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探偵討議部へようこそ⑥  #2

前回までのあらすじ
<ヒデモー>ことヒデミネ・ガクトはスーツのベルトと革靴を部室に置いたまま、S大でのスノッブな集まりに出かけてしまった。

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「どうでもいいけど、あんたそんなに喋れるんじゃない。能面かと思ったら、いろんな表情するし、、。とりあえず、靴とベルトを忘れてることは電話したの?」
とリョーキちゃん。

「電話はしたんよ。ヒデミネくんに。そしたらおいて行ったカバンの中から着信音がして、、。携帯持ってはらへんみたいなんよ、、。」

「リッキー先輩の方は?」
今度は僕が聞く。

「マスモト先輩は、絶対運転中には電話を取らはらへんねん。『危険があぶないですから。』っていつも言ってはる、、。たぶん留守番電話やわ、、。」

「念のためにかけてみなさいよ!」というリョーキちゃんに促され、ユウカさんが恐る恐るマスモト先輩の携帯に電話する。

「はい、マスモトです。Hi! It`s Rickey Masumoto! ただいま運転中です。Unfofofortunately, I am driving right now. 着信音の後にメッセージを残してください。どうぞ。Could you leave a message fofofor me, could`nt you? ThaThank you !」

日本語で話して自分で英語に同時通訳するスタイルの留守電、、。初めてきいた。しかも、相変わらず舌が回っていない。日本語と英語のテンションが違いすぎるのも怖い。

「困ったね、、。でも、僕にもしてあげられることはないよ。申し訳ないけれど、、。そもそもどうして僕に相談したの?」
困惑して問い返す僕に、ユウカさんは信じられないような一言を言った。

「だって、ヒデミネくんの友達って、箸本くんだけやんか、、。」

あるぇー!?そうだったけ??友達だったかなあ、、。とは思ったが、悪いことに、その瞬間、僕の脳裏に「ズボンがずれて、半べそをかいているヒデミネくんの顔」が浮かんでしまった。あの誇り高い、「学年トップの」ヒデミネくんがそんなことになってしまったら、確かにヒデミネくんらしい自信満々なウザさを失ってしまうかもしれない。ウザくないヒデミネくんは、ヒデミネくんではない。

そのウザさを惜しんでしまった時点で、僕はヒデミネくんの友達、と言えるのかもしれない。それにしても、僕の周りにいる人はどうしてことごとく友達がいないのであろうか。

「わかったよ。ユウカさん。やれることはやってみる。」
僕は宣言すると、ユウカさんの手から巾着をもぎ取った。

「って、あんた。どうするつもりなのよ!?」と驚いた顔のリョーキちゃん。

「S大に行くには、東インターチェンジから高速にのる可能性が高い。この時間、道路はかなり渋滞しているから、高速に乗る前に自転車で追いつけるかもしれない。リョーキちゃんは、BOXに行って、デストロイ先輩をつかまえて!後から追いかけてきて。」

自転車で追いつけない場合、ドミンゴに追いつけるのは<デストロイ>ことシジュウイン・クチサト先輩の愛車、DT250だけだ。デストロイ先輩なら、「しょうがねえな。」とか言いながら、力を貸してくれるはずだ。

「あんたに命令される筋合いはないけど、まあ、わかったわ!言っとくけど、ヒデモーのためにするわけじゃないからね!ヒデモーのズボンなんか、私には世界一どうでもいいことよ、、。でも、ユウカ、あんたが泣きそうだから、手を貸してあげるわ。泣いてるあんたはブサイクだから、見てられないわ。」

何気にひどいことをいうリョーキちゃんだが、言葉と裏腹に脱兎のごとく走り出した。僕も駐輪場へと走る。探偵討議部、(主にデストロイ先輩)の力を見せてやる。

ユウカさんは、「箸本くん。マスモト先輩の車は青のスバル・ドミンゴで、後ろにたこ焼きのステッカーを貼ってはるわ!」と叫ぶと、祈るような目で僕たちを見送った、、。

(続く)


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