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075キャンプファイヤと良質コミュニケーションサロン場づくり✳神宇宙プロデュース?最適化シナリオ

 仮想世界で立体的な3Dプラネタリウムを観終えた私たちは、夕暮れのプライベートビーチに戻ってきた。


 薄紫色が架かった、朧げな夕焼けはすぐに暗くなってゆく。


 ざぱーーん、ざぱーーんと波音が聴こえる中、私たちは静かに腰を下ろしていた。



 シフォンは座りながら、コクリコクリと頭を揺らして眠っている。シフォンは私よりもさらに、隙あらばどこでも眠りたい人なのだ。



 陽が完全に落ちる前に、オジュと魔法少女のペキノが中心となって、キャンプファイヤーの準備を始めた。


 ペキノがアイテムストレージから様々な大きさの薪を取り出し、オジュが並べ始める。タオン/サリュンを始め、他のメンバーたちも指示通りに手伝い始める。


「細かい枝を集めて中心のここに山になるよう置いてね。できたら放射状に薪を立てかけていくの」


 薪の組み方は大きめの合掌型・開き傘になった。これはかまどや囲炉裏で観られる組み方で、崩れづらいし長時間萌へ……燃え続ける。


 火柱は小さい為、大きめにつくるのだ。


 シフォンがこくこく寝ている間に組み方は完成し、ペキノが魔法でじわっと点火した。


 静寂の海に明るい火が灯った。その瞬間シフォンの目が覚め、瞳に火が灯ったのだ。


 シフォンが歌い始めると、他のメンバーも歌い始め、次第にハーモニーとなってゆく――。




♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪



 あくる日の現実世界で私たちは、ギルドのツテにより幾つか土地の『利用並びに活用権』を手に入れることができた。確認になるが現代において所有権は存在しない。


 未だに一部所有権を手放さない者たちもいるが、『クールじゃない』つまり、ダサいと思われている。




 利用並びに活用権はメタスキル『∞BANKs』物質面の恩恵による、ギルドの潤沢な資金に物を言わせて……そうではなく、『能力豊』と『存在豊』によって手に入れられたのだ。


 能力豊の場合は、グランドデザインやゴール、目的、価値観、ポテンシャルが概ね統括するギルドNetsのシェアルゴリズムにより吟味される。


 存在豊の場合は、その『存在』『存在ポテンシャル』が尊重され(ポテンシャルは発揮されると存在豊になる可能性が高いかもしれないとのことで)無条件に……は理想ではあるが、『Sync/同期率』も関連するらしい。多くは『めぐり逢わせ』によるようだ。



 ひとつは都心の一等地。このエリアにビルを建てるのも夢のひとつなのだ。


 次はそこからさらにベイエリアに向かった地域。タワマン群もそびえ立つ。都心。


 続いて千葉県のベイエリア。ここは広範囲になる。


 そして一部シェアホームとなっているソファの御実家のすぐ近く。ここも都心。



 最後は転移クリスタルでのみリンクされたシークレットプレイス。



 すべて広い意味でのベイエリアになる。



 転移クリスタルがある為、すべての土地建物はリンクされ、すぐに移動できる。つまり一等地に少しでも土地があれば、そこから別の建物施設に移動できるのだ。



 転移クリスタルで移動可ではあるが、地方は今のところはなかった。のちほど自然豊かなエリアの土地の利用&活用権も得られる可能性はある。


 ひぐらしや鈴虫の鳴き音は、涼やかにここちよいのだ。


 と言ってもソファの御実家にある立派な庭園からも、その音色は聴こえてくるのだった。



 この一連の流れは、シェアホームと仮想世界の他に、良質なコミュニケーションが取れる場づくり(サロン)をする為だ。

 



♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


 その頃仮想世界の私たちは、球体ビルニ階のオープンエリアに集まっていた。


 オープンエリアは自由交流を目的としたエリアで日々、アップデートされ続けている。


 それらをさらにアレンジして、アップデートしようとするのが今回の目論見。


 

