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お色気番組はどうして消滅したのか?

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世間一般では「クレームが増えたから」・「規制が厳しくなったから」・「女性蔑視になるからでは?」といった意見が多く挙がると思います。しかし、必ずしもそれだけとは限りません。他にも理由はたくさんあります。

1.銭湯文化がなくなったこと

テレビからエロ及び女性の裸が見られなくなったのには意外にも銭湯文化と関係している部分がある。昭和の頃(終戦後)は、市民の生活衛生施設として都市部を中心に多くの銭湯が現れ、一般庶民には家に風呂が無いのが当り前でした。銭湯や温泉では見ず知らずの人々あるいは知り合い同士が裸でその空間を共有している。毎日、銭湯に通いみんなと一緒にお風呂に入る習慣があったので他人の裸を見るということにも抵抗が無く、裸を見たくらいでは誰も驚かなかったのです。つまり銭湯は他人と裸を共有する文化だったので、テレビでも裸を共有していたということです。

しかし、高度成長期に入り、可処分所得の増加とともに自家風呂普及率が高まりはじめると銭湯は徐々に衰退していきます。テレビや冷蔵庫、クーラー、自家用車のように自家風呂のある家も庶民にとっては憧れであり、所得の増加はすなわち「自家風呂のある家に住む」に繋がっていったのは必然なことでした。

家庭風呂普及の影響により、「お風呂は自分の家で入るもの」・「他人に裸を見られるのは恥ずかしい」・「みんなで裸を共有するのは変」という風潮になっていきました。このような社会変化によってテレビに対しても「不特定多数の人が見てる公共の場(テレビ)で裸を見せるのは変」・「混浴や銭湯など他人と裸を共有する文化が無いのにどうしてテレビでは女性の裸が出てるの?」といった意見が増えるなど、視聴者の見方や価値観も変化していき、お色気番組・裸のシーン・銭湯・秘湯などを舞台にしたドラマもどんどん姿を消していきました。
※銭湯文化が無くなる→他人と裸を共有しない→公共の電波→裸が減る

2.AV女優の活動方式の変化                                                                             
現在のセクシー女優は、タレント・アイドル・モデル・Youtuber・海外進出・作家といった様々な分野で活躍していてSNSやYoutubeといったメディアを使って個人で情報発信・宣伝することができます。 

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しかし、昔のAV女優は、情報源がテレビしかなかったので自分の作品を宣伝するためには自らテレビに出演して視聴者(主に成人男性)に存在を知ってもらわなければいけなかったわけです。何故かというと、名前を知ってもらわなければ作品=AVが売れないからです。テレビ局もAV女優さんの存在を認知してもらうために「AV女優の活躍場」を作る必要があったのです。

当時のお色気番組・深夜番組を思い返してみると、                                        ・11PMやオールナイトフジのビデオソフト情報
・殿様のフェロモンのハケ水車
・ギルガメッシュNIGHTのギルガメ治療院
必ずコーナーが始まる前にAV女優さんが自分の作品を紹介していましたよね。                                                                                                               1980年代に、ピンク映画などで活躍していた田代葉子さんも11PMに出演した時、こんなことを言っていたことがあります。                                 「私たちは、テレビとかビデオなどそういうモノでしかみなさんに見てもらうことが出来ない。だからテレビでは自分をアピールするために思いっきり脱いじゃいます」って。。。昔は今と違ってAV女優さんの活動が限られていたのです。

3.グラビアアイドル・ブームの終焉                                                           
1990年代~2000年代前半にかけてC.C.ガールズやシェイプUPガールズといった、セクシー路線に徹したアイドルグループやイエローキャブ勢などのグラビアアイドル全盛期がありました。この影響を受けてテレビ局もグラドルやセクシーグループの活躍場を作るようになったのです。 

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実際にテレビ東京の「ギルガメッシュNIGHT」や「BiKiNi」・「出動!ミニスカポリス」などは¨グラビアアイドルをテレビでブレイクさせる¨というコンセプトの下で製作された番組だった。しかし、2000年代に入ると次第にグラドル人気も陰りが見え始め、それと平行するように彼女たちの活躍場であったお色気番組も消滅していった。お色気番組とグラビアアイドル人気は共通している部分があるのです。

4.ヘアヌードブーム

それまで女性がむやみにヌードになるのはタブーとされていたが、1990年代にはヘアが解禁の時代となる。NHK教育テレビが篠山紀信撮影の「TOKYO NUDE」のヘアー写真を放映、温泉紹介ビデオでヘアーが出るなど、本格的なヘア解禁時代の幕開けとなった。当時、トップアイドルだった宮沢りえのヌード写真集「Santa Fe」は決定的で、これ以前とこれ以後でヌード表現が別れるほどの衝撃を与え、社会のヌードに対する見方も大きく変わった。宮沢の影響で芸能人がヘアヌード(全裸)を見せたり、写真集を発売する者も現れ、テレビ番組でも「ヘアヌードになりたい人」なんてテーマが扱われることもあった。しかし、これが90年代後半~2000年代になると飽和状態となり、もう誰が脱いでも驚かないような時代に変わっていきます。テレビ番組「トゥナイト2」でも¨ヘアヌードが飽きられた¨・¨ヌードよりも水着を着ていた方がエロく(色っぽく)感じる人が増えている¨といった事情を紹介していたこともありましたね。さらに2000年代に入るとインターネットの利用も国民化され、出版不況と言われる状況にもなり、青少年保護を理由に規制されるようになった。それと同時にテレビ番組でも「ヌード」・「お色気」は自粛されていくようになったのです。

