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【ファジサポ日誌】100.大局観を持ちたい~第7節 大分トリニータ vs ファジアーノ岡山 マッチレビュー~

耐えましたね。

ボールを持てる大分を相手に早い段階で退場者を出してしまうと、やはり一方的なゲームにはなってしまいます。
そんな中で、途中から勝点1も視野に入れたゲーム運びに見えましたファジアーノ岡山は、ある意味ねらいどおりに勝点1を手にすることが出来ました。
客観的にみてもホーム大分の方に敗北感が残るゲームであったと思います。

岡山としてはよく頑張りましたし、選手を称えたいと思いますが、J1昇格を目指す上では、このようなゲームから課題を抽出することが重要で、課題の分析から次の勝利への布石が生まれ、勝利文化の構築に繋がるのだと思います。

もちろんチームはそんなこと十も承知であると思いますが、サポーターとしてゲームの振り返りから少しでもチームの課題を共有したいと考えます。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

岡山はクラブ史上初の5連勝はなりませんでしたが、正直なところ筆者は今シーズンについてジンクス的なモノは気にしていません。
ここまでのチームを取り巻く雰囲気は一戦ずつ大事に戦うことであると、木山監督はじめ各選手からのコメントからも伝わってきます。大事なのは自動昇格ペースのキープに尽きます。
7試合で勝点17ですから、1試合平均獲得勝点は2.42。想定されます自動昇格ペース(1試合平均2.00)を上回っています。この数字を意識し続けていきたいものです。

J2第7節 大分-岡山 メンバー

続きましてメンバーです。

大分は各媒体4-4-2で示されていますが、この試合のポイントと考える攻撃時の4-2-3-1で表示しました。そして、岡山の3バック脇のスペースにねらいを置いていた点も強調しています。

岡山は前節に引き続き(44)仙波大志がCHの一角を担います。
開幕から6試合フル出場中であったDF(43)鈴木喜丈はメンバー外となりました。詳細は不明ですが、前節群馬戦では相当な疲労の様子も窺えました。様々な情報からも、出場するかしないかぐらいの雰囲気であったと思います。ここから連戦ですし、休養確保を優先したと解釈しています。

代わりにLCBに(15)本山遥が入ります。LCBでの起用は初となりますが、(43)鈴木と同じく持ち上がる能力がある点、比較的サイド奥にボールを送る大分に対して、そのカバーリング力が買われたのではないかと推測します。

2.レビュー

J2第7節 大分-岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図

全体的には前半から岡山が数多くのCKを獲得、しかし二次攻撃も含めて決め切れません。
50分も岡山がCKを決められないところから、大分CF(11)渡邉新太のカウンターを受けます。自陣からドリブルで独走し、岡山GK(49)スペンド・ブローダーセンと1対1になっていた(11)渡邉を岡山RWB(88)柳貴博が後ろから手をかけて倒しDOGSOで一発退場。
一気に大分の攻勢へと試合展開は様変わりします。
しかし、大分が圧倒的にボールを支配するもフィニッシュには至れない、決め切れない、また岡山がフィニッシュに持ち込ませずタイムアップとなったのでした。

(1)長沢駿vs岡山守備陣

前半の見どころとなったのは大分のOFM(93)長沢駿(あえてCFと書きません)を中心とした攻撃と岡山守備陣の攻防でした。
筆者は、最近の大分の試合を観た上でこの(93)長沢の動きを少々警戒していました。

(93)長沢といえば193cmの長身が代名詞、岡山も一昨年のアウェイ戦(佐野航大初ゴールの試合)でサイドからのクロスを合わせられゴールを許しています。
この(93)長沢が今シーズンはCFでありながら、中盤のかなり低い位置まで下りてボールを受け、前方サイドのスペースへと走り込む味方にパスを供給しているのです。この(93)長沢の「トップ下」としての働きが、最近数戦、大分の攻撃の核となっているのです。

