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今日やらかしてしまいました。そこのあなた、読んで消化してやってください。

「よかったら一緒に行きましょう!」

一同「……(5秒の沈黙)」


やらかした。かんっぜんにやらかした。
走馬灯のようなものがぴよぴよと頭をかけめぐる。

今、私は一人暮らしで、この「やってしまった」失敗談を話せる人がいない。なので、これを開いて読んでくれているあなた。ぜひ、最後まで聞いてください。いや、読んでください。

いやね、恥ずかしい~! ってなった失敗は寝たら忘れるってわかってるんですけど、まだ寝てないので(笑)ほやほやで(笑)

今日、4月から入る会社のオンライン懇親会があった。

というかね。そもそもここからやらかしてたんですよ。15時にその会社の人事の方から突然メールが来て。人事の名前が携帯に表示された瞬間、「!?」となった私。慌てて開いたメールには、

「懇親会開始してます! お好きなタイミングで入ってください~」

とあった。と、あったんですよ。

え? 懇親会? 待って、明日じゃないの? 

え、今?

点になった目で恐る恐る、以前届いた人事からのメールを開くと、「キックオフMTG 3月2日(水)15時~」の文字があった。

と、あったんですよ。

な、なああぁぁにいいぃぃぃい~~~!!!
やっちまったなっっっっ!!!

心のクールポコがそう言って、私の頭が

やっちまったよっっっっ!!!
完全にやっちまったよっっっっ!!!

と、懇切丁寧に返事をしていた。

てっきり明日だと思っていた。てっきりじゃないな。絶対に明日だと思っていた。携帯のスケジュール帳にも、手書きのスケジュール帳にも、「3月3日(木)15時~ 懇親会」といれていた。

大慌てで支度をする。洋服……は、とりあえず上だけ着替えればいい。メイク……は、時間がないから明るいリップだけ塗っとけばいっか。

ほんとうはこんなはずじゃなかった。一番かわいく見える洋服を着て、オンラインだけどそれなりにメイクをばっちりして向かいたかった。でも、もうそんな時間はない。髪の毛だけ整えて、ミーティングのURLを押した。

ぱぱぱっと現れたのは、人事の方と、4月から同期になるみんな。当たり前だけど、すでにみんな参加していた。明らかに私を待っていたことがわかる。すぐさま「すいません! 完全に明日だと勘違いしてて! 申し訳ないです!」と平謝り。

人事の方は「いいよいいよ~! みんなで雑談タイムだったから気にしないで~」と言った。

雑談タイム!! 気になる!! 

私が時間通りに入っていたら存在してなかったであろう、そのタイムにきゅきゅきゅ~っと肩身が狭くなる。やらかしてしまった……。

そうして始まったオンライン懇親会。まずは、新入社員の自己紹介から。

人事部に言われて用意した資料は、みんなとってもすごかった。すごかったっていうのは、好きなものの偏愛具合とか、資料そのもののクオリティとか、デザインとか、資料に載せている写真の色味とか、イラストとか。

お~これから、このみんなが同期になるのか。これはすごい。と、遅れたことをすでに忘れた私が関心していた。確か5番目ぐらいに「じゃあ次は田邉さん!」と私の名前が呼ばれた。

「はい! 田邉と言います!」

なんて元気な入りだろうか。これが一度社会人をやってきた私の貫禄なのかな、なんて心の片隅でにやにやしていた。

これまでの経歴、好きなものを、今思えば相当な早口で話していたと思う。申し訳なさと恥ずかしさを払拭するかのごとくテンションがぐんぐんとあがっていって、その反動が出たのだ。このとき私の頭は「とにかく、なんかわかんないけど! 何かを取り返さなきゃ!」と、真っ白だった。

一通り話し終わって、私に向けた質問タイムが始まった。人事の方が「田邉さんは今どこに住んでるの?」と聞いてくれた。

「はい! 今は〇〇に住んでいて、あ! そういえばさっき同じ路線の人いましたね! 会社まで、よかったら一緒に行きましょう!」(満面の笑みでガッツポーズ)

その瞬間、この世の静けさがここに集結したのか。それとも、この会議に参加しているみんなの通信環境が同時に途絶えたのだろうか。

一同「……(5秒間の沈黙)」

いや、それか、私に憐れみを感じた私側の光ファイバーが一旦流れを止めてくれたんだろうか。

なんにせよ、そこに訪れた沈黙で私は悟ったのだ。

あ~……失敗したな、これは。

え、全然冗談だよ。ちょっとくすっとなってほしくて言っただけだよ。別に本気で行こうってことじゃないんだよ??

でも、そんなの伝わらないのが、オンラインの非常に悪い特性だ。

なんかすっごい意気込んだ人になった私。
だって見てよ。みーんな黙っちゃったよ。なんだよ、「会社まで一緒に行きましょう」って。どういうことだい。
今時女子高生でも連れションしないのに、社会人が「一緒会社行こう」って……。どういう意気込みだよ……怖いよ……。頼む誰か笑ってくれよ……。


そのあとの記憶は正直ない。あんまりない。

頭の中が「や・ら・か・し・た」の5文字でいっぱいになって、さっきの沈黙が忘れられなくて。画面越しになんとか相槌を打てたことだけでも褒めてやりたい。リップだけの顔でよく2時間も頑張った。偉い。偉いよ私。

オンライン懇親会が終わって、ぱたり、とパソコンを閉じる。「ふうぅぅ~……」と細く長い溜息を吐く。

そして次に、「……っあぁぁああー!!!!」と叫んだ私がいた。

全然忘れらない! 間違った方向に肩の力が入った私と、なんともいえない沈黙が頭の中でリフレインする。

あー! 忘れたい! 今すぐ全部忘れたい! 全然忘れられない!!

と、こうして今、出来事を言葉にしてみると余計に思い出されるし、余計に忘れられなくなる。

同期のみんなはなんて思ったかな。冗談なんだよ。
でももし私が、まだよく知りもしない同期の人から「一緒に会社に行きましょう!(キラッ)」なんて言われたら、「え……どゆこと……」ってなるよな。なるだろうな。

懇親会終わりに大学の友達とかに連絡して、「こういうこと言ってる人がいてさ~」なんて笑っちゃうだろうな。私、今だれかの笑い者にされてるのかな。それはそれで、話題提供ができてよかったな。

私、4月にみんなとちゃんと話せるかな……。あれ冗談だったんだよ、笑ってくれて良かったんだよって、説明したほうがいいのかな。だとしたら、さっき笑ってほしかったよ……。

あ~……これは思い出せば思い出すと数日は引きずりそう。でも今、こうやって文章にしたことで、これは読まれて、そして消化される。

そう思うと、少しだけ私の心は落ち着くのであった。


”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。