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グルグルアプローチ パート2 「三角ロジック」を手がかりにせよ!

人はみな、何らかの「バラバラ問題」を抱えています。バラバラをかみ合わせようとするとき、ことばの力を借りることができます。例えば、論理思考。いろいろあるけれど、英語と相性がよいのは「三角ロジック」です。

三角ロジックって何?

Claim(言いたいこと)=あなたの主張は?
Data(根拠)=どうして?その証拠は?
Warrant(論拠)=それってどういうこと?そのココロは?

英語は論理的な言語です。論理的でなかったら英語じゃない、って言う人もいます。「論理的」とは、Claim Data Warrantが成立している、っていうことです。

Claim:今日はカレーが食べたい
Data:(どうして?)だって、昨日はラーメンだったしな…
Warrant:(それってどういうこと?)…

ClaimとDataは思いついても、Warrantを言い当てるのって、意外とムズカシイ。だって、自分にとって「当たり前」のことだから。わざわざことばにするほどのことでもないし… そんなWarrantを見つけるコツは…

1.「DataならClaimなはずだ」って言い換えてみる
2.「それってどういうこと?」って自問自答してみる

昨日がラーメンだったら、今日はカレーが食べたくなるはずだ… それってどういうこと?毎日同じだと飽きるし。気分転換したいってこと?だったらカレーじゃなくても、ざるそばだっていいのか…

Claim:今日、会社を休みたいんですけど…
Data:(どうして?)実は、カゼをひいてしまって…
Warrant:(それってどういうこと?)…

カゼをひいたなら、会社を休みたいはずだ… それってどういうこと?ひとつとは限りません。いくつか考えられます。

① 「早く治りたいから」→「自分のために休みたい」ってこと
② 「人にうつしたくないから」→「同僚のために休みたい」ってこと
③ 「仕事にならないから」→「会社のために休みたい」ってこと

三角ロジックのコツ

10年ほど前に、こんなCMがありました。ジョージ・クルーニーがセルフスタンドでガソリンを入れている…

「いい車が好きだ。男ですから」

Claim:いい車が好きだ
Data:(どうして?)男ですから
Warrant:(それってどういうこと?)…

上手いなぁ、って思います。ClaimとDataの距離感が、近すぎず、遠すぎず。それから、みんなにわかってもらいたいのはWarrantの価値観。でも、そこをあえて名言せず、各自で気づいてもらうところ。

「男なら、いい車が好きなはずだ」→それってどういうこと?→「いい車が好きなのが、男ってもんでしょ…」

「そうそう!その通り!」って共鳴する人もいれば、「そうかなぁ…」って躊躇する人もいる。上手な三角ロジックは賛否両論。反応が半々に分かれそうなところに、均整のとれた△をさがしあてるのがコツです。

「人間はしっかりと呼吸するべきだ」

まぁ、そりゃそうだ。でも、反対する人がいないのに、わざわざ主張する意味がない。かと言って…

「二酸化炭素排出削減のため、人間は呼吸を6・7割に抑えるべきだ」

そんなのムリ。賛成する人がいないのに、わざわざ主張する意味もない。

三角ロジックで議論する

かつて、友人(イギリス人)にこう聞かれたことがあります。

「世界で一番おいしい料理って、どこの国の料理だと思う?」

私はとっさにこう返しました。

「それは日本料理。だって俺、日本人だから」
Claim:世界で一番おいしい料理は日本料理である
Data:(どうして?)だって、私は日本に生まれ育ったから
Warrant:(それってどういうこと?)母国料理が一番おいしいと思うもんだ

そうしたら、すぐさまこう返ってきました。

「俺はイギリス人だけど、イギリス料理が一番まずいと思うよ」
Claim:母国料理が一番おいしいとは言えない
Data:(どうして?)だって、私はイギリスに生まれ育ったが、イギリス料理が一番まずいから
Warrant:(それってどういうこと?)「生まれ育ちは、おいしい料理の決め手にはならない」→「何をおいしいと感じるかは個人の主観でも、料理の優劣は客観的に判断可能」

Warrant(相手の主張の拠って立つところ)をついて、より深い理解に掘り下げる。それが有意義な議論。

初めは「イギリス人、気の毒」って思ったけど、そんな同情など無用なのかもしれない…

相性はClaimやDataでは測れない

同じようなことを言ってるのに、何だか心が通い合っていないなぁ、っていうときがあります。

Claim:さすが、彼女はプロサッカー選手だ
Data:(どうして?)だって、絶対にファールしないから
Warrant:(それってどういうこと?)プロはファールしないもんだ
Claim:さすが、彼はプロサッカー選手だ
Data:(どうして?)だって、ばれないようにファールするから
Warrant:(それってどういうこと?)プロはファールするもんだ

どちらも言いたいことは、プロサッカー選手をたたえる内容です。でも、その根拠は正反対。スポーツマンシップを貴ぶ女子サッカーと、それよりも「勝ち負け」がまさる男子サッカーとでは、価値観が違います。

Claim:最近のプロ野球はオモシロイ
Data:(どうして?)だって、リクエスト制度が導入されたから
Warrant:(それってどういうこと?)公正・公平な判定が野球をオモシロくする
Claim:最近のプロ野球はツマラナイ
Data:(どうして?)だって、リクエスト制度が導入されたから
Warrant:(それってどういうこと?)機械的な判定が野球をツマラナくする

どちらも注目する事実は、リクエスト制度です。でも、その主張は正反対。結局は、野球の何がオモシロイ・ツマラナイのか。その人の野球観が論拠に表れます。

三角ロジックが習慣になると、オモテ向きの主張よりも、主張の整合性・つじつまを保っている「心」の方に関心がいくようになります。自分の意見でも、他人の意見でも…

何と何がグルグル?

タテのものをヨコにしたり、ヨコのものをタテにしたりするだけじゃない。

ひとつの起点にこだわらず、いくつかの起点を柔軟に入れ替えながら、「つくって」「こわして」を繰り返して、もっともおさまりのいいアイディアを採用する。

それが、グルグルアプローチ。

じゃあ「三角ロジック」は、何と何をグルグルしているのか…

「グルグルアプローチ」はパート3へと続きます。



よろしければ、是非、お付き合いください。

参考
横山雅彦(2006)『高校生のための論理思考トレーニング』ちくま新書604


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