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「短歌マッチングアプリごっこ」の話【ホイップ坊や日記】

先週は、歌人・枡野浩一さんの全短歌集出版記念&誕生日イベントを見に行きました。

2年ぶりに訪れた阿佐ヶ谷ロフトは超満員。
当たり前ですけど会場に来ているのは全員枡野浩一さんが好きな人達です。
そして全員他人同士の客席ですが、強固な共通点が一つあるってだけで独特の高揚と居心地の良さがあるもんです。言葉を交わさずとも見えない糸でみんなが繋がってる感じがします。

今回は枡野さんの全短歌集、いわばベストアルバムの発売イベントになるのですが、一個大型企画が用意されていました。
その名も「短歌マッチングアプリごっこ」。

ルールは簡単で、マッチングに参加したい男女が顔出し・名前出しをせず、"渾身の二首だけ"を持ち寄る。
お互いにイイネがつけばマッチング成立、連絡先交換が可能になる。
既存のマッチングアプリの短歌版というわけです。

会場と配信合わせて70人程が投稿し、僕もそのうちの一人として参加しました。


これがねえ、素晴らしく楽しかったんですよ!


マッチングアプリの男女間のドキドキはそのままに、むしろ顔が見えないことで恋慕が増幅されます。
僕はマッチングしませんでしたが、一週間経った今でも投票した相手のことが気になって仕方がないです。
※僕は55番さんに投票しました。君は何者なんだい。よかったらDMください。

そしてここが重要なのですが、絶妙に"文化系仕様"にチューンされているのが素晴らしいのです。

僕を含め「陰キャ」と呼ばれる人種、一般的なセックスアピールに自分を当てはめることが苦手な人が多いですよね。
僕は普通のマッチングアプリを使っていたとき、どうしても自分のキメ顔写真を使うことができなかったんですよ。
そしてプロフィール文もふんわりボケたりして(これが一番ダサい)、「僕はこんなに魅力的な男ですよ!」って胸を張ってアピールすることがとても苦手でした。

根底にはオスとしての自信の無さがあったりするわけですが、なんにせよ高校生がヘアワックスつけるの恥ずかしくていっそ丸坊主にしてしまうような、変な逃げ方をずっとしてきたわけです。

その点、短歌マッチングはいい。
短歌の発表を隠れ蓑に、"ガツガツしてないヅラ"ができます。
美醜の問題から解放されます。
それでいて、自分はなにを大事にしているか、なにをしないか、なにと闘っている人間なのか、美意識というものはきっちり短歌に表れてくるわけです。

一般恋愛市場で大声を出してアピールできない人、えてして「自分のセンスを評価してほしい」って夢を見がちです。僕とか。
そんな、良く言えば奥ゆかしい人が奥ゆかしいままに、出会いのきっかけを作れるのがこの短歌マッチングアプリごっこといえます。

多分今後枡野さんもどこかでまたこの企画をやることでしょう。
その際は是非参加してみると楽しいと思います。
単純に短歌を作ってみるという行為自体も楽しいし、人が作った作品を選者として吟味していくのも新鮮です。
逆説的だけど、選ぶ過程で自分の内面を知っていく感じがしました。自分はなにが好きでなにが嫌いか腑分けされていくというか。

そんな感じの超楽しい企画。
どんどん拡がっていったらいいな~。

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