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「そごう柏店」跡地購入:英断の柏市長に拍手を送りたい。

以前から市内の懸案となっていた、柏駅前の商業施設「そごう柏店」の閉店後の建物についての話題。

多額の税金をかけて私有地を取得することに、賛成の声ばかりではないことは承知していますが、私はこの決断を評価したいと思うのです。


「商業都市」ではなく、「文化都市」になってほしい。

以前の柏市は、どちらかというと「経済」寄りの政策を行う保守層の市長が実権を握ってきたという印象で、まちづくりに関しても「経済・商業」が優先されて、「教育・福祉」という面が疎かにされてきたように思います。

老朽化した市民病院の建て替え問題にしても、以前の市政時代に収益性の高い(と見込まれる)柏の葉地域への移転などが取りざたされ、元々立地していた地区が医療空白地帯になることから大きな反発が起こりました。

日本は長らく、「モノ」にはお金をたくさん使ってきましたが、「人」にはお金をかけてこなかったといわれます。
それが現在の少子化や国際競争力の低下にもつながっていて、また医療においてもコロナ禍で地域の病院は多大な負担を強いられる結果になりました。

現在の政治においても、旧来の永田町的な考えのもとで行われる政策が様々な問題を引き起こしていますが、「五輪」や「万博」のような大型事業も国民の支持を得られなくなっている中、旧弊の感覚を引きずったままの体質で内閣支持率は低下するばかり。

目先の利益ではなく、100年先を見据えた地域の在り方を考えたときに、私自身は「商業都市」ではなく、「文化都市」を目指すことが地域の振興につながっていくのではないかと感じています。

そういう意味でも、今回の跡地取得をきっかけにして、柏市がより文化度の高い都市にシフトしていくことを願っています。

疲弊する「郊外ロードサイド型」の地方都市

今、地方都市は公共交通が次々削減され、人口も少なくなり、街の存続にも関わるような事態に陥っています。
その影響が特に顕著なのは、やはり「モータリゼーション」のあおりで移動を過度にクルマに依存した地域ではないでしょうか。

それまで駅と商店街が中心だった都市が、いわゆる郊外の「ロードサイド」に店舗を構える構造に転換すると、"どこにでもあるような"フランチャイズチェーンの店が増え、どの都市に行っても変わり映えのしない風景が広がっています。

また、道路併設型のイオンなどの大型スーパーは、法人税を地元ではなく、本部がある都市部に払っているため、地域経済にはあまり貢献できていないという一面があります。

法人税は、本社所在地で納税することになっているため、納税地の分布は、企業数の構成比では約1%ながら法人税額の約7割を納めている大企業の本社の分布に近く、東京、大阪、愛知で約3分の2を占めている。

https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=3780 日本総研サイトより引用

そうしたロードサイド型モデルでは、地方都市の税収が思ったほど伸びないため、結果的に住民サービスが行き届かず、人口が流出する遠因になっているのではないでしょうか。

生き残るには「そこにしかないもの」を磨くべき

ロードサイド型の都市が疲弊する一方、昔ながらの「駅+商店街」が残っている地域は人の賑わいがある程度保たれ、健闘しています。
例えば、一時は人の波が激減していた熱海市や、「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台にもなった沼津市などは、「駅と商店街」が現在もしっかりと機能しています。

賑わいを取り戻すには、「他と同じようなこと」をしていてもダメで、「わざわざそこに行きたくなる」ような工夫が必要だと思います。

先日、路面電車としては75年ぶりの新規開業した「宇都宮ライトレール」。
観光路線ではないにも関わらず、当初の想定よりも多くの乗客が乗っていることが話題となっています。

目新しさもあり、多くの方がそれを目当てで乗りに来ていることがうかがえますし、鉄道好きの私も近々訪れたいと思っています。

ローカル線は岐路に立たされている、といいますが、柏市と同じ千葉県内の銚子電鉄などは昨年も黒字を達成しましたし、「稀少性」「独自性」の強みを生かし、工夫して苦境を乗り切っています。

先日「ちばフリーパス」で乗りに行った銚子電鉄

はっきり言って、駅前に「タワマン」を作ったところで、他の地域からそれを目当てに人が来るでしょうか?
そうした意味で、柏市長の決断には拍手を送りたいですし、「民間事業者」主導ではなく、あくまでも「自治体」が主導になってまちづくりに関われるということが大きいと思います。

民間事業者は結局、収益を第一に考えるので、事業が立ち行かなくなればあっという間に撤退していきます。
一介の企業に運命をゆだねるのではなく、市民が当事者意識をもって街づくりに参画する気概が求められている気がします。

「お任せ民主主義」からの脱却

日本は残念ながら、市民が社会活動に関わる意識がまだまだ未熟で、「国がやってくれる」「大企業がやってくれる」「自治体に任せておけばいい」という「お任せ民主主義」意識が強いと感じます。

欧米では企業並みの存在感を誇る「NPO」や「NGO」も、なぜだか胡散臭いと思われている。
また、市民が政治活動をすることを「プロ市民」といって揶揄するような状態が今も続いていて、市民ひとりひとりが社会参加をする割合がまだまだ低い。

