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中小企業が取り組むべきブランディングのポイントとは

 私は、地元北海道でブランディングによる企業経営のサポートをしています。これまで広告の世界でクリエイティブディレクターとして仕事をしてきましたが、「これからは大企業だけではなく中小企業もブランドが大切な時代になる!」と感じ、数年前から中小企業のブランドコンサルティングに特化して活動してきました。
 情報化社会と言われ、インターネットでどこまでもつながる世の中で、自社のブランドという武器(情報やデザイン)を持たないことは、選ばれる機会を失うことにつながります。しかし実際に中小企業経営者の皆さんとお話をすると、必要性は感じているがそもそもブランドやブランディングがわかりにくいという言葉を聞きます。
 最近ではブランドやブランディングというワードが当たり前のように新聞や雑誌などに書かれています。しかし実際はどのように自社が取り組むことができるのかについては、わかりやすく説明されていないのではないかと思います。そこで今回はできる限りわかりやすく、中小企業が取り組むブランディングのポイントについて解説していきたいと思います。

ブランディングとは、売上を上げる手段?

 まずは広義の意味でのブランディングとは何か?について説明していきたいと思います。ブランディングはよく聞く言葉で、大切なことだとは理解できても説明するのはなかなか難しい。そして結局はマーケティング活動の延長だと捉えてしまい、売上を上げるための手段だと誤解されているケースがよくあります。
 もちろん企業として収益を上げることは何より重要ですが、ブランディングの役割はそれだけではないのです。またセミナーや勉強会などでご参加いただいた皆さんからお話を伺うと、ブランドとは高級品のことだったり、知名度や付加価値の高いものというイメージが圧倒的に多いのが現状です。
 そのような印象が強いため、中小企業の私たちには関係ないと感じていたり、そもそも何をしたら良いか分からない、やっても成果が得られるか分からないので踏み切れないという声をよく聞きます。
 いずれにしても共通していることは、ブランディングというテーマの分かりにくさと、実行におけるハードルの高さや難しさです。

エクスターナルとインターナルブランディング

 主にブランディングは、2つに大別されています。消費者(社会)とコミュニケーションする「エクスターナルブランディング」と、従業員とのコミュニケーションする「インターナルブランディング」です。
 どちらも重要で、バランスをとりながら両輪として実行することがポイントです。ただ両方のブランディングを回すことがリソース的に難しい場合、以下のポイントで優先順位をつけて展開することをオススメしています。

実行すべきブランディングの優先順位
①B2C&商品(モノ)を提供している場合 → エクスターナルブランディング
②B2B&サービスを提供している場合
インターナルブランディング


インターナル&エクスターナル

 ①はB2Cの場合で、形のあるモノ=商品を販売していることから、消費者へのブランド認知や連想イメージの浸透が購買行動に大きく影響します。そのためブランディング初動期には収益性を高めるためにエクスターナルブランディングを実践し、消費者や社会に対して自社の商品の認知度アップと正しい理解を促進します。
 その後、お客様の期待を裏切らないために、従業員教育を目的とした社内向けのブランディングを並行して進めていきます。

 ②はB2Bのため、顧客との接点(窓口)となる従業員の対応そのものが企業の評価に影響することとなります。そのため、まずインターナルブランディングからスタートし、自社が大切にしているブランドとしての存在意義やビジョンを社内で共有し、経営者・経営幹部・従業員の考え方や行動を一貫したものへと育成していきます。
 特に中小企業の場合は広告宣伝によるマーケティングよりも従業員の皆さんの営業活動が顧客開拓につながるケースが多く、接客や顧客への対応によってお客様からの信用や信頼を得ることが、リピートや紹介を獲得することにつながるので、社内向けのブランディングの方が、結局は収益性を高めることにもつながっていきます。

ブランドは「売る」でなく、「売れる」ための求心力

 ブランディングを行うことで企業が目指すゴールは何か。それは「売る」という行為が無くなり、「売れる」仕組みにお客様や仲間(従業員)が集まってきてくれることです。
 ブランディングによって営業のスタンスを、PUSH型からPULL型に切り替えていきます。一般的に営業はPUSH型(推し進める)のイメージがあると思いますが、PULL型(引き寄せる)の営業スタンスもあります。これは「待つ」ということではなく、積極的に「引き寄せる」仕組みを構築するという考え方です。
 その結果「売れる」仕組みが出来ているブランドには人を引き寄せる求心力が備わっていきます。究極のブランド企業とはお客様が行列をつくって自社の商品・サービスを待っていてくれる企業であり、従業員が自社で働けることに誇りを持ち、仲間と仕事をすることにワクワクするような企業です。

