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90年代の深夜番組「ロバの耳そうじ」について

「ロバの耳そうじ」は、1994年から1996年まで日本テレビ系列局で生放送された日本テレビ製作の深夜のバラエティ番組である。番組の視聴者は主に30代の男女が中心だった。1980年代にフジテレビで放送された「オールナイトフジ」を意識したセットや雰囲気を演出していたため、オールナイトフジを見ていた層が当時(80年代)を懐かしむような形で視聴していたのではないか?と番組のプロデューサー(中村元気)は語っている。

同じ時間帯で放送されていた日本テレビの深夜番組

1980年代後半以降、男性向けのお色気番組が次々と終了する状況が続き、「お色気番組が存続危機」となった。そのような風潮の中、1991年にテレビ東京が女性向けの深夜番組として「ギルガメッシュNIGHT」を制作。初期の頃は、お色気番組が自粛されていた時期ということもあり、視聴率が取れず苦戦していたが、1993年頃から徐々に人気を集めることになる。

1990年代を代表する女性向けの情報番組「ギルガメッシュNIGHT」

ギルガメがヒットした影響を受けて民放各局は、再び深夜のお色気番組を復活させることになる。フジテレビでは1993年に「殿様のフェロモン」、1994年に「Mars TV」をスタートさせ、テレビ朝日では女性視聴者を意識した「トゥナイト2」を前身番組であるトゥナイトをリニューアルする形で放送、そして日本テレビもギルガメの対抗馬として製作したのが「ロバの耳そうじ」だった。

ローバー・美々のロールモデルとなった映画「氷の微笑」でのシャロン・ストーンの名シーン

中でも特に有名なのは、ローバー・美々の存在である。番組のプロデューサーである中村元気は元々、報道畑出身で局アナとニュース番組で仕事をしていたときに「局アナはそんなに品行方正じゃないよ」という思いが胸にあったらしく、風刺してやれ!といった感じで1992年にアメリカで公開された映画「氷の微笑」でシャロン・ストーンが足を組み替える有名なシーンを参考にしてローバー・美々のキャラクターを発案した。

ローバー・美々の人気に続いて出演していた妹分的なキャラクター

名前の由来は「ロバの耳」と英国車「ローバー・ミニ」から取ったもので以後、このキャラクター名がそのまま芸名となった。ちなみに番組に出演していた当時、衣装さんから用意された下着または水着ではなく、自前のパンツを着用していたという。ローバー・小美々、ローバー・子美々といった妹分的なキャラクターも登場した。

ローバー・美々と同時に人気だったチチダス・美々

ローバー・美々と平行して人気を得ていたチチダス・美々の存在も有名である。当時、AV女優だった水原美々が演じたキャラクターで名前の由来は、地域気象観測システムの通称・アメダスから乳を見せる「チチダス」に捩ったものと自身の名前「美々」を合わせたものとなっている。ブリキのブラジャーとパンティを身に付けた衣装が特徴的でブラジャーを開いて乳房を露出する「チチダスmimiのエロティックな天気予報」のコーナーを担当。毎回、番組でチチダス・美々に来て欲しい視聴者を募集して、応募してきた視聴者の自宅・寮・会社などにチチダス・美々が訪問し、その現場で天気予報を行う内容が人気を博す。主に男性が多い場所に訪問することが多かった。

コンプライアンスが厳しかった1990年代、多くの批判を受けて番組は終了した

放送開始当初から「低俗番組」のレッテルを貼られ、日本PTA全国協議会からは常に「超ワースト番組」と批判されていた。当時日本テレビの社長だった氏家齊一郎が日本民間放送連盟の会長も兼務していたため、加盟社(系列ネット局)から常に槍玉に挙げられることも多かったため、番組は1年5ヶ月で終了する結果となった。

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