例えば現在の国の政策でも、国民から要望の多い「トリガー条項」の発動がなかなか進みません。
石油元売り大手から多額の政治献金を受けている自民党がこの発動に及び腰なのは明らかで、結局政府が「国民」ではなく、「大企業」の意向ばかりが優先される。
この現状に対して、国民はきちんと「自分たちの要望が通る社会」を築き上げていかなくてはならないと思います。

誰かがやってくれる」ではなく、「自分たちでよりよい社会をつくる」というメッセージを、まずは地域の政策から変えていくことで、社会をより豊かにできるのではないかと私は思うのです。

「福祉」は「インフラ」である

さて、今回話題にした柏市の隣に所在する「千葉県流山市」。
なんと人口増加率が6年連続日本一となっています。

流山市のこのムーブメントの立役者は、間違いなく市長の井崎氏で、彼は柏市で生まれ育ち、アメリカの大学院で地理学を専攻し、サンフランシスコの企業で地域計画や環境アセスメントに従事していたという、非常にユニークな経歴の持ち主。

市長に就任してからは、そのビジネスマン的才覚を活かし、行政改革を断行、効率的経営モデルを適用し、また市民自治の仕組みづくりを進め、全国唯一の「マーケティング課」を設置するなどして流山市のブランディングを向上することに成功しました。

そんな流山市の勢いを柏市民も感じ取ったのか、「市民派」に期待する子育て世代の支持を得て、現在の市長が当選するに至ったのではないかと私は分析しているのですが。

流山市の井崎市長は、「保育園難民」が話題になる前から、子育て世代の基本的インフラとして保育園を整備してきました
教育や福祉にお金をかけてこなかった、旧来の日本の政策とは一線を画す、保育士厚遇の政策を行い、かくして流山市は全国随一の子育て世代の流入に成功したのであります。

こうした政策というのは、やはりビジネスマンとしての経営感覚を持った市長らしいアイデアだと思いますし、そういったノウハウを流山市だけではなく、周辺自治体にも共有していただきたく思います。

今回柏市が「そごう跡地」をかなりの金額をかけて取得し、賑わい創出や子育て支援に充てることは、「インフラ」の整備の一環だと思っています。

一時的には大きな支出かもしれませんが、長い目で見たときに、この決断がきっと生きてくると思います。
少なくとも、大手不動産が駅前に「タワマン」を作るよりも、はるかに大きな効果を柏市にもたらしてくれると期待しています。

「わざわざ来てくれる」街に

残念ながら、まだまだ柏市というのは、Jリーグのホームタウンでこそありますが、東京のベッドタウンということもあり、「わざわざ来てくれる」という存在ではありません。

それでも、東京から電車一本で1時間未満で来ることができながら、中心地を離れると自然がいっぱいに広がっており、手賀沼周辺ではサイクリングを楽しむ方も多く、年に一度はエコマラソンや花火大会なども開かれたりと、個人的には住み心地のよい場所だと思っております。

手賀沼湖畔では、かつて白樺派の文豪が別荘を構えたりと、実は文化の発信地でもあったりしていますし、首都圏で現存する茅葺屋根の最古の教会堂があったりもします。

2021年に保存修理が完了した旧手賀教会堂

それから、実は昔柏市には競馬場があり、その名残として現在も船橋競馬場で「かしわ記念」というレースが行われていたり…

柏の葉周辺地域では東京大学のキャンパスがあり、研究機関やベンチャー企業などが集まり、スマートシティとして自動運転バスの実証実験など、先進的な試みも行われていたりと、実はユニークなことがたくさんある柏市。

現在は解散してしまったけれど、紅白歌合戦にも出場した「something else」は柏駅前のデッキでストリートライブを行っていたことでも知られています。

そうした「文化面」でもっと内外にアピールしていけば、もしかすると「わざわざ」柏市を訪れる方は増えるのではないかと思います。

柏市ご当地情報

柏市を知らない方のために、色々と舞台になった作品や所縁のキャラクターを紹介していきます。

あ、ちなみに柏市が舞台になったご当地アニメ『超普通都市カシワ伝説』という作品があったりします。個人的に好き。

電撃コミックスの『あしたの今日子さん』は【いわさきまさかず】先生の柏市を舞台にした作品。(3巻の表紙は日立柏サッカー場)

柏市の公認ではないけれど、(いちおう協賛はしている)柏のイベントに良く出没するご当地キャラクター【カシワニ】くん。
ゆるくてかわいい。

柏市の逆井商店会のキャラクター【さかサイ君】。
なにげに柏市消防局のメインキャラにもなったりとか。

かつて伊勢角の前にいた珍百景に出てきそうな光景。(現在は撤去)
カーネル三兄弟」でググると詳しく載ってると思います…

柏にある、本物の「城」、「コーマル城」。
外側だけ拝見したことがあります。独学で建築を学んで築城した城主さんの生きざまが最高にクール。

柏で「大谷」と聞かれたら間違いなくこの人。
レイソル一筋19年のバンディエラ、【大谷秀和】選手。
惜しまれつつ2022年引退。

国土交通省管轄、柏市に存在する日本唯一の気象に特化した省庁大学校。
ちなみに採用されると気象庁職員として給与がいただける。

キタちゃんがお礼を言いたいようです


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