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【向日葵は枯れていない!】7.ギラヴァンツ北九州ミニレビュー~第8節 vs カターレ富山

今回の第8節は筆者はリアタイ出来ず、先にサポーターの皆さまの感想や増本監督のコメント等を読んでいます。それを踏まえてのおさらいという形になりました。筆者も概ね皆さんと同じ感想ではありますが、自分なりにまとめてみました。

1.試合結果&スタートメンバー

今治戦、大宮戦と良い流れをつくれていただけに、いつも以上に残念な気持ちも生じてしまう一戦となってしまいましたが、僅差勝負となるとまだまだ富山に分があるのかなと現時点での実力差も感じました。

続きましてメンバーの確認です。

J3第8節 富山-北九州 メンバー

ここから再び連戦ということで、北九州はCH(34)高吉正真に代えてキャプテン(14)井澤春輝をボランチの一角に据えてきました。(34)高吉とは異なる個性、特に攻撃の組み立てに関してはどのような違いを魅せてくれるのか、期待が高まりました。
そしてベンチにはMF(30)髙橋隆大が入りましたね。練習レポート等を読んでいますと、(30)髙橋も増本監督から熱心な指導を受けている1人のようですね。彼が終盤、決定機をどれだけ創り出せるのかにも注目しました。

2.レビュー

(1)総評

今シーズンの富山の試合はそんなに観ていませんので、比較は出来ませんが、北九州の最近2戦を踏まえて対策を施してきた意図は感じました。
その対策とは、主に①北九州の前線からのプレスを無効化すること、そして②コンパクトな陣形を間延びさせることであったと思います。
こうした対策の効果か富山は前半から北九州の前線を自陣ゴールから遠ざけることに成功。ピッチを広く使いながら風上を活かしたクロス、ロングボールでチャンスを創ります。こうした流れから8分、10分とCH(24)河井陽介がPA外からミドルを放ちますが得点にはなりません。
43分にはCKから再び(24)河井がシュートも北九州最終ラインがしっかりブロック、更にCB(2)脇本晃成のシュートも北九州GK(27)田中悠也が好反応を見せ、得点に至りません。前半は全体的に富山優勢でしたが、決め手に欠きました。
一方、北九州も自陣でボールを奪うと、素早く縦に繋ぎカウンターをねらいます。CF(10)永井龍は2トップを組んだ(29)高昇辰やLSH(21)牛之濱拓らとポジションチェンジを繰り返しながら、自陣、敵陣を繰り返しスプリント。ボールの中継点になりますが、味方とのタイミングが合わずこちらも得点を奪えません。
北九州は28分、その前の攻撃参加時に負傷したRSB(23)坂本翔が負傷退場、RSH(17)岡野凛平がSBに下がり、МF(15)小林里駆を投入します。特に最近2戦では(23)坂本の攻撃参加が効いていただけに痛い交代となりました。
後半開始早々、富山の先制ゴールは自陣からのロングカウンター、ボールを受けたCF(9)碓井聖生にCB(13)工藤孝太は粘り強く対応しますが、ここで(9)碓井が時間をつくったことでLSB(25)安光将作が北九州陣内まで走り込み(9)碓井の落としをミドルシュート、低弾道の綺麗なシュートがゴール右隅に突き刺さりました。
この試合でRSB(30)大迫暁とサイドバックの左右を入れ替えた富山のねらいが嵌ったといえます。
GK(27)田中も鋭く反応しましたが及びませんでした。ゴラッソであったと思います。
こうして1点を奪われてしまうと、北九州同様に得点力不足に悩む富山はしっかり守りを固めてきます。北九州はMF(30)髙橋隆大らを投入。富山ゴールに迫りますが、有効なチャンスは見いだせずタイムアップとなりました。

