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ワンオペママの戦場(昼)

「いってらっしゃーい!」毎朝、保育園の先生に言われる。それに対して、私はいつもモゴモゴする。仕事に行くわけでなく、家に帰るだけだから。育休中だから。

「行ってきまーす!」とでも言うもんなら「おめー家に帰るだけだろw」って先生に思われないかと、被害妄想してしまう。先生には「よろしくお願いします」と会釈し、家路につく。

通勤途中の人たちが、まぶしい。息子を抱っこ紐で抱え、日よけの帽子を深くかぶり、人々をよけながら歩く。家に着き、玄関ドアを開けて中に入ると、ちょうど洗濯機からいつものメロディが聞こえた。干さなきゃ。

化粧は眉毛を描くくらいしかしていないので、日焼け止めは塗っていない。日よけ帽子をかぶったまま、ウッドデッキで洗濯物を干す。その間、息子は私のそばでハイハイさせる。夫の趣味の盆栽を触りたいようだが、葉がちくちくするので、じっと見るだけの息子。このことを、うちの波平(夫)に話すと、「盆栽って野生に食われないために、あんな葉なのかな」と感心する。

9:15。干し終わった。坪庭や盆栽に軽く水やりをし、部屋に戻る。気分転換のお外タイムが終わり、機嫌悪そうにする息子。眠たそうだ、寝るかな。期待を大にして、息子を寝室へ担ぐ。

息子は本当によく寝てくれる。調子がいい日は午前は3時間寝て、午後寝もする。夜も21時までには就寝する。よく寝て、そして、よく飲む。体重は11㎏を超え、肥満体形だ。子熊と見間違えるほどの成長っぷり。成長しすぎだ。寝たいのなら、いつでも寝てくれ。なんてったって、昼寝時間は、私の唯一の自由時間だ!!

夫は、息子の昼寝が長いことを知っているので、心底羨ましがられる。ありがたく娘も保育園なので、昼寝中は静かに自分時間を過ごすことができる。夫がストレスにプレスされながら、アータタタタタ!とPC作業をしている間、私はゆったりと、ラブでピースなひと時を過ごしている。認める。

その代わりと言ってはなんだが、毎晩、夜泣きで何度も起こされ、世話をするのは私であるし、平日の家事育児は、ほぼ私が担っている。休日もなるべく私が動き、夫の自分時間を積極的に提供している。平日の息子の昼寝中くらい、私は蝶のように舞ってもいいじゃないか。

というわけで、本日も、なんとしても息子にはゆっくり昼寝してほしい。寝始めたらめっちゃ寝るのだが、難しいのが、寝かしつけ。月齢が上がってきたからだろうか…。8か月ごろまでは、添い寝しながら授乳(添い乳)したら、一瞬で寝ていた息子。でも最近は、飲み終えると、むくりと起き、私の方を見て、ニッコリする息子。可愛いんだけど、私の方は期待が外れて、作り笑顔だ。

こうなったら、寝たふりをしよう。熊に見つかった時の死んだふりのように、私は目をつぶる。子熊(息子)は、(おい、何寝とるねん)と私を叩く。そして顔の方に近づいてきた。私はスースーと寝息を立てる。そのままコロンと息子も寝る体制に入ることを期待した。

ガリッ。「痛い!!!!」あまりの痛さに、つい叫ぶ。眉間と鼻の部分を思いっきり手でつかまれ、爪で引っかかれた。息子は(おお、寝とるやん。鼻とか目を触ってみよう。気になっとってん。)といった感じだろう。めちゃくちゃ痛かった。

気を取り直して、また寝たふりをする。今度は薄目を開けておく。息子は母親に興味を失い、ベビーカメラの方へ向かう。うちのカメラはSwitchBotだ。SwitchBotは、動作確認して、動きのある物体に自動的にカメラを向ける機能がある。だが、動作物が近づいてくると、それを避けるように、必死に身体の向きを変える。不思議だ。

息子がカメラに向かってハイハイすると、「こ、来ないでくだせぇ~!」と必死に息子に背を向けようとするSwitchBot。生命が宿っていると錯覚するほどに。息子も、ウィン!ウィン!と回転するSwitchBotにビビりつつも、近づき、そーっと触ろうとする。

「コラ!」触ったら倒れてしまうので、このあたりで死んでいたはずの母が声を上げる。ビクッ!と、息子は背筋が棒になり、こちらを向く。ちょっと面白い。私は諦めて、息子をリビングへ担いでいく。

