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外から見ると、日本はどう見えたか

 長い間、海外に住んでいたので、その間に私の視点は外国人のそれに近くなっていた時期がある。

その時に外から見た日本はどうだったのかについて、簡単に書いてみたい。

細かい話は色々とあるのだが、ざっくりとしたイメージで言うと、日本は、オーストラリアみたいに見えていたのだ。

オーストラリアみたいに素敵でのんびりした国?

いやいや、そうじゃない。

私は、2000年代にオーストラリアにいた時に、IT系の大学院に通っていたのだが、その際に、豪州人はよく自嘲気味に話す言葉があった。

オーストラリアは意外とIT技術が発展していて、それはisolatedだからなんだよ。

オーストラリアは物理的に世界から隔絶された場所にあり、土地の大きさの割に人口も少ない。他の英語圏から離れているだけではなく、人口も多くないから、常に誰かとコミュニケーションが取れるIT技術には敏感で、早くから取り入れようとしたらしい。

私自身は、オーストラリア人は、あまりテクノロジーに依存しないで大自然の中で牧歌的な生活をしているのではないか、毎日BBQをしてハッピーに暮らしている人が多いのではと思っていたので、彼らが最先端技術に長けているとか、それらの技術を非常に愛しているとかは、全く想像もできなかった。

物理的に周囲を海に囲まれて、地続きで他の国と接しているわけではなく、かつ検疫も厳しく外からの異物が入り込まないように徹底しているのだが、そのお陰で、オーストラリア国内に生息している動植物はユニークで、それは諸外国にはないものだったりする。

そこでしか見つからない珍しい動物や植物が多彩であるため、オーストラリアは動植物などの生態系が非常にユニークな国だと見なされている。

それと似た感じで「日本は非常にユニークな国である」と見えていたのだ。

日本もオーストラリア同様に、周囲を海に囲まれていて、他国と土地で隣接しているわけではない。文化的にもユニーク極まりない。

古いが割と有名なジョークにこういうのがある。2006年のログにある。

テキストで読むならこちらをご参照あれ。

当時の日本は、まさに器用に小型化高性能化をして、それを競争力のある価格で世界に提供していった。あのAppleのジョブズが憧れたのはソニーであり、傾倒したのは禅であった。

ちなみにオリジナル商業製品のコピー(海賊版)を作って自国のモノにしていったのは、中国ではなく日本の方が先(汗)。日本の場合は、その改良版を本家よりも低価格で提供して市場を席巻していったわけよん。

コンピューターゲームを小さな箱でできるようにしたのは、トランプなどのカードゲーム会社であった任天堂だし、安定していて故障が少ないのに燃費の良いクルマを出したのはトヨタだし、カッコいいバイクを出したのはホンダだし、宮崎駿など独自の世界観で世界と勝負できるコンテンツもあったし。世界中の漫画家が影響を受けたんじゃないかと思われるのは、AKIRAであった。

2002年頃のオーストラリアでは、中国人とインド人が一気に増え始めた頃で、彼らの多くが移民目的であった。意外かもしれないが、当時の中国人は心の底から日本にあこがれている人が多く、彼らよりも一回り以上も年上の私が、なぜかアイドルの様に人気者になってしまった。それはひとえに私がホンモノの日本人であったからだ。

彼らにとって初めて見る日本人が私

という状況は、その後あちこちで出現するのだが、とにかく日本の話を聞かせてくれ、日本のモノを見せてくれ、日本の音楽を、漫画を、アニメを!!!という感じであった。

英語の語学学校での授業中に「ある国についての情報をプレゼンする」という課題が出て、私はネパールを選んで紹介したのだが、私が他の生徒たちの前に立ち、ネパールについて紹介しますと言った途端に、クラス中が落胆の声で包まれてしまった。「日本じゃないのかよーっ!!!」という感じである。

当時の日本は、まだまだアジアの若い人たちにとってはキラキラの存在であったのだ。

アジアの東の端にある島国は、まさに西側諸国とも東側の他のエリアとも違う、ユニーク過ぎるカルチャーを持っており、奇想天外なストーリーや、アニメや漫画などを輩出し、電気製品はとんでもない性能のものを市場に出してきて世界を魅了する。彼らの頭の中を知りたい。そのユニークさを実際に見てこの目で確認してみたい..............

ビジネス大学院では、SCM(Supply Chain Management)の授業でトヨタのKAIZENの話が出て、しかも教授がそれに傾倒していて、クラス内で唯一の日本人である私に何度も視線を向けて「このクラスは、ラッキーなことに日本の方がいるので、ぜひとも直接説明してもらいなさい」などと引き合いに出されて冷や汗をかいたものよ。

日本人全員が生花ができるわけでも、お茶を点てられるわけでもなく、家で相撲をするわけでも、毎日江戸前寿司を作っているわけではないし、当然、トヨタのカイゼンやカンバン方式についての説明を詳細にできるわけがないっちゅうねん!!

まぁとにかく、かようにもニッポンという国は、珍しいニンゲンが集うisolatedな国だと思われていたのだ。

これが私が「珍しい動植物の生態が守られているオーストラリアみたい」と評した所以である。

日本人がその輝きを明確に失っていくのは、おそらくiPhone等のスマホが発売された頃ではないかと思う。そしてその後、2011年の災害とその対応で、トドメを刺されたように感じる。

それ以降、特に中国系の友人から同情されるようになったっけ。「日本という衰退が約束された国に生まれて気の毒すぎる。昔は良かったこともあったのにね。」という感じである。ちなみに彼らは中国系であっても国籍は違ったりするので、純粋な中国人というわけではない。すでに海外に出た勝ち組なので、その上から目線っぷりはすごいで(汗)。

日本人はその惨めさを今頃になってヒシヒシと感じているのかなと考えると、どうやら認識は世界から10年遅れということになる。

では、日本に再浮上の兆しはないのか?

いやー、それはもう若者に委ねるしかないと思うね。そして彼らは大人の見えていないところに、すでに引っ越しを終えている。これからも大人の目からは見えないところにいるかもしれないから、いつまでも日本が世界から遅れをとっているばかりに見えるかも。

でもこのカルチャーのユニークさは、実は世界にとっても貴重なもの

だから若い人たちが夢中になっていることを支援しろなんて言わないけれど、叩き潰すことだけはやめてね。

ヒントはデジタルコンテンツ、かな。メタバースとか難しいことを言う以前に、時空を超えた価値観がすでにそこにあるのだわ。

いやぁ、本当にニッポンは面白い国だから、どんどん海外に発信していかなくちゃ!

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