一方で、彼は時間を忘れて思索にふける。
けれどそこには、海外でひとり過ごす本当の魅力があるのです。

4.言葉が頭を埋め尽くす。そんな体験を追い求めて

僕は海外でひとつの街に滞在するなら、観光は1日〜2日で済ませて、あとはゆっくりするのが好きだったりします。

市民憩いの広場でのんびりしたり…

本を読んだり…

そういう風にして過ごしていると、だんだん頭の中に言葉が溢れて、とっても心が豊かになっていきます。

何もかも新鮮な海外にいくと、最初こそ体感する全てを吸収しようとアンテナが全開になる。
でも数日してその地の文化に慣れると、周りの全てが頭を素通りする瞬間がやってきます。まるで歌詞のない音楽を聴く時のように(村上風)。

普段日本にいると様々なことがその意味を語りかけてきます。電車で見る広告やスマホの画面,友人の噂話…から。
僕らは常に多くの情報にさらされて、ゆっくり物事を考える暇がありません。

そんな僕らが海外にいく。
そこには知り合いもいない、Wi-Fiもない。仕事や課題,人間関係,惰性で見てたテレビ番組…それら全てから解放される。
さらに見るもの聞くもの…何もかもが馴染みのない異国の地でゆっくりしていると、僕たちの意識は内へ内へと向かいます。
そして頭に浮かぶ思いを、丁寧に汲み取って言葉にする時間が、僕らにはたっぷりあるのです。

冒頭で掲載した記事で伊佐さんは「空白をたくさん持って歩いたら、空いたスペースに思いもよらなかった出会いが滑り込んでくる」と語っています。
空いたスペースに滑り込んでくるのは、何もトラブルや人との出会いなどの外的なものだけじゃない。内から湧いてくる自分の思いが、その空白を埋めることもあるのです。

素晴らしいと思いませんか?
一度その経験をしたら、日本に帰っても自分の思いを形にできるようになる。まるで幼少期に覚えた泳ぎ方を、決して忘れることがないように(村上風)。

それでもだんだんと、日常の忙しさに追いやられて、自分の思いをうまく捉えられなくなる。
だから、僕はひとりで海を越えるのです
言葉が頭を埋め尽くし、心が豊かになるその瞬間を追い求めて。



僕は今、憧れのラオス・ルアンプラバンに来ています。
旅行記はこれからゆっくりと書いていこうと思います。

次回

『ルアンプラバンで会った人達と、普通に楽しむ!』お楽しみに!

2019/11/10作成
ラオスの旅行記はコチラ→『観光化されていない本物の托鉢を求めて』

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今日紹介した本

『ラオスにいったい何があるというんですか?』

村上春樹 著
2018年 文春文庫より
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