今回もSPORTERIAさんの時間帯別パスネットワーク図をご覧いただきます。
(93)長沢の「トップ下」の位置取りが顕著になっています。
この(93)長沢の動きのねらいは、相手最終ラインを引き出してその後方スペースに味方を走り込ませることにあります。
実は昨シーズンのホーム大分戦でも(93)長沢の「受けに下りる」傾向は、この試合ほどではないにせよ見てはとれ、その時は大分AT(アタッキングサード)内では(5)柳(育)がマンマーク気味に迎撃、裏のスペースを(15)本山らがカバーするという守備の形を岡山はとっていました。

昨シーズンの対戦時よりも自陣寄り、状況によってはセンターサークル付近まで余るように下りてくる(93)長沢に対して、岡山の2CH(44)仙波大志と(24)藤田息吹は2人で挟みながら、またそれぞれが単独で(93)長沢をチェックします。その動きは獲り切るというよりは、横方向を制限しながらプレッシャーをかけることにより、(93)長沢が前方、サイドへ叩くタイミングを遅らせる意図の方が強かったように思います。

この2CHの働きにより、(88)柳(貴)、(17)末吉塁の両WBは大分のRSH(29)宇津元伸弥や右サイドに流れるCF(11)渡邉らに裏をとられる前に帰陣することが叶っていました。
大分は全体的に初のLCBとなる(15)本山の左サイド奥にボールを集めようとしていましたが、有効なチャンスを創り出せていなかった要因は(15)本山自身の頑張りと2CHのマメな(93)長沢へのチェックにあったと思います。

また(93)長沢が岡山中盤、最終ラインの中間ポジションで受けようとした時は、そこに両CHが陣形を崩してまで戻っていたかというと、そうではなく、早めに両WBが帰陣、岡山は割り切って構えた守りを選択していたように見えました。

大分の直線的なドリブル突破に対してはこの投稿とおり、ボックス手前で各選手自信を持って潰していた点が印象に残りました。今の岡山の守備の充実ぶりがみてとれます。
大分は(93)長沢が中盤の組み立てに参加する分、フィニッシュワークに絡めないという弊害が生じていたと思います。16分の岡山ゴールに向かうクロスは精度が高かったと思いますが、ここに(93)長沢がいれば合わせられていたというイメージが残りました。
一方、(93)長沢がボックス内にいる時も、どちらかというと囮にして他の選手に合わせようとするクロスが多く、また精度も欠いていたため、岡山としては決定的なピンチにはなりませんでした。

大分がチャンスをフィニッシュで完結できない場面も多く、岡山にはカウンターのチャンスが生まれます。おそらくこれまでの疲労の蓄積が影響していると思われますが、収め先のCF(9)グレイソンの調子は明らかに良くなく、いつものようには下りられないし、収まりもよくなかったのですが、それでも標準的なCFの水準のはたらきは見せてくれていたと思います。

前述しましたように(44)仙波と(24)藤田が全体のバランスを崩してまで守備をしていた訳でもなかったことから、岡山の攻撃への移行は比較的スムーズで、この点が大分陣内深くまで侵入する回数を増やせた要因のひとつであったと考えています。

(2)決められないCKから考える

この試合で岡山のCKは実に8本を数えました。
岡山はチャンスは十分につくれていたといえますが、1本も決められなかったことがこの試合を難しくしてしまったと思います。
この試合では(44)仙波がキッカーを担当しました。
8分RCB(4)阿部海大がニアで合わせたボールが最も惜しかったと思います。岡山のCKが練られていなかったとは思いませんし、(44)仙波のキックが悪かったとも思いません。
しかし、大分両CB(25)安藤智哉と(34)藤原優大の高さ、強さを脅かすには至らなかったという印象も同時に持ちました。この試合は欠場しましたが、МF(19)岩渕弘人のキックは高い所から落ちてくる球質、МF(41)田部井涼の球質にも同様の特徴があり、この2人が同時に欠場した点はセットプレー時に相手の高さを上回れない要因になっていたと筆者はみています。
また、この試合ではCKの半数以上が右からのもので、右利きの(44)仙波が蹴ることにより、ボールはゴールから遠ざかります。ゴールから遠ざかる分、味方がフリーで強いシュートを撃てる可能性は高まりますが、そのプレーを最も得意とするDF(5)柳育崇がベンチスタートであったというのも皮肉なものです。

