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潰れた音量ボタン


WALKMANの音量ボタンが、潰れてしまった。


以前から、あまり調子は良くなったのだが、

遂に、押しても、押しても、押しても、

音量を変えることができなくなった。




中学生の時から、そのWALKMANと、いつも一緒だった。


楽しい時も、悲しい時も、

嬉しい時も、辛い時も、

そのWALKMANは、私と一緒だった。


WALKMANを持ち忘れた時は、とても寂しく、心もとなかった。


WALKMANは、私の好きな音楽で、

外部音から、

世の喧騒から、

音が聞こえるほどの他人の視線から、

私を守ってくれた。



私自身が保てなくなる程、悲しい時、

+(プラス)の音量ボタンを押し続け、

バリアを強くした。


そして、時が経ち、そのバリアを緩めるため、

必死に、-(マイナス)ボタンを押し続けた。



思えば、この約10年間、

特に、中高生の時は、

音量の上げ下げの繰り返しだった。




希望とは異なる中学への入学

快活な自己の抑制

クラスメイトからの陰湿なイジメ

大好きだった祖母の死

担任とのいざこざ

高校進学・第一志望コースへの進学

てんかん発症・投薬治療開始

病気である自己を受け入れられない葛藤

いわれのない偏見・差別・無理解

私を理系へと導いてくれた恩師との出会い

大学受験の勉強・入学試験

第二志望の大学への入学...だけど恩師と同じ大学

母の難病・手術

信頼できる同期・先輩との出会い

研究室内でのいざこざ

同期と異なる道を選んだことによる別れ

noteでたくさんの方に出会えた喜び



どちらかと言うと、

辛かったこと、苦しかったこと、

たくさん泣いたことの方が多かったから、

+ボタンで、弱い私を守って、

-ボタンで、落ち着いた私を現実へと戻してくれた。



WALKMANのことなど考えず、構わず、

音量ボタンを、強く、何度も、押し続けた10年間。


今度は、WALKMANがその痛みに耐えられなくなってしまった。




あなたは、私を守ってくれていたのに、

私は、あなたを大切にできていなかった。


ごめんね、ごめんね、ごめんね。

そして、今まで、守ってくれて、ありがとう。

今まで、私を支えてくれて、ありがとう。



潰れた音量ボタンは、あなたが私を守ってついた勲章。

あなたと共にいた時間を私は一生忘れない。


見た目は変わったけれど、中身は変わらない、

あなたと一緒に、また、同じ時を過ごそう。

今度は、もっと大切にするから。

だから、この辛い時を、一緒に乗り越えよう。


あなたとなら、どんなことでも、乗り越えられる気がする。




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