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Y字路の魅力: 横尾忠則の心情と変化する世界

「Y字路」シリーズ誕生20周年を祝うため、2020年度に開催される予定だったが、コロナ禍により延期となった今展覧会。

シリーズの原点である初期作品と新近作を見比べると、横尾さんの心情の変化に触れられた気がする。

weblio辞書によると、
「Y字路」とは、アルファベットの「Y」のように分岐している道、3本の道路が交差している交差点であるとされている。

3人のサポーターズによる「Y字路」のような交差した取材内容を楽しんでもらえると幸いだ。

今回はちり️、おみ、のんの順に紹介していく。

最後までお楽しみあれ‼︎

INFORMATION

横尾忠則現代美術館
〒657-0837
📍住所:神戸市灘区原田通3-8-30
⏰開館時間:10:00~18:00
      (入場は17:30まで)
🗓休館日:月曜日

https://ytmoca.jp/

横尾忠則 ワーイ!★Y字路
🗓開催期間:
2024年1月27日(土)〜5月6日(月・振替休日)
🎟観覧料:
 一般 700円(550円)
 大学生 550円(400円)
 70歳以上 350円(250円)
 高校生以下 無料
※(  )内は20名以上の団体割引料金
※障がいのある方は各観覧料金(ただし70歳以上は一般料金)の75%割引、その介護の方(1名)は無料
※割引を受けられる方は、証明できるものをご持参のうえ、会期中美術館窓口で入場券をお買い求めください。
(障がいのある方は、障がい者手帳アプリ「ミライロID」もご利用いただけます)
※楽天チケットでも販売しています。
https://ytmoca.jp/exhibition_category/current/

キュレーターズ・トーク
👩‍🏫講師:学芸員
🗓日時:2月17日(土)、3月16日(土)、
            4月20日(土)
            ※いずれも14:00〜14:45
🎨集合場所:
横尾忠則現代美術館オープンスタジオ
🎟参加費:無料
✍️今回の取材班も参加させていただきました。作品の制作背景や作品同士の関連を知ることで、より広い視点で展覧会を楽しむことができました。
展覧会を訪れる機会として是非オススメです👀

闇はいったいどこに

(ライター:ちり)

今回の取材は、今年度の横尾忠則現代美術館サポーターズによる最後の取材である。

「Y字路」の作品は、以前何点か拝見したことがあるが、シリーズとして見れたのはとても嬉しかった。

私が今展覧会で気になった点は、赤色の作品、マンホールと黒の四角についての2点である。

赤色の作品

横尾さんは、ダイナミックに描かれた作品が印象的であるが、それ以上に派手な色味を用いた作品は私の中で心に残っている。

私の好きな色は赤色である。

横尾さんの作る赤色は激しさや悲しみだけでなく、陽気さや、わくわくも感じられる。

赤色の作品で、今回の主役は
「暗夜光路 床と薔薇」ではないだろうか。

暗夜光路 床と薔薇

元々白黒で描かれた作品だが、赤いライトをあてることで、モノクロの作品が赤く染まる。

左側の赤い薔薇は、暗い景色の中でよく映えて、とても綺麗だった。
2輪の薔薇は、最初暗闇の中で寂しそうだと感じたが、枯れることなく生えている様子から、力強く生きて格好いいなと感じた。

対して「暗夜光路 2001年9月11日」では、印象をガラッと変える。

暗夜光路 2001年9月11日

2001年9月11日は、アメリカ同時多発テロ事件が起きた日である。

当時横尾さんは、絵を描いていられないくらいショックを受けたそうだ。
先ほど紹介した「暗夜光路 床と薔薇」と赤色は同じはずだが、印象がかなり変わる。

作品により印象を変えてしまう表現に驚き、しっかり見入ってしまった。

作品からは、アメリカ同時多発テロ事件での悲しみ、辛さがひしひしと感じられた。
被害者による傷のみではなく、心の痛みも感じられ見ていて、どっと辛くなった。

マンホールと黒の四角

各作品の道をよく見てみると、マンホールが描かれている。

最初は、位置的にマンホールだろうと思っていた。しかし作品によっては、詳細にマンホールが描かれていたものと黒い楕円が描かれているだけの作品があった。

例えば細かくマンホールが描かれた作品は「闇の樹木」、黒い楕円が描かれた作品は「とりとめのない彷徨」である。

闇の樹木
とりとめのない彷徨

この違いはなんだろうか。

ただ作品によって細かく書いたり、書かなかったりしたのか。
それとも横尾さんが黒い丸があちこちにあるのが面白くて描いたのか。

「Y字路」シリーズは闇を表現していると聞いたので、落とし穴やブラックホールなどを表しているのではないかと考えた。

同じように黒い四角が突如現れる作品もある。
それがこの「Towada Roman」である。

Towada Roman

黒い四角は、このような明るい色調の作品だと突然現れたようで異様である。

この異様さは横尾さんが面白いと考えて描いたのだろうか。
黒の四角は、明るさの中にある闇を表しているのかもしれないと感じた。

実際は描いた横尾さんにしかわからない。

この異様さを感じたい方は、ぜひ美術館に訪れていただきたい。

はじめまして 闇のY字路

(ライター:おみ)

今回取材させていただいた横尾忠則現代美術館の「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」は、
私にとってはじめての訪問だったので初めての美術館にときめきが止まらず、最高な1日になりました!

