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"龍虎対決"のとばっちり(上)

ー義母86歳と行く台湾(7)

義母と奥さんの"龍虎対決"がついに勃発し、とばっちりを受ける羽目になった。きっかけは奥さんが申し込んだホエールウォッチングツアー。参加に気乗りしない義母と、どうしても参加したい奥さんの意見がぶつかった。やがて義母の怒りの矛先はこちらへ。謂われのない責めを負わされることになる。旅行の定番イベントだと割り切ると、そこまで気にならない。

連載「義母86歳と行く台湾」:「(1)開かないスーツケース」「(2)クレカ決済不能!?」「(3)オキニの杖はいずこ?」「(4)さらば苦手意識」「(5)突然の雨に備えなく」「(6)使いそびれた高齢者割

ホエールウォッチング

ホエールウォッチングツアー前日は雨(礁渓温泉、りす=撮影)

このツアーは、宜蘭ギーラン県が所管する亀山島クイシャンタオ(きさんとう)の周辺を遊覧船でめぐり、運が良ければクジラを見られる。遊覧船は9時に出航し、12時ごろに寄港・解散するスケジュール。港はホテルからタクシーで20、30分の距離だ。奥さんは訪台前からこのツアーにどうしても参加したいと言っていて、自分へのご褒美と考えていたに違いない。

天気予報を通じ、ツアー当日の悪天候が予想される中、奥さんによると、ツアー主催者と連絡がなかなか取れず、申し込みが難航したらしい。それもあってか、こちらがツアーの申し込みと内容について知ったのは前日の夜。パスポート番号を事前に聞かれた覚えはあったが、それがツアー参加の相談を兼ねていたらしい。なかなか乱暴に扱ってくれる。

もっとも義母には、事前にきっちり相談していたようだ。奥さんによると、義母は参加しないと言い、「天気が悪くなりそうなのに、そんなツアーに参加するのは自殺行為よ」と返したとか。確かに一理あるものの、随分と手厳しい。今から思えば、気乗りしないツアーへの参加を強く拒み、奥さんにも参加それ自体を思いとどまってもらいたいと思っていたのかもしれない。

「やられたらやり返す」

「やられたらやり返す。倍返しだ」(半沢直樹)

義母さんが返した言葉の本音は分からない。ただ結果、奥さんがツアー参加を申し込んだのは、本人と当方の二人のみ。「母(義母)は参加しないと言っていたので、午前中はホテルでゆっくり留守番してもらう」と奥さん。その言葉は義母に負けず劣らず手厳しい。ドラマ『半沢直樹』でお馴染みの「やられたらやり返す。倍返しだ」という台詞を思い浮かべた。

嫌な予感しかない。この後、とばっちりを受けることは知る由もない。
(つづく)

余談

ツアー前日の夜、降りしきる雨を眺めつつ、翌日にツアーが予定通り決行されるのかを疑った。天気予報も雨だ。悪天候の中、たとえ決行されても揺れる船体、滑りやすい甲板に、足が悪い義母は耐えられそうにない。「午前中はホテルでゆっくり留守番してもらう」と奥さんは言った。義母を守るには、それが最善の手段かもしれない。あるいは揃ってツアー参加をあきらめる方法か。ただ、いずれを選択しても誰かがガッカリするに違いない。そう思うと、どうしても気が滅入った。

(写真:連載トップ画像=奥さん撮影の画像を基にりす作成)

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