明るいリビングに到着すると、(ワイ、寝たかったのに!)と泣き出す。私は息子を床に置き、最終手段の武器を取りに行く。(ワイを一人にすな!)とまた泣く。はいはい。武器を手に取ると、腰回りに装着し、息子を抱き上げて、固定する。そう、抱っこ紐の登場だ。(うちはエルゴ)

(ママンとべったり。嬉しいわあ)と息子は満足そうに母を見上げる。可愛い、そして早く寝るんだ。ゆらゆら腰を振りながら、本を読む。息子も本に目を向けるが、字ばっかりで興味をなくす。私が少し本の世界に入り、ふと現実に戻ると、息子は目を閉じていた。寝顔、すごく可愛い。

しめしめと、寝室へ。そーっと抱っこ紐から降ろす。息子はごろんと寝返りをうち、スヤスヤと動かなくなった。

よし!リビングへ向かう。自由だー!拳を上げ、犬井ヒロシのように叫ぶ、心の中で。PCを開き、らりほ~♪とnoteを書く。

12:00 。書きたいことをnoteに山ほど書いた。いつも3,000字超える私を誰かとめてくれ。途中「ギャー!」と泣き声が聞こえることもあるが、すぐに寝室へは行かず、ベビーカメラを覗く。横になったままだと、また寝る可能性も高いので、カメラで見守る。2分くらい泣くと、また寝た。

12:30。また泣き声が聞こえる。またカメラを覗く。今度は頭が上がっている。こりゃ起きるな。諦めて迎えに行く。今日もたくさん寝てくれてありがとう。オムツを替える。

13:00。息子とランチ。離乳食を息子の口に運びながら、私は、朝のおかずの残りと生卵をごはんに乗せた茶碗をかきこむ。食べ終わったら、授乳する。

午後はイオンに買い物するか、おうち遊びをするか。娘のお迎え後に3人で公園へ行くので、今はゆったり過ごす。気分が乗れば、化粧をして支援センターに行く。化粧をするハードルが高く、諦めることが多い。

前日にイオンで買い物したので、本日はおうち遊び。0歳児にとって危険なものは手の届かないところに置き、自由に行動させる。一人遊びに熱中していたら、しめしめと本やnoteを読んだりする。

でも気が付いたら、突拍子のないことをしている。以前、トイレットペーパーをホルダーから引っ張りだし、レッドカーペットのように堂々と転がしていたこともあった。引き戸の開け方や、スマホやリモコンはタッチすると動くこともわかっており、息子は様々な世界の真理に気が付いている。本やnoteが読めそうで、読めない。最近のブームはダイニングの椅子を手押し車のように動かすこと。気が付けば一脚、紛失したことがある。椅子ってなくすことあるんだな。必死に探して、パントリーの奥に見つけた。

15:00。16時半に娘を迎えに行くので、午後寝をするなら今だ。また添い乳するが、寝ないことが多い。上手く寝ると、1時間ほどエンジョイするが、寝なければ、また遊ばせる。絵本も読む。義両親も見ている「みてね」にアップするために、可愛い画角の写真も撮る。隙を見て、掃除や離乳食のストックを作る。こまめに間食もする。

穏やかとはいえ、なんか知らんけど、疲れる。腰も痛い。助産師の友人が言っていたが「産後は1年かけて、体力が戻っていく」らしい。疲れやすいのは夜泣きで何度も起こされるからかとも思うが、電車では酔いやすいし、フットワークが重くなった。まだ本調子でない感はある。

タイトルに戦場とついているが、昼の部は、体力温存タイムでもある。昼寝をさせることに注力もしているが、笑顔あふれる息子との時間もじっくり堪能している。今だけと思って、1日1億回はチューしている。

16:20。保育園へ娘を迎えに行く。眉毛はあるが、「おめー1日中すっぴんやったんかい」と先生に思われてしまうのでは…とまた被害妄想する。出発前に鏡を見ると、目を疑った。鼻筋に猫に引っかかれたようなひっかき傷があった。朝の寝かしつけの時のか!しっかりと傷は刻まれている。額にだったら、ハリーポッターみたいでかっこよかったのに…。よりによって顔面で一番突出している部分に堂々と鎮座する傷。化粧で隠す時間も気力もなく、日よけ帽子を深々とかぶり、家を出る。

16:30。「ママー!」と駆け寄る娘と再会を果たす。先生の視線はしっかり私の傷をとらえていたが、触れてこない。そりゃーな。

「ありがとうございました~」先生にお礼を言い、娘と手をつなぎ、保育園の扉を閉める。バタンという音がコングの音。また闘いが始まる。さあ、娘。今日はどこへ寄り道するのかな…。



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