前々からヒョーゴミュージアムサポーターズの投稿を見ていたので、割と癖アリではあると思っていたのですが初めての取材がまさかY字路となるとは思っておらず不安でした。

なにせY字路の魅力がわからなかったので…。

Y字路とは中学生時代の美術の時間に習った「消失点の書き方」以来の出会いです。

しかし今回の美術館で横尾忠則が作り出すY字路の世界観に引き込まれました。

是非皆様にもこの取材記事から感じ取っていただければと思います。

初期のY字路

まずこちらは初期に書かれたY字路。

2000年〜2005年(初期)のY字路は兵庫県西脇市で描かれたそうだ。

この鬱蒼としている雰囲気からもわかるだろうか。Y字路を通して「故郷の闇」を表しているというのだ。

闇を表現するためにベルベットの生地に絵を描いた時もあったらしいが、あの独特な生地の上に絵を描くことは難しく断念したという。

しかしもし作品として完成していたのであれば、重々しくどんよりとした作品ができ「故郷の闇」を表すには最適だったと思う。

この絵は横尾忠則現代美術館の3階に展示してあるのだが、黒を背景にされているため自分自身もY字路の前に立っているかのような気持ちになる。
そして周りの人の顔もぼんやりとしか見ることができない(自分の視力も相まって)ため、観覧者全員が闇の中に引き込まれているように感じた。

西脇市で描かれたY字路

この後も西脇市で描かれたこのY字路は何度も何度も描かれ続ける。

何度も描いていることで生じるわズレが面白みや味になる。
同じ場所の絵が並べられることで違いを感じY字路の深みになるのだろうか。

そして次に紹介したいのがこちらだ。

暗夜光路 2001年9月11日

実はこの絵は未完成のまま完成したとされている。

字面だけ見るとおかしな話だ。

それもそうだ。下書きの部分が残っていたり、塗り残しがある。
これでは出来が不自然だと思うだろう。

真実は美術館の中に書かれているので、是非気になる方はこの絵を見に行ってほしい。

右上に破れた写真が貼られているのは、作成途中で横尾忠則がこのY字路を描くことをやめようと一度破ったらしい。

時代の変化+画家の技術=∞

(ライター:のん)

2回目の横尾忠則美術館。

1回目はあまりの絵のインパクトの強さに思わず「なんだこれ?」と口に出そうなほど不思議な絵が多かった。
それに比べ、今回は実際にあるY字路をモデルに描かれているため、一見初心者でも実に分かりやすい。

しかし、今回の展覧会でもよく分からない工夫が…。

そんな横尾忠則ワールドに今年も足を踏み入れた。

今回は、私的に少し気になった=魅力ポイントを2つご紹介する。

題名のセンス

ぜひ絵だけでなく題名も注目してほしいと思う!

比較的速いペースで絵を仕上げるのに、一つ一つその絵にぴったりな名前を付けていて、心にグッと来た。
一見よく分からない題名もあるが、画家の個性が良く表れているように思う。

今回の展覧会の中で個人的に良いなと思った作品がこちら。

実生活の虚実

「実生活の虚実」…。

とてもすてきだと思いませんか?

あまりに絵とマッチしているというか。

何か運命の分かれ道に立たされている感じが伝わる。

私なりの解釈としては、右の階段は学校の通学路として利用していたが、大人になって車で左の道路を利用するようになった。
現実か非現実の分かれ道の虚実として捉えず、右は過去、左は現在・未来を表していると推測した。

あっ、何を言ってるのか…。

皆さんはどう思ったのだろうか?

街並みの再現性

横尾忠則さんの絵は現実にないものを描いてるイメージがあって、今回の展覧会で街並みの忠実さに驚いた。

写真に撮った街並みを細部まで忠実に再現して、そのベースを前提に工夫を凝らしていく。

横尾忠則さんのY字路は長い年月をかけて変化していくのだが、みんながイメージしている横尾忠則さんの作品と少し違った、ちょっと意外に思う作品も展示されているのも今回推しておきたい。

その一例として、「未完成Ⅱ」の作品。

未完成Ⅱ

実際にあるY字路で書いた絵だが、忠実に再現しようと家の前の標識を描こうとして辞めた跡が残っている(学芸員さんの推理)。

光の当たり具合や石垣の色具合など遠目から見ると「写真や!」と思うほどの完成度の高さ。

誰もがハッと驚かされるような絵を簡単に描いてしまう、もう天才で終わらせてはいけない人ですね。

プラスのアレンジが絶えない、
まさに∞の可能性を持つ横尾忠則さんの作品をぜひご覧ください。

おわりに

いかがでしょうか。
横尾忠則ワールドへ足を踏み入れたくなりませんか?

このページへ辿り着いたみなさん、どうもありがとうございました。

次回の投稿を楽しみにお待ちくださいませ。

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