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アジアカップで敗れた日本代表の成長点~今こそボトムアップをさらに磨くべき時~

史上最高とも呼び声高いサッカー日本代表の活躍を楽しみにしていたのだけれど、残念ながら準々決勝でイランに1─2の逆転負けを喫し、ベスト8でアジアカップを終えてしまった。

もともと、このチームはボトムアップのチームで、その良さがアジアカップ前は出てたけど、イラン戦はなかなか難しかったようだ。試合後、ボランチの守田選手は、

「どうすれば良かったのかはハッキリ分からない。考えすぎてパンクというか、もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい。」「どうすれば良かったのかはハッキリ分からない。考えすぎてパンクというか、もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい。」(2024/2/4ゲキサカ)

(2024/2/4ゲキサカ)

と苦悩を吐露し、それを受けて森保監督は、自らの伝え方を反省しながらも

「すべての起こりえる局面を全部細かく伝えることができるかと言うと、いろいろな局面がサッカーでは起こるし、1回として同じ局面は実はない。」

(2024/2/5東スポweb)

と言う。

決めてほしい選手と想定外の状況変化は選手たちで対応すべきという監督との間に溝ができ始めている。

そもそもスポーツの目的とは何か?

スポーツアナリティクスの専門家でスポーツコンサルティング会社も経営する森本美行氏は著書『本田にパスの36%を集中せよ』の中で解説してくれている。

「イギリスのパブリックスクールの重要な要請事項は植民地経営にあたる人材の育成だった。世界中にある植民地を経営するためには、本国と異なる劣悪な環境の中でも耐えうる精神力と体力が必要だった。そしてもう一つ重要なことは、異なる環境下で毎回本国にお指示を仰ぐ必要なく自分で判断し、責任を持って遂行する実行力を身に付けることだった。このように植民地の経営者及び将校の育成のためにスポーツは積極的に活用されたのである。」

とイギリスの状況を解説した上で、日本とイギリスのスポーツの位置づけの違いをこう纏めている。

「それに対し日本では明治時代の国の基本方針だった富国強兵を図るために兵士の育成が重要だった。そしてそのために日本ではスポーツは「体育」として教育の一として輸入された。(中略)つまりイギリスではスポーツを将校の「判断力」を高めるために活用し、日本はスポーツを「体育」として兵士に判断に従うための体力育成と従順性を高めるために活用した。」

つまり、イギリスでは、指示者が不在の中での「判断力」を鍛えるためのもので、日本は、上位者に対する「従順性」を高めるという位置づけだった。昨今の日本のスポーツ界で問題になっている上位者からのパワハラ、ますます個が尊重される世の中の風潮変化などを考えると、スポーツがどうあるべきかは自明のことのように感じる。

そして、ボトムアップが上手く行かなかったからといって、これまで培った体制を修正し、トップの指示の明確性を求めていくのは果たした正しいのか?元日本代表監督の岡田武史氏は日本チームとブラジルチームの違いをYouTubeの番組で紹介している。


アジアカップで露呈した課題は一筋縄に解決できないとは思う。ただ、上手くいかなかったことを改めて選手たちで高い視点で話し合い、戦術や約束事の内容、決め方について、監督、コーチに提案していく機会は作れないのか?

いまこそ「ボトムアップ」のアップデートが求められているように思う。