この論点を更に深めます。
右からのCKが多い理由は右シャドー(27)木村太哉がそれだけチャンスをつくっている証といえます。
しかし、敢えて更なるレベルアップを求めるのであれば、やはり(27)木村には流れの中で決める力を身につけてほしいです。
他チームの岡山対策は今後進んでいくと思いますが、その一つはゴール前さえ固めれば何とかなる、跳ね返せるという事になろうかと思います。
その上で(27)木村には撃つべき瞬間に迷いなく撃つ、ダイレクトで撃つ力を身につけてほしいと切に願います。CKを獲ることで良しとしない意識向上に期待します。

余談ですが、昨シーズン在籍した櫻川ソロモンが苦しんだ理由の一つが、撃つべき時に撃てないことであったと筆者は考えています。

おそらくこのレベルアップがないと、岡山の攻撃は今後苦しむことになると筆者は少々マイナスな予想をしています。幸い岡山には(8)ガブリエル・シャビエルが加入しました。(8)シャビエルを前半から使えるようになれば、状況はまた変わってくるのかもしれませんが、おそらくそれだけでは足りません。

(3)柳貴博の退場から考える

岡山がCKをなかなか決められないという流れから、大分側にもロングカウンターの意識は高まっていたと憶測します。50分(88)柳(貴)のDOGSOのシーンなのですが、まずはCKの際にゴールから遠ざかるボールが多くなり、被カウンターのリスクそのものが高まっていたという点は指摘したいところです。
局面をみていきます。
大分RSB(18)野嶽惇也が迷いなく(4)阿部のポジションにクリアに行っています。完全にCKのねらいを読まれていたといえます。
この後、不規則にバウンドしたボール(DAZNハイライト3分19秒の場面)を(4)阿部がキープ出来そうな体勢になっている、左足でフィニッシュをしそうな体勢になっており、(88)柳(貴)はこの様子を見ているように見えます。この時(88)柳(貴)の視野には、カウンターの準備をしている大分(11)渡邉が入っている筈ですが、(88)柳(貴)はスタンディングになっており少々準備が悪いようにも見えます。

ここで(4)阿部は左足ではなく、滑り込みながら体の向きとは逆である利き足の右足でボールをゴールと逆方向に処理。この処理が味方の虚を突いてしまったという事かもしれません。
3分21秒の場面では適度な距離でカバーをしていた筈の(17)末吉の反応が一瞬遅れ、(88)柳(貴)は完全に走り出しが遅れしまいました。

この時、画面が持ち出した(18)野嶽のアップに切り替わり、(24)藤田の位置が分からないのですが、おそらく末吉の後方、左サイド側をカバーしていたと思われます。結局、岡山のカバーが自陣からみて左サイドに集中していたことにより、ピッチ中央を走った(11)渡邉を誰も捕まえることが出来なかったというシーンでした。

久々に岡山のネガトラが上手くいかなかったシーンをみました。若干(88)柳(貴)が二次攻撃の方に気を取られていた分、ボールの行方ばかりを追ってしまったのかなという印象は残りました。

あとは…画面が途中で切れてしまいましたので、正確なところは何とも言えないという感想です。

おそらく(88)柳(貴)としては自身の責任という意識は強かったのでしょうね。レッド覚悟のファールであったと思います。
このレッドをどこまで受容すべきかという点は、人によって意見が分かれるところであると思います。
ここで身を挺して1点を防いだのでドローに持ち込めたという意見も、そうだと思いますし、(88)柳(貴)の責任感に寄り添う意見も理解できます。

筆者もゲーム終了直後はこのように思いました。

しかし、共有しなければならないのは木山監督の考え方であると思います。
試合後のインタビューで「11人での戦い」を選択してほしかった旨のコメントがありました。仮に先制されても11人でサッカーをやっていれば2点獲って逆転する可能性があったと述べていました。

振り返れば、今シーズンの開幕前、「岡山のサッカーは点は獲れるがその分獲られることも多くなるのではないか?」と予想していたサポーターも多かったと思います。その予想と反して実際にはロースコアで勝利するゲームが増えている。一重に各選手の球際で「やらせない」意識の向上、プレーの積み重ねにあるのですが、では目指しているサッカーの全体像を考えた際に、何が何でも相手に先制されることを嫌わなくてはならないのか?というと、長い目でみれば決してそうではないと思うのです。