存在意義や提供価値で違いをつくる

 お客様や仲間を引き寄せる求心力となるものは何か?それは企業としての存在意義であったり、他社にはない独自の提供価値です。
 ただ存在意義や提供価値というと、現時点で自社ではそこまで違いを生み出せる気がしないと難しく感じる方が多いかもしれません。しかしその本質はお客様の中にあります。たった一人であっても自社の存在や提供する価値に対して、喜んでくれているお客様がいるのであれば、ブランド企業となるための原石(手がかり)があると思ってください。その小さな原石を見つけて、磨き続けることで、ブランド企業として求心力を高め、輝くことができるのです。

ブランディングの進め方

 少し長くなってしまいましたが、最後にブランディングの進め方についてお話しします。大きく3つのフェーズに分けて考えます。

●1stフェーズ:ブランドアイデンティティの策定
●2ndフェーズ:ブランドデザインシステムの開発
●3rdフェーズ:ブランドコミュニケーションの展開

●1stフェーズ:ブランドアイデンティティの策定

 ブランディングを行う上で、最も重要になってくるのがブランドアイデンティティの策定です。ブランドアイデンティティとは、「自社がブランドとして、ターゲットにどう認知(識別)されたいかを表す言葉」と言われています。簡単にいうと自社の存在意義や打ち出したい独自性を言語化したものです。このブランドアイデンティティの策定で重要なことは、誰のためのブランドなのかを明確化することです。この「誰のため」を整理したものをペルソナと言います。ペルソナについては、改めてnoteにアップしたいと思っています。

●2ndフェーズ:ブランドデザインシステムの開発

 ブランドデザインシステム開発では、ブランドの基本要素となるネーミングやビジュアルアイデンティティ(ロゴマークやイメージビジュアル)、タグライン(ロゴや社名の上か下に配置する言葉)をシステムとして整理します。ブランドを社会に発信する際に留意したいことは、ペルソナに自社のブランドをどうイメージして欲しいかを定義しておくことです。ブランドデザインシステムには、次のような要素があります。

<ブランドの基本要素>
1.ネーミング
2.ロゴマーク(シンボルマーク・ワードマーク)
3.社名ロゴタイプ 
4.コーポレートカラー 
5.タグライン(ブランドステートメント) 
6.キャラクター 
7.ジングル(サウンドロゴ) 
8.専用タイプフェイス 

 自社のブランドなので好きな色や言葉を選びがちになりますが、あくまでもターゲット視点で設計することが求められます。

●3rdフェーズ:ブランドコミュニケーションの展開

 ブランドを社内外に浸透させるためのコミュニケーションを継続的に展開します。ここでは社外向けと社内向けのコミュニケーションを分けて考える必要があります。

<社外向けコミュニケーション:一例>
□ホームページ
□看板
□WEB広告
□チラシ
□会社案内
□商品サービスの説明書
□メディア広告(TV、ラジオ等)
□名刺・封筒
□PRイベント、展示会
□プレスリリース(ニュース、記事)
その他
<社内向けコミュニケーション:一例>
□ブランドブック
□クレドカード
□ブランドムービー
□ワークショップ
□事例共有(共有会、社内報、イントラ)
□ありがとうカード
□VOC(お客様アンケート)
□スタッフ同士による他己評価
□CI発表会、成果発表会、表彰式
□社内ブランド浸透度アンケート
その他

 ブランドコミュニケーションのフェーズは、効果性を検討しながら進めていきます。いっきに整えたくなるところですが、中小企業の場合は広告によるメディアミックスの必要はありませんので、出来ることから少しずつ実行し、改善を繰り返しながら自社にインストールする感覚で良いと思います。さらに詳しくブランディングについて知りたい方は、こちらもご覧ください。

「WIN BRANDING BOOK〜ブランディングが簡単にわかる本」

http://www.win-inc.jp/brandingbook.html



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