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【ファジサポ日誌】62.J1との差~第103回天皇杯3回戦 湘南ベルマーレvsファジアーノ岡山~

現在J2リーグ・10位、6位清水エスパルスとは勝点差7をつけられているファジアーノ岡山。徐々に試合内容の向上はみられながらも、上位との差は確実に開いていっています。
希望と失意が混じった感情の中で迎えた天皇杯3回戦、筆者が個人的に観たかったのはここまでリーグ戦での出番が限られた選手たちの躍動と、まだクラブとして成し得ていない初のJ1勢撃破&16強進出でした。

勝ち上がればC大阪vs大宮の勝者と対戦。
もしファジとセレッソの対戦が実現するのであれば、上門知樹との対戦が待っている、そして2016年のプレーオフに想いを馳せるかもしれない。
更に難関セレッソを突破すれば、ひょっとしたら、前回大会の甲府のようにJ2前年3位クラブの全国制覇も…。
4回戦の会場・日程は未定ですがヨドコウまで行ってもいい。
夢は広がるばかりのゲーム前でした。

1.試合結果&スタートメンバー

(※上記pdf.は公式記録です)

しかし、現実は厳しかった。夢はあっさり潰えました。
現在J1・18位の湘南相手に0-2と敗れ、今年の天皇杯は終わりました。

天皇杯3回戦 湘南vs岡山 スタートメンバー

お互いリーグ戦の合間ですので、ベストメンバーでの戦いとはなりませんが、湘南は前線のメンバーは若手中心であったものの(7)阿部浩之、(2)杉岡大暉、(14)茨田陽生、(6)岡本拓也、(22)大岩一貴といった実力者がスタメンに顔を揃えました。
この実力者たちが揃うJ1・18位と戦えたというのは、現在の岡山とJ1との距離を測る上でも、ちょうど良い、興味深いマッチングといえ、岡山にとっては非常に意義深い戦いになったといえます。

そして湘南のベンチには…

あえて5年前のKSB(瀬戸内海放送)の特集動画を貼りましたが「倉敷の至宝」(37)石井久継が控えました。短い時間ながら今シーズンはJ1でも3試合に出場しており、岡山サポの間でも話題になっていましたね。
試合前は出場してくれたらいいなぐらいに思っていたのですが…。

5年前のニュース動画なのですが、こうして視聴しますと改めて、地方クラブにとってユースチームの強化は重要であると感じずにはいられません。
ここを強化できないでいるとホームタウンの有能な逸材を逃し続けることになるのだと思いました。
来シーズン岡山にも太田龍之介選手(明治大)が帰ってきますし、この試合でもユース出身(30)山田恭也がピッチに立ちましたが、もっとユース育ちの選手がトップチームで活躍するようなクラブになることが今後の岡山の命運を左右するといっても過言ではありません。

話が大きく逸れているのですが、先日のビジャ・レアルとの連携は今後の岡山のサッカーを形づくる上で大きなきっかけになるのではないかと期待しています。

スタメンの話に戻します。
岡山は現在、怪我人も多く発生していることもあり、湘南よりもサブ色が強いメンバーになりました。
(33)川谷凪は最前線での起用、リーグ戦FWで起用されていた(32)福元友哉は天皇杯2回戦(北九州戦)と同じくRWBでの先発となりました。
そして怪我で戦列を離れていた(6)輪笠祐士が復帰、リーグ戦ではベンチ入りするもなかなか出番が無かったことから状態が心配されていましたので、これは明るい材料といえます。

2.レビュー

(1)メンバーは代わっても変わらなかった戦い方~前半~

この試合の最も大きな収穫はリーグ戦メンバーと同様に、最終ラインからビルドアップしながら、前方からプレスをかけ相手を押し込んでいくサッカーをこのメンバーでも出来たこと、J1湘南に一定の時間通用したことにあると思います。
普段と異なるメンバーでやっていることもあり、若干ゴールキックの比率は高かったように感じましたが、最終ラインからLCB(42)高橋諒がドリブルで持ち運ぶことでLIH(25)野口竜彦やLWB(2)高木友也のポジションを押し上げ、彼らが前方でプレスすることで湘南最終ラインを押し下げることに成功、陣形を間延びさせ中盤との間に出来たスペースで(8)ステファン・ムークや(33)川谷が前向きにプレーしていました。

前半自陣からドリブルで持ち上がる(42)高橋
古巣対戦でレベルの違いを見せつけた

21分、前線で(8)ムークがボールを奪い(33)川谷がクロスバーを叩いた強烈なシュートを放ちますが、このシーンで湘南最終ラインはかなり押し下げられているころからも、前半は岡山が湘南を押し込んでいたことがよくわかります。

久々の出場の(33)川谷
2トップの一角は合う感じだが21分のシュートは
決めたかった

そして守備面では特にLIH(25)野口がピッチ中央、左サイドと広範にタイミング良く顔を出すことで、湘南RWB(44)中野嘉大らの前進を防いでいました。(25)野口がしっかり首を振りながら広い視野を確保していた姿が印象的でした。

