見出し画像

妄想力全開!『図書館戦争』

タイトルはずっと前から知っていました。え、図書館で戦争ってどゆこと?って。超有名ですよね。映画にもアニメにもなってるし。でもなぜか私はあんまりピンと来なくて、どんな話かも知らずにそのまま。でも先日、積読が無くなる!という事態が発生し、とりあえず1巻目だけでも繋ぎに何となく読んでみるか〜と、家族に借りてみました。

『図書館戦争』- 著者:有川浩さん


作風の違い、ハンパなし

繋ぎとか言ってごめんなさい、有川浩さん。…って、ん!?この方は、あのすごく面白かった『阪急電車』の作者さんではないですか。

まだ読み始めてすらいないのに、あの『阪急電車』と、図書館で戦争!というワードがどうにもこうにも繋がらず。腑に落ちないまま始めてみたら…いきなり驚愕。え、これ、本当に同じ作家さんの作品!?ええと、とりあえず最後まで読んでみよう。

・・・・・。

読了してみても、ますますその思いは強くなるばかりでした。いやいやいや、振れ幅ありすぎでしょう!!!

そしてその思い、文庫本1巻目のあとがきで、有川浩さんと児玉清さんがしっかりきっちり回収して下さっていました。「先に『阪急電車』を読んでからこの本を読んだ人は、さぞかしびっくりしただろう」って。ええ、まさにまさに、です笑。

国の検閲が進み「好ましくない」本や雑誌がどんどん処分される世の中で、図書館が本を守る最後の砦として専守防衛の武装をし、検閲側の良化隊陣営と戦う、という突拍子も無いストーリー。のどかなローカル電車のヒューマンドラマとは、全く毛色が違う!

あとがき充実

あとがきがこんなに豪華な文庫もなかなか初めてでした。あれ?本編読み終わったのに、まだけっこう厚みが残ってるぞ?と思ったら、出るわ出るわ。単行本版あとがき、文庫版あとがき、本編のスピンオフエピソードに、実際にあると言われれば思わず信じてしまいそうな図書隊情報、さらに児玉さんと有川さんの対談。

私は本を読む時あとがきは絶対先に読まない派なのだけど、世の中にはそこそこの割合で、あとがきを読んでから本編を読むかどうか検討する人たちもいるらしい。この本では、そういう方もぜひあとがきは最後に回すことをお勧めします。

プロ作家の妄想力

この物語、総じてまずあり得なそうで、でも絶対なさそうとも言いきれなくて、かと言ってあったらものすごく困る!というお話でした。そこは何より有川さんご自身がいちばん実感していらっしゃったようで、その想いをあとがきで知るのも面白い。あれ、またあとがきの話をしてしまった…笑。

すごいのは有川さん、夫さんが図書館で見つけて教えてくれた「図書館の自由に関する宣言」というたった4項目の条文を読んだだけで、後にシリーズ化までされる本作のインスピレーションが即浮かんできたそうでして。

作中にも出てきたこの宣言、てっきり創作なのかと思ったら本当にあるんですね…!全く知らなかった。

図書館の自由に関する宣言
第一:図書館は資料収集の自由を有する
第二:図書館は資料提供の自由を有する
第三:図書館は利用者の秘密を守る
第四:図書館はすべての検閲に反対する
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

日本図書館協会WEBサイトより一部抜粋

何これ。カッコいい。。。作中に出てきた時はてっきりフィクションだと思っていたので流し読みしてしまっていたけれど、ものすごく胸熱じゃないか。

それにしても、これを読んだだけであんな長編物語を思い描けるなんて、さすがプロの作家さん。想像力、妄想力、からの鬼のような取材力、とてもじゃないけど常人の業ではないわ。。。さすがプロ、ひたすら感服です。

でもさ、今現在でも公に言論や出版の自由が無い国も引き続きあるわけだし。ほんの100年前にもならない頃、日本だってあからさまな検閲の嵐だったわけだし。だからこそ、この図書館の宣言が実在するわけだよな、きっと。

有川さんも言われているように、どうかこの本が、突拍子もない物語だなー!ってフィクションに思えるのが当たり前な毎日が続きますように。

おまけ

先日、知り合いがこれから司書になる勉強をすると聞いたのだけど。頭の中で即座に「司書資格があれば図書隊キャリア組だな。でもこんな華奢で大人しそうなお姉さんが実戦のリスクとなる現場で大丈夫かな…」なんてうっかり心配してしまったのは、間違いなくこの本のせい…!!

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?