筆者はCB(18)田上大地のいわき戦の退場の際にも書きましたが、裏をカバーしているのは(49)ブローダーセンです。まずは彼に任すという選択も視野に入れてほしいと思います。また、状況は異なりますが山口戦で交わされた(4)阿部海大がノーファールで交わされた相手を追っていった場面は最終的に相手のシュートミスで終わりました。当たり前ですが、相手が必ず決めるとも限らない訳です。

全体的に充実している今の岡山において、あえて不足している点を探すならば、シーズンを通した大局観なのかもしれません。
木山監督も試合前には「毎試合決勝戦」と言っていましたから、無理はないのですけれどもね。プレーに少々余裕がほしいですね。

この点については、このネガトラの局面以上にチーム内で共有しなければならない点なのかもしれません。

(4)10人になり勝ち筋はあったのか?

(88)柳(貴)退場後、岡山は左シャドー(10)田中雄大に代えてRWB(16)河野諒祐を投入します。後半始まって早い時間帯ということもありますし、前述しましたこの日の岡山の守り方を踏まえますとやはりWBを欠く訳にはいきません。妥当な策であったと思います。
この(16)河野が89分のシュートブロックを始め、サイドからも簡単にクロスを上げさせないなど守備面で奮闘してくれた点も岡山の勝点1獲得に繋がりました。
そして68分には疲れが顕著な(9)グレイソンに代えてFW(99)ルカオ、(27)木村に代えてFW(8)シャビエルを投入します。
この交代により岡山はほぼ前線でキープは出来なくなり、得点は運しだいの面が強くなったと思いますが、既にこの段階では木山監督は勝点1にかなり気持ちはシフトしていたのではないかと推測します。

筆者としては前線で収められない(99)ルカオよりは、FW(29)齋藤恵太の方が自陣から持ち運べますし、前で張ることも出来ます。得点の可能性は多少なりも上がったような気もするのですが、開幕してからここまでの起用実績やこの試合から連戦に入る点が考慮されたのかもしれませんし、良くも悪くも木山監督は選手を信頼できる監督です。
昨年の今頃は(99)ルカオとハン・イグォンで2トップを組ませて収めさせようとしていたぐらいです。

これは87分(DAZNでは123分39秒から)の場面を見て思ったのですが、右サイドを(8)シャビエルらとのパス交換から(16)河野が右サイドからチャンスを迎えた場面です。
早めにクロスを入れていれば獲れたのではないかと思った結構なチャンスなのですが、(99)ルカオはボックスのニアポケットの手前にいるばかりで中に入ろうとしないのです。

ここは正直なところFWなら中に入ってほしいと思いました。おそらく(99)ルカオのイメージははボールを受けてポケットを縦に推進するプレーの一択なのです。
(16)河野も困っていたと思いますし、結局(4)阿部や(17)末吉が中で合わせようとするぐらいですから、この(99)ルカオのプレーについては、率直に不満を感じました。WGとしてはスピード、ストロングを両面で発揮する選手ですし、相手守備者へのプレッシャーという部分でも貴重な戦力なのですが、非常に起用法が難しい選手でもあると改めて思うのでした。

3.まとめ

以上、アウェイ大分戦をまとめました。
一戦一戦を大事に戦う意識が強すぎて、手段を選ばず失点を防ごうとする意識に繋がっているのであれば、そこは試合全体、シーズン全体の大局観を共有することで修正を図ってほしいと思いました。
一方でその1失点を何が何でも防ごうとする心理に、攻撃停滞の意識があるのでしたら、そこは根が深い問題のような気もします。シャドーの得点能力、そして(9)グレイソンのコンディションも今後は気になります。
水曜日の対戦相手は横浜FC。今さら述べるまでもなく試合巧者、狡猾な相手です。この試合で見せた岡山の隙は狙ってくることでしょう。
一昨年の三ツ沢の悔しさを、当時在籍していた選手には思い出してもらい力に換えてほしいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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