この前半に先制出来ていれば、勝機はあったかもしれませんね。

2回戦(北九州戦)よりもプレーに広がりを感じた(25)野口
実戦の機会が少ないのがもったいない

(2)終盤のギアと決定力の差〜後半〜

後半懸念されたのは岡山側のスタミナであったと思います。
2回戦の北九州戦ではRWB(32)福元が70分過ぎから明らかなスタミナ切れを露呈していました。この試合の(32)福元は北九州戦ほどの極端な運動量の低下を見せることはなく、またプレーの精度も2回戦よりは上がっていたと思います。
しかし、対峙した湘南LWB(2)杉岡大暉に徐々に主導権を奪われます。
J1で100試合以上に出場し、日本代表キャリアも持つ(2)杉岡はサイドの競り合いで簡単にタッチに逃げない点が目を惹きます。そして個でサイドを突破する力を持ちます。
この左サイドからリズムを掴んだ湘南は(20)永木亮太や(30)鈴木淳之介といった交代選手を使いながら、一段ギアを上げていきます。
岡山もよく抵抗していましたが、懸念されたとおり徐々に運動量が低下、ついに73分先制を許します。

J1との差を垣間見たシーンでした。ゴールラインも割りかねないPA内奥に精度の高い浮き球のパスを出した(20)永木、そして運動量が落ちる時間帯でありながらしっかり走り込んだ(2)杉岡、共にさすがと思わせるプレーでした。

湘南、もう一段ギアを隠し持っていた、そんな印象です。

最終ラインの裏狙いを指向する岡山としては、アタッキングサードで何でもサイドに流すのではなく、この湘南の攻撃のように裏の厳しいスペースへパスを出す、そしてそこへ走り込む力を磨いてほしいと思いました。

湘南先制シーン
(2)杉岡がPA奥から折り返す
(21)山田大も我慢しながら対応したが
(29)鈴木章にきっちり決められる
失点直後の交代となり悔しそうな表情を見せる(27)河井

そしてこの時間帯に見逃せなかったのは、選手交代が遅れたことです。
ベンチは各選手の運動量低下は感じ取っており、プレータイムの計画もあったとは思いますが、この失点の前に既に(18)櫻川ソロモンと(27)河井陽介が交代を準備していました。
しかし、こんな時に限って流れが切れない。いや流れを切る必要があったと思います。背景は異なりますが、藤枝戦の数的同数が続いたシーンを思い出していました。
この日のメンバーは、リーグ戦同様の戦術でJ1湘南相手によく戦っていたと思いますが、リーグ戦メンバー同様に悪癖まで再現してしまいました。

再現という点では、やはりこの試合でも決定力不足を露呈してしまいました。岡山と湘南の方向性は似ているという印象があり、両チームのサッカーを比べやすかったのですが、アタッキングサードでの攻撃の質の差は顕著であると感じました。
湘南と比べると岡山は遠回りの攻撃になっていると思いました。その原因は結局、裏へ一発で決められないからなのかもしれないですが、チャンスで手数を掛ける分、相手の守備態勢も整ってしまい、無理なシチュエーションでのシュートが多くなる。よって決定力不足に繋がっているのかもしれません。

(48)坂本のシュートはぎりぎりゴールラインを割れず
岡山は決定力不足に泣いた

そして、岡山が得点を奪えずやきもきしているうちに決められてしまいましたね。湘南(37)石井の公式戦初ゴールです(急に埋め込みができなくなったので下にリンクを貼っておきます)。

https://twitter.com/nhk_okayama/status/1679095955948183553

(試合後のインタビューは埋め込めますね)
試合後の(37)石井のインタビューもどうぞ。

このゴールを足掛かりに次はJ1初ゴールに期待したいところです。
しかし、正直なところ複雑ですね。
岡山としては試合は負けてしまいましたし、以前から岡山県出身の選手に凱旋ゴールを許してしまう傾向があるのも、偶然であるとは思いますが、お人好しと言いますか…何と言いますか。

サイドからのグラウンダーのクロスに合わせる(37)石井
シンプルな攻撃だが湘南はしっかり決め切る

3.まとめ

ということで天皇杯3回戦を簡単に振り返ってみましたが、岡山の収穫は繰り返しになりますが、リーグ戦メンバーと同様の戦いが出来たことであると思います。これは今の戦術の再現性の高さをも示しています。そしてある程度J1にも通用した、これは自信にしてよいと思います。
そして勝敗の差は、後半のギアチェンジ、そして試合全体を通じての決定力にあったと思います。
全体的にみてリーグ戦に繋がる試合であったと思います。
観戦できなかった方、長崎戦に希望を持ってください。

今回もお読みいただきありがとうございました。

後半開始前、長い円陣が敷かれていた
勝ちにいく姿勢は十分伝わってきた

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。



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