私の書く作品にはやたらめったら大学生ばっか出てきて、小中高生どころか社会人すらあまり出てこない。

　だって、自分で小説を書いたことがある人なら多少は頷いてくれるだろうけど、そういうときって（自分があのくらいの年齢のころはどうだったかな）って思い返すでしょ？　私ってなんにもないんだわ、小中高と社会人の時期に楽しかったことって。だから不登校生が死にかけながらネットにかじりついてる話とか、社会人が死にかけながら仕事にかじりついてる話とかくらいなんだよ、仮に書けても。
　いや違うか。社会人は死にかけたからかじりついてた口を離して、離岸流に流された結果今は無人島みたいなとこで自給自足の生活を始めてるって感じかな多分。「アイアムアヒーロー」の最終話みたく。ってかあれもなかなか物議を醸してた気がする。3巻くらいまでは買ったっけ。

　というかおまえは今現在進行形で社会人だろ、ってツッコミが聞こえてきたような聞こえてこなかったような。すみませんね最近ちょっと耳が遠くて。私はカイジのときの香川さんの演技好きだったよ。東大卒のあの人が「勝てなきゃゴミだ！」なんて言っちゃうのハマり役すぎて。

　私も、大学受かんなきゃゴミだ、と自分で思っていたからこそ嬉しくて、今もこんなふうに擦り続けてるのかもしれないなあ。

「言うて、大学生活そんなに楽しかったの？」と言われると、もう人生であれ以上楽しい時期なんか来ないんじゃないかなって。単位修得と就職活動以外はなんの責任も取らず、日々の生活を維持するという意味では一滴たりとも汗水垂らさずに過ごせた4年間。
　もっとも、私が母親だったらこんなバカ殺してるな、とは思う。プロセスでなく結果を重視してくれる家庭で良かった。私のGPAよりも、缶チューハイのアルコール度数のほうが高かったから。

　あとは、合格発表の日以来あんなに母親が喜んでる声聞いてないからかもしれない。なんとか4年で卒業してからというもの、就職したと思ったら鬱にかかって何もできないくせに実家帰ってきたり、結局は離婚したり、田舎の高校生が駄菓子屋でガム万引きするみたくすぐに転職したりとか。いい歳こいてなんにも喜ばせることしてねーな、ってちょっと反省。

　閑話休題。

　よく言われるのがですね。

　まあそうなのかもしれないけど、過去のことを思い返すってそこまで糾弾されるような悪行なのかなあ。そりゃあ（あの頃はよかった）だけで終わるんだったら友達の「ほら私ってよく飲みに行くんだけどさ、たまたまタレントの○○が同じ店に来てて？　キミかうぁぅぃいねぇ〜なんて言われちゃって笑」って話くらいクソどうでもいいことなんだけど、振り返ったときに「あの時だってこうやって笑って乗り切ってきたんだから」とか覚悟決めるきっかけにするのって、別に悪いことじゃないと思うんだよな。

　私にとっての”あの時”っていうのは悪夢の大学受験生時代であったし、その結果として得られた4年間の「桃源郷往復きっぷ」であって、もう10年以上前に「かえり」と印字されたきっぷを嫌々ながら改札機に食わせ、今もこの世界に生きている。
　そんなもんをいくら忘れようとか、思い出さなくていいようにしようと決めたところで、あいつら何度でも浮かび上がってくるんだよね。だからってドラム缶に思い出とコンクリート注いで海に叩き込めるほど冷血にもなれないし、なんの成功もおさめてない。今が一番……とか言えちゃう人ってたいていそういう神がかり的な人か、なんの考えもなく酒の勢いで誰とでも寝ちゃえる人とかだよ。知らんけど。

　効果の実感には個人差があります。適切な食事管理と適度な運動のもとに検証を行なっています。テレビショッピングの端っこにちんまり書いてる注意書きにひたすら夢を壊されているような奴が「今が一番」なんて言える日なんて、きっと永遠に来ない。

　そんなの分かっている。

　でも、いま小中高と社会人時代の記憶を全部なくしたってきっと私は私として生きられるけれど（あの頃がなければ今の自分は絶対にないなー）って思うのが、私にとっては大学生活の4年間だったってわけで。

　他人にいくら「捨てろ」って言われても捨てらんないのはそういう理由なんだろうな、って今noteを書いてて思うに至った。

　あとそんなことを私に偉そうに講釈垂れられるのは自分より立場が上のやつだけだよ、って思ったけどその後輩私よりGPA高かったし今は結婚してて私より年収高くてこないだマンション買ってた。すみません。「乃が美」とかのパン買ってくる金はないんでとりあえず靴でも舐めます。