学生さんに幸あれ (6)

笑い声が聞こえる。
自分の心情とは裏腹に、シロウは笑っていた。

「お前、本気で《覗けばそのままの遺体を拝める》とでも思ってたわけ?隠しもせずに朝の学校に横たわったまま放置とか?確めるの遅すぎなんだよバーカ。」

彼の口調は相変わらず煽るような姿勢だが、
おかげで妙に冷静になれる自分がいた。
そりゃそうか、遺体は隠されるべきだ。当然だ。
ブルーシートに覆われた現場を伏せ目で見下ろす。

「知ってて促したんだね。俺でもそうするよ。
お前を見てると心底自分を嫌いになるよ。」

シロウに自分を重ね合わせ、嘲笑が止まない彼を
一発殴りたい気持ちが浮かぶと同時に、
そんな自分を誰かに殴って欲しくなった。
そう思った時には彼の拳が自分の腹を深々と
抉っていた。

催した吐き気の割に、
一切胃から喉を逆流するものがない。
内臓が気持ち悪い。思わず彼を睨みつける。

「何睨んでんだよ、お前がそれを望んだんだろ?
俺はお前の拭えない後悔を体に教えるために生まれた存在なのかもな。後悔がひしひしと伝わってくるよ。
お前を一発殴った事で、俺の中の何かが変わった。
その意味を自分で考えるといいよ。」
彼が屈んだ俺を見下ろして言う。
彼の顔を見れない。
彼はそのまま風に吹かれるように消えた。

彼の言ってることに一瞬戸惑ったが、
やはり自分の生前と密接な関係にある存在だという
確証に変わる。
俺が消える時は、あいつが消えた時なのかな。
未練がないようで、自分の存在を捨てた掃き溜めにこびりついた錆びの処理が、この第二の存在の目的なのかもしれない。

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