5.ビデオデッキの普及とレンタルビデオ店の拡張

1980年代後半~1990年代にかけてビデオデッキの普及またはレンタルビデオ店の拡大によってそれまで深夜のテレビ番組を好んでいた男性層がアダルトビデオなどのアダルトコンテンツに流れてしまい、お色気番組自体が飽きられ、視聴率が取れなくなってしまいました。テレビも商売ですので、スポンサーが付かなかったり、視聴率が悪ければ収益が減るので 「人気のない番組は終わらせよう」・「女性の裸では視聴率が取れないからもうやめてしまおう」と判断したわけです。

また、テレビには放送時間と放送日が決まっています。つまり「テレビの番組表に視聴者が合わせなければいけない」という環境も不便だったということも影響しているでしょうね。

6.映像の二次利用ができない

テレビ局には原則、今後も使用できるような映像や再放送も可能な作品をアーカイブ(倉庫)に保存しています。しかし、お色気番組を制作した場合は、それが出来なくなってしまうことが多いのです。お色気バラエティ番組を放送する際、キャスティングされるのは主にAV女優やグラビアアイドルといったセクシータレントの方たちです。特にAV業界の場合は、入れ替わりが激しいことで有名です。なので番組に出演している時は現役でも番組が終わった頃にはAV女優を引退しているというケースが多いのです。そうなると、当時の出演者に連絡が取れない、または、個人情報などの関係で番組の二次利用・再放送が出来なくなってしまいます。番組の内容(過激さ・エロさ)よりも個人情報やプライバシー関連の方が強く守られてしまうため、番組を継続させるのが困難となり、女性タレントの入れ替わりが早ければ、それだけ権利で守られる女性の割合も増えていくことになります。

テレビ局側からすれば「再放送不可」・「ソフト化不可」・「配信不可」・「映像の二次利用不可」・「出演者の承諾が得られない」など、放送できない番組を倉庫に保存しているだけでは意味がなく、制作費が無駄になってしまったり、収益に繋がらない事も多いのです。

それならば、AV女優さんが個人でYoutubeやSNSを使ってエロコンテンツを発信していった方が効率が良いということになります。ちなみに現在のセクシー女優は「地上波でヌードにならない」または「AVに出演」していない状態でもAV活動と同じくらいの金額(数百万円)を稼ぐことが出来ますエロのイメージを払拭した状態でタレント・モデル・ファッション・アイドルといった様々な活躍ができれば、アダルトコンテンツ以外からの人気も得られます。つまりセクシー女優さんは「裸にならなくても稼げる時代」になったということです。

7.女性優位の社会になった

1980年代までの日本は「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分担をベースに男性優位の社会(男性社会)であったため、バラエティ・ドラマ・アニメ・特撮など成人男性や男の子向けのテレビ番組が多かったのです。お色気ジャンルもそのうちの1つと言えるでしょう。世の中が男性優位の社会だったので、テレビも男性向けの番組を放送すると儲かります。

男性社会=男性が働く=男性が財布を握っている(お金を持ってる)=テレビの視聴者は男性(購買力がある)=男性向けの番組がたくさん放送される=テレビ業界が儲かる」といった構図です。

しかし、1980年代後半以降(バブル崩壊後)、これが逆転して女性優位の社会へ変わっていきます。家庭用テレビゲーム、ビデオデッキ、レンタルビデオケーブルテレビといったメディアがどんどん現れ、次第に男性視聴者はテレビから離れていきました。(実際は他の娯楽に移行したと見るのが正しい)

男性向けのテレビ番組が視聴率を落とし、勢いが衰えていくとマスコミは女性をターゲットにテレビを制作するようになります。1990年代になると特に、購買欲の高い若者女性向けの番組がスポンサーから支持されるようになり、男性優位の社会から女性優位の世の中になって、ゴールデンタイムに限らず、深夜番組でも女性をターゲットにした番組が増えていきました。その一方で男性層に気に入られる番組(お色気など)が徐々に姿を消していったのです。

女性社会=女性も働く=女性が財布を握っている=女性向けの商品や番組が人気を得る=企業やテレビ業界も儲かる」という時代へシフトしました。

8.深夜帯は、お色気→アニメへ

1997年にテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」がテレビ東京の深夜帯において数度再放送され、深夜帯としては驚異的な数字を叩き出し、大ヒットを記録。本作品以降も首都圏で深夜を中心にアニメ放送が急増した。このような影響によって、深夜=お色気を見る時間ではなく→「深夜=アニメを見る時間」という時代に変化したのです。               

基本的に「テレビで裸を放送してはいけない」というルールはありません。あくまでテレビ局それぞれの自主的な判断に任されています。

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日本民間放送連盟による性表現(11章)の放送基準でも、           性に関する事柄は視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意するとされています。「おっぱいを放送してはいけない」・「お尻を見せてはいけない」・「乳首を見せてはいけない」という規則はないんです。

ただし、昨今の風潮から放送基準を少し厳しく設定しているのは確かです。例えばドラマや映画などの再放送では芸術性や露出の必然性を認めてそのままヌードシーンが放送されることもありますが、バラエティ・お笑い番組では「性を売り物や笑いモノにしている」といった批判がされやすいため自粛するといった感じですね。しかし絶対的な基準ではないため、テレビ局や番組、または放送内容・時間によってはあえて隠さないでそのまま映すような例もあります。

エロに関しては、エロ本→テレビ→VHS→パソコン→スマホというように謀体が変化してきたと言われていますね。

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