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#011-個人農家と簿記の話

週末は雨が降ったり止んだりの困った天気でしたが、夏野菜たちは順調に大きくなっています。
予定通り今月末から出荷がスタートできそうです。

去年の写真ですがキュウリの子供です。もう数日で収穫が始まります

この時期は現場での作業に加えて、経費処理など事務作業も多くなります。喫緊ではないので暇な時期に回しても良いのですが、そうなると忘れる事があるのでなるべく早めに処理するようにしています。

農家にとっても会計や税務も大切な仕事の一部です。
今回は個人農家における簿記会計などについて書きたいと思います。

個人農家の確定申告

確定申告には3種類あります。
・白色申告;申告が簡単だが税制メリットなし
・青色申告(簡易簿記);特別控除10万円適用 他メリットあり
・青色申告(複式簿記);特別控除65万円適用 他メリットあり

確定申告の解説書などを読むと、最もメリットのある複式簿記による青色申告が推奨されており、私もその形式で申告を行っています。

簿記資格

私は日商簿記の2級・3級、農業簿記の3級を取得しています。
農業簿記3級については日商簿記の2.8級くらいの内容で、2級で習う工業簿記や製造業会計の内容が一部含まれます。

ただそれは会計処理が複数年に渡る畜産や果樹を対象にした話なので、普通の野菜農家の場合は日商簿記3級程度の知識があれば充分かと思います。

会計ソフトの使用について

巷には様々な会計ソフトが溢れています。
私も色々なタイプのものを試しましたが、コストがかかるし個人農家にはどれもオーバースペックだと感じました。

基本的には貸借対照表と損益計算書が作れれば良いので、結局スプレッドシートで簡単な関数を組み合わせて自作しました。

e-Tax

近年はe-Taxも使いやすくなり、税務署に出向かなくても申告が完結するようになりました。

必要処理を溜め込まずに年間通して適宜作業を進めていれば、確定申告時期に入ったときに1日の集中作業で申告を終わらせる事ができます。


以上、簡単に個人農家の会計などについて書きました。

簿記については会社員時代も簡単に触れていましたが、本格的に勉強しようと思ったのは農業での独立準備をしていた時期です。

ちょうどその頃本屋さんで「帳簿の世界史」という本を見つけました。ネットなどでも評価が高かったので、是非簿記を勉強してから読みたいと思い、資格取得後に改めて購入しました。簿記資格がなくても楽しめたとは思いますが、より深い理解ができたと感じます。

世界史における会計責任

Accountability(アカウンタビリティ)という単語があります。
現代日本では「説明責任」と訳される事が多いですが、元々はAccount = 会計についての責任という意味だそうです。

権威者に求められる一番の責任は集めたお金の使い方に関することのようです。イギリスで王権と議会が長年対立したのも、フランスで三部会が招集され革命に繋がったのも基本的には税金の徴収が問題でした。

複式簿記の威力

中世イタリア商人たちによって発達したとされる複式簿記も、集めたお金の使い方を正確に記録するためのものでした。

正確な記帳は単に財政状況の把握に有利なだけでなく、正しい会計倫理職業道徳の醸成に繋がり、盤石な財政基盤をもった集団(メディチ家など)が強い政治力を発揮していく姿が本の中で描かれています。

一方、帳簿記帳がきちんと成されていない状況は綱紀の乱れを反映しており、正確性を尊ぶ文化が廃れて不正が起こりやすくなります。国家の場合では長期的に経済面・軍事面での影響力低下を引き起こします。

会計は大事・・・という当たり前の結論

この本のお陰で簿記会計とは単なる経理作業ではなく、正しい慣行や文化そして政治に強く相関しているという視点が持てました。これは国家でも企業や個人事業レベルでも同じかと思います。

細かい実務を軽視していると、いつか綻びが生じます。
特に会計業務は地味な仕事という印象を持たれがちですが、実は歴史を動かす大きな力を秘めていると考えると、日々の経費処理も少し楽しくなるような気がします。


[本日の参考文献]

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