(2)井澤の起用により鮮明となった縦志向

この試合で先発したCH(14)井澤春輝が、流動的ではあったものの、ボランチの左側で先発していた点に注目しました。これまで先発していたMF(34)高吉正真と比べると、ボールを受けた際に後ろへ戻す場面が少なく、素早く前線の4枚にボールをつけるシーンが目立っていました。
(14)井澤の高いパスセンスがよく発揮されていたと思います。
もちろん試合展開によってはボールを戻す必要もあるので、これは(34)高吉との優劣ではなく選手の特性面での話です。
北九州の2ボランチに関しては攻撃の組み立ての大部分が、CH(11)喜山康平に委ねられていたことを踏まえると(14)井澤の台頭は(11)喜山の負担を減らす意味でも収穫といえます。
右利きの(14)井澤がボランチの左、左利きの(11)喜山が右に入ることで、北九州の中盤からのパスはいつもよりも縦志向が強いものとなってたように感じました。カウンターから速攻で攻め落とすという意図においては有効な戦術ですし、実際繋がりそうな場面もあったのですが、一方で速攻のターゲット(10)永井のスプリント、持ち運びについていける選手は少なく、何とも評し難い面もありました。

(3)北九州プレスの無効化

この試合で、これも流動的とはいえ北九州が2トップの形を敷いてきた意図は富山の2CBにしっかり制限をかけたかったからだと思います。
最近2試合と同様に前プレから相手陣内でサッカーをするねらいが北九州にはありました。
これに対して富山はこの試合で久々のスタメン出場となったGK(1)田川知樹をビルドアップに加えて、北九州2トップと積極的に3対2の関係を築いていました。そして2CBは無理をせずにGKに戻していた点が印象的でした。北九州が両SHをも使ってプレスに人数を割くと、富山もCH(33)高橋響希やRSB(30)大迫が積極的に受けに下り、とにかく北九州にプレスを発動させないことを最優先としているように見えました。
一見、危なさそうな富山自陣でのボール運びですが、それぞれのパスには積極性と強さがみてとれ、やはり富山ペースのボール運びになっている印象が強く残りました。

(4)富山の前線への配球

更に富山は前線の(9)碓井、OFM(7)佐々木陽次をターゲットに早いタイミングでロングボールを送り込んでいましたが、特に前半は風上を活かしてライナー性のボールを供給していました。
これにより北九州の2CBはラインを押し下げられ、クリアも浅いものになっていました。これが北九州のコンパクトな陣形を広げる要因となり、北九州のCH、前線の選手たちがセカンドボールを受けるために帰陣します。富山としては北九州の選手を自陣に張りつけることに成功していたといえます。

比較的、富山はシンプルな作戦により北九州の良さを消し、富山ペースの試合運びに持ち込んでいたといえるのです。

SPORERIAさんの時間帯別パスネットワーク図でも、前半を中心に北九州が自陣に押し込まれていた様子が伝わってきます。

(5)北九州の攻撃の課題

それでも前述した(10)永井らの労を惜しまぬスプリントにより北九州もチャンスをつくります。21分(11)喜山→(14)井澤→(21)牛之濱→(10)永井→(29)高昇辰と繋がった攻撃、45分+1分(14)井澤→(33)乾→(17)岡野→(29)高昇辰を渡った攻撃には可能性を感じました。特に後者は最近北九州の得点に繋がっている「相手ゴール前での左右の揺さぶり」が効いていたと思います。

これらのチャンスが生まれていた20分~70分の時間帯、北九州は実はゴール期待値では富山を上回っていますし、全体の期待値でも富山とそう変わりはないのです。

一方で北九州のPA内への進入には極端な傾向が見てとれます。
それはPA内左側への進入が多いことです。
(10)永井の左へ流れる動き、そして(21)牛之濱や(33)乾の進入がイメージ出来るのですが、今の北九州にあって得点能力が高いと思われる選手たちがボックス内左側に集中することにより、中央が手薄になっているという点は課題として指摘できるのかもしれません。
中央に走り込む選手を増やすことが出来れば、北九州の得点はもっと増えると言えます。実際に今治戦での(23)坂本や(17)岡野、大宮戦での(11)喜山のような動きはそのまま得点に直結しました。
また、右からの、右への進入回数を増やすという攻撃パターンも構築したいところです。そういう意味では(23)坂本の負傷は痛いのですが、ここは(17)岡野の更なる奮起や(15)小林、(30)髙橋の台頭に期待したいところです。

連戦ですね。まずはこれ以上負傷者が出ないことを願います。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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