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コロナと飲食店の3年続く闘い【後編】 ライフスタイルの変化、従業員のコロナ感染、飲食店はどう乗り切る

前編はこちら→コロナと飲食店の3年続く闘い【前編】「ピンチはチャンス」の本当の意味

「陽性? 交代で入れるスタッフは……?」
「ランチタイム前後の数時間でも、開けられないかな?」
「仕方ない。臨時休業だね」

社員たちと電話での会話です。

「いつ終わるの?」と抱きながらコロナと生きる日々から、3年が過ぎました。

お客さんたちはコロナの正体や対策もわかり、過剰に気にしなくなったと感じています。5月からは、感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針も発表されました。

世間では「コロナはもう大丈夫」といった雰囲気があり、喜ばしいことです。

一方で飲食店を営む側は、未知の感染症に右往左往していた時期とは、厳しさのフェーズが変わってきています。

今日は、コロナ下3年を経た飲食店の現状を伝えながら、社会変化の影響を真っ先に受ける業態であるゆえにどう対応していくのか。考えてみます。

笑顔で働いてくれるWithGreenのパートナーたち(コロナ前)

シフトが回らず時短営業や臨時休業も

まず、2022年にぶつかっていた壁は、冒頭の会話からわかる、従業員のコロナ感染です。

従業員が陽性、濃厚接触者になった瞬間、店に出てこれなくなります。その濃厚接触者も同じ店舗のメンバーだとするとシフトも回らず……。スタッフ不足から、時短営業や臨時休業を余儀なくされていました。

開店さえしていれば来てくださるお客さんがいても、閉店しているから売上がゼロ、ということが起きているんです。ほかの飲食店さんも、同様に苦労されているだろうと思います。

「残業メシ」としてあったニーズがほぼ失われた

2つめとして、本来あるであろう売上額自体も戻っていません。全体の売上は、コロナ前の80%〜90%で推移しています。

社会全体で行動変容が起こり、出社率が低いままだからです。オフィスワーカーのランチが最大のかき入れ時である私たちには、大きな痛手です。実際、リモートワークが働き方として定着したことで、大手町や神谷町など、オフィスビル内にある店舗の売上は、未だ本来の目標からはかなり遠いです。

3つめは、夜の売上が弱いこと。オフィスに出社しなくなったこととも関係しますが、出社しても遅い時間まで働くことをしなくなりましたよね。仕事が残っていても、早めにオフィスを出て、自宅に持ち帰る流れが一般的になりました。かつてなら、オフィスワーカーへの「残業メシ」としてあったニーズが、ほぼ消えてしまいました。

コロナ下でのスタッフのモチベーション維持の難しさ

売上減の直接要因ではありませんが、コロナがやってきて、難しく感じていたのは、店舗パートナーたちのモチベーション維持です。

従業員の立場に身を置くと、コロナ都合で臨時休業を余儀なくされたときは収入の不安があったでしょう。時短営業の店と通常営業の店と就業時間に差が出たときは、不満の声も出ました。

あるいは、現場に身を置く心情としての落ち着かなさもあるでしょう。開店してもめっきり来客がない。かと思えば、気温が上がってサラダ需要が上がりお客さんがどっと押し寄せる……。ずっと繁忙しているよりも、暇だったところから急に忙しくなるほうがストレスフルというのはわかります。

私たちは、コロナによる解雇はしないと明言してきました。それでも、飲食店に勤めることそのものが不安要因になっているのは、否めません。採用も、コロナ前と比べて簡単ではなくなっています。

「いまできることはなんだろう?」と問う

現状を並べると、コロナで人の行動が変わったことによる売上減に加えて、世界的な物価高(インフレ)もあり原材料費も人件費も、上がっています。飲食店の経営は、どこも苦しい。

この状況に、どういう選択をしていくか?

苦しいときほど私は、「ピンチはチャンス」の就活体験を思い出します。

加えて、いい時もそうでない時も大事にしているのは、「いまできることはなんだろう?」と問うことです。

これは、かつての勤務先でニューヨーク勤務が決まったときの、上司からの助言に端を発しています。「ニューヨークでしかできないことをしなさい。日本でもできることをしていたら、もったいないよ」。そうアドバイスをもらいました。

おかげで、アメリカで過ごした2年間はいまに集中することができたし、以降も「30代でしかできないことってなんだろう?」とか、常に「いまだからこそ」と考える癖がつきました。

コロナが始まったばかりの時期に、『野菜を食べるジュース』を現場で働く人たちに無償で配ったのも、「この特殊な状況のいまだからこそ、自分たちができることはなんだろう?」と問いました。そこから、野菜は変わらず育っているのに廃棄されてしまう生産現場と、コロナ下の最前線で働く人たちをつなごうというアイデアが生まれ、プロジェクトを立ち上げました。

一歩引いて、全体を見渡す

「いまできることは?」と問い続けていると、目先のことだけにとらわれず、全体を見渡せるようになります。そこに自分たちを置くことで、何をすべきかもはっきりしてきます。

コロナだけでなく、先が見えない世界を生きている私たちは、「いま、その状況下でできることをやる」に尽きるのではないでしょうか。

WithGreenの場合なら、会社が死なないようにファイナンスの部分は手堅く守りつつ、出店数を増やす。ただ出店場所は、オフィスビル内の店舗を閉めて、ターミナル駅や商業施設へと方向を変えていくこと。テイクアウトやデリバリーにも強い業態だから力を入れ直し、店舗でも発信して、ブランドとしてもしっかり打ち出していくこと。

もっと細かく見ていくと、「店ではなくてデスクで食べたい」とか「持ち帰って家で食べよう」とか、お客さんたちの感情やライフスタイルは、コロナ前と比べて変化しています。そんな機微に、商品やサービスも、柔軟に合わせていかないといけない。

WithGreenは、日本の農場と、お客さんたちの健康とをつなぐかけ橋です。

だからこそ、コロナを経たあとの行動変容に合わせて、自分たちから変わることを厭わない。ここは、大事にしたいと考えています。

生産者から学ぶ農業体験は、WithGreenの大切な行事。
コロナ期間中は開催が少なかったが、再度定期的に開催したい。

先が見えない中でいかに行動していくか

WithGreen全体の売上は、コロナ下でも人が行動し始めたことで回復し、2022年3月以降黒字化しています。今後は、「ピンチはチャンス」の観点から取った行動の花が開いてくるとも見込んでいます。

これは意識の持ちようの話になりますが、100%成功すると言えることなら、多くの人がもうやっています。それだと、時代遅れにもなってしまう。

7割ぐらいの成功確率が立てられるのであれば、ぐっと踏み出す。その勇気をもつことが、いまの時代はすごく重要ではないでしょうか。

踏み出せたら、その成功確率7割を、自分たちの意思と努力でさらに上げていくことはできると思うんです。そんなことを考えながら、今日も、今日できることをしています。

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サラダボウル専門店 WithGreen/ウィズグリーン編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)

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