 二階は八つのエリアがあり、ひとつのエリアはショートケーキに近い形をしている。


 先端の二階中央には吹き抜けがあり、エリアの真ん中のスペースには円形テーブルや椅子が並んでいて、ギルドやギルドネットワークスのメンバー数人が座って会話をしている。


 植物も多く、居心地も良さそう。


 ドリンクはセルフ式でフリー提供されている。世界フードも楽しめて現時点ではフリー。


 このスペースでは特にめぐり逢わせが起こるようになっている。異能スキルでも魔法でもなく、そうなっている、ようだ。


『つながり縁』『最適マッチング』でもあるし、ある視点から『神(様)プロデュース』『宇宙プロデュース』とも言えそうだ。


 他のスペースも良質コミュニケーションが取れるようになっている。


 毎日日替わりでマスター/ファシリテーターが交代するスペース。マスターにより特色があり、参加者も毎日変化して交流できる。


 他に防音スペースもあり、カラオケやセッションして交流もできる。


 もちろん、お酒を飲まない人は増えてきているが、伝統的に呑ミニケーションとしてお酒がフリーで適量飲めるスペースもある。


 キッチンスペース、卓球、ビリヤード、ダーツ、室内スポーツ、カード、ゲーム、ボードゲーム、占い、色々コミュニケーション。


 絵を描いてコミュニケーションするアトリエもあり、他のエリアと被るスペースもちらほら。こちらは知らない人とも交流できるように、より工夫されていた。


 一人で来ても望めば、できる限り最適化マッチングしてくれて、グループにしてくれる。


 使い方によって、活動のコラボパートナーが見つかるし、種々パートナーも縁(よすが)となり見つかる。


 からくりはわからないが、めぐり逢わせなのだ。この世界はわからないことだらけだ。



 言葉を使わない超言語スペースもあり、人によってジェスチャーやダンス、音、イメージ立体ホログラム、様々。


 五感をそれぞれ使わないスペースもある。真っ暗だったり。音が聴こえないスペース。観えなくて聴こえなかったり。主に触れ合って交流することになる。


 極めつけはぜんぶ。触感もない。目が観えなくて聴こえなくて、匂いも味もせず、触れ合ってもわからない。


 そんな中での交流はどんな体験となるのか。そういった交流スペースもある。


 ヌーディストビーチのように裸で交流できるスペースもあった。


 存在豊エリアもあり、皆ほぼ何もしないか、ほほえんでる。それでいてしあわせなのだ。


 このようにまだ発展途上と言えるかもしれない。


「何かアイデアある?」


 ソファがクランメンバーたちに尋ねた。


「ゆ、百合部屋」


 ペキノが少し顔を赤らめながらそう言った。


「百合部屋とは?」


 ソファが再度尋ねた。


「言えない」


 うん、言えない。


 確認になるが、私たちのセクシャリティは『メタジェンダー』なので、見た目は女性ぽいが、もし私たち同士が色恋しても百合ではない。


「もし、イチャコラニャンニャンしたいのならこのフロアは無理かも」とソファ。


「でもそれも交流よね?」とマナ。


「公共の福祉と公序良俗、モラルに反してなければね」とシェリー。



「キスもセックスも交流、コミュニケーションとも言えるけれど、セックスはアートだみたいな話にもなりそうだからとりあえずここでは避けたいわ」


 セックスが乱れたコミュニティは崩壊するというのはメンバー誰かの見解だった。


 今となってはテクノロジー等により「セックスも食事も娯楽」という段階まで来ていた。



 ソファの言葉にペキノはオロオロしながら答える。


「百合グッズ……」



「それなら一階の専門店よね。ペキノがプロデュースしてみたら?」



「私やるーーー」



 決定しました。



「他にアイデアある?」


 今オープンエリアを利用している者たちにも、球体ホログラムで尋ねてみると、今時点では満足しているとのこと。


(「後で何か浮かんだらシェアしてね」)とシェアしておいた。



「仮想世界交流できたらいい」と作家でもあるミーカ。


 仮想世界の中での仮想世界だ。


「そうね。色々シミュレーションできそうね」


「「「うんうん」」」


 先程の室内スポーツ等、すべて仮想世界でも可能でスペースが少しあればいい。


「色々なシナリオもあるといいわね。そもそもそのシナリオも自分たちで作ってもらってもいいね」と私。



「あーそれいいよー」



「うん、いい」



「よきよき」



「そうすると、そのシナリオによる仮想世界がスルっと出来上がるシステムがあるといいわね」とシェリー。


「最適化シナリオの仮想世界が出来るシステムもね」と私。


 たぶんここらがこのエリアの真骨頂なのだろうと私たちは感じた。



 存在豊と∞BANKsこころにもつながる、イベントありきでなくても日常的に居心地よく過ごせる場が私たちには大切で、望んでいる。



♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪



 私たちはこのオープンエリア交流スペースに、球体魔法陣オーケストラメンバーで行きたい人に居てもらうことになった。


 そこから仮想世界でセッションしたりして、新しいメンバーを募集するのだ。 


 別エリアの文化アートエリアにも同様に居てもらい、募集する。こちらも、めぐり逢わせ――。



♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


 仮想世界のキャンプファイヤーで、私たちの歌声がハーモニーになったあと、幾人かが太鼓を取り出し、リズミカルにネイティブ、民族風な雰囲気になっていた。


 新月の真暗がりの灯りの側――私たちは意識がトランスしながら、メラメラと燃え盛る焚き火の周りを、自然と廻り始めたのだった――。








 

 







Quotia